観音崎京急ホテル Twin Room
Kannonzaki Keikyu Hotel
2009.06.27(土)
神奈川県横須賀市
楽-3

玄関前の噴水
 
遠かった海 なぜ、慌しいスケジュールの合間に、このような不便なホテルを訪れたのか、我ながらどうかしているとしか思えなかった。記憶によると、予約を入れた時点では前後のスケジュールが確定しておらず、東京周辺で過ごせると考えていたのだが、そうこうしているうちに、前日は千葉、翌日は京都日帰りというスケジュールになった。

そんなわけで観音崎を訪れるのはできれば取り下げにしたかったが、この機を逃すと永遠に来ることがなくなるような気がして、断行することに決意した。千葉から神奈川へは、ただ東京を通り抜ければいいだけなのに、かなり遠かった。だが、はるばるやって来た観音崎には、この日求めていたものが確かに存在した。

海が見えて、古びていて気取りがなく、さほど人が多くなく、不思議と気が休まるところ。かつては、湘南ホテルや真鶴のシェネガあたりにこのような雰囲気を求めていたが、シェネガや音羽の森などは規模が小さすぎて、人々にまみれて目立たずに過ごすことが難しい。その点、観音崎ではチェックインさえ済めば、あとは放って置かれるので気が楽なのである。

ホテルの外観は、かなり古びているように見えた。そのデザインにロマンチックな要素はなく、装飾とは無縁の古い公共集合住宅や米軍キャンプ内の宿舎のようでもある。だが、館内はそれなりに華やかだ。正面玄関を入ると大理石床のロビーがあり、その向こうには高く大きな窓があって、海や行き交う船を眺めることができる。ガラス窓に向かうようにして、モダンなソファセットが置かれ、中央にはそれらとはまったく不釣り合いな、真鍮色に輝く羽を生やした少女の彫像が飾られている。

高めの天井にはパシフィック東京で見たことがあるようなデザインの照明器具が下がっているが、フロント前には、それよりはるかに華美なシャンデリアが設置されている。一角にはアンティーク風の置時計もあり、かつてはこうしたクラシカルなインテリアが主軸だったようだが、今となってはバランスは崩壊し、さまざまな要素が混在しているようだ。

フロントは小さく、あまり目立たない。手続きはスムーズに行われ、館内の説明が一通りなされた後、自ら部屋へと向かう。客室は1階から3階までにあり、フロントがある階が2階とされている。かつては階段しかなかったのかもしれないが、今ではまだ新しいエレベータを使うことができる。今回用意されたのは、1階の客室。それも建物の先端に近く、フロントから最も遠い部類の部屋だった。

スイートが最もフロントに近く、海が正面に見え、かつ海に一番近いロケーションにあるところを見ると、今回の部屋はあまり条件がよくないのだろうか。だが、そうでもなかった。建物はゆるやかに「く」の字を描くように折れ曲がっており、半数の客室は海を正面ではなく、斜めに見るような位置にある。

そして、それらの部屋からは、隣接する集合住宅の生活感に満ちた光景が目に入ってしまうのだが、スイートと建物の先端近くにある部屋は、正面に海を見る位置にあるため、余計なものを見ずに済む。用意された部屋は、少し海から遠いが、それでも芝の向こうに海が広がる光景は十分に楽しめる。

室内は、何とも言えない雰囲気。その一番の原因は、殺風景な塗り壁と、装飾性に欠ける天井だろう。カーペットなどのファブリックはまだ新しいようなので、最近改装したばかりなのかもしれない。デスクユニットに添えられた椅子は、壊れたか何かで新調したようだが、他の家具は開業以来24年間、同じものを使い続けている。

テレビは20インチの液晶型で、高速インターネット接続は無料で利用可能。ベッドは120センチ幅が2台並び、華やいだ柄のスプレッドがリゾートらしさを醸している。ベッドリネンはかなり粗い部類で、しかもくさかった。

空調も改装で一新したらしく、集中管理から個別空調に改めている。だが、位置が悪い。ベッドで休んでいる際に、空調の風が上半身を直撃するのである。風向きを調整しようにも、そういったコントロールはできないように設定されている。だったら、もっと場所を吟味してもらいたかった。

窓はワイドサイズで、開閉が可能なだけでなく、外に出ることができる。しかし、バルコニーがあるわけではなく、その気になればそのまま隣室へも往来できるし、やもすれば外からドロボーが来るかもしれないような造りだ。ミニバーにはインスタントコーヒーやティーバッグにカップ&ソーサーが用意され、デスクには双眼鏡が置かれているなど、ちょっとした工夫が感じられる。

バスルームはタイル張りのユニット式。蛍光灯照明だが、明るく清潔感があり、ベイシンにはスツールも置いてある。アメニティはバスケットにまとめられており、ミニボトルのシャンプー類の他、基礎化粧品を備えるなど、まずまずの充実ぶりだ。タオルは3サイズが2枚ずつ揃うほか、ベッド上にバスローブも用意されている。

客室内の退屈なバスルームを使わなくとも、隣接する温浴施設「SPASSO」を出発日まで無料で利用することができる。他に屋外プールが設けられているが、今期の営業はまだ始まっていなかった。

夕食はカジュアルな「浜木綿」を利用した。コースや定食が中心だが、オールデイダイニング的に軽いアラカルトやセットも用意されており、このシーズンのおススメとなっているフレンチフルーツカレーを注文してみた。さわやかなカレーには、エビ、ホタテ、バナナ、パイナップルがトッピングされ、夏らしく美味だった。サービスはぶっきらぼうで粗野な感じだが、それもまたこのホテルでは妙に溶け合っているようにも思えた。

翌朝は朝食もとらずにチェックアウトし、新横浜経由で一路京都を目指した。新幹線に乗ってしまえば何ということないが、新横浜までがとても遠く、都心に暮らすことの利便性を改めて痛感した。

 
リゾート風の室内 窓が大きい デスク脇から室内を見る

ソファセット デスクユニット 空調とベッドの位置関係がよくない

クローゼットは引き戸 ミニバー 冷蔵庫内

備え付けの双眼鏡 部屋の外 部屋の外の眺め

ベイシン バスタブ バスアメニティ

廊下 階段 ロビーのブロンズ像

ロビー ロビー フロントカウンター

ロビー ロビーのシャンデリア フルーツカレー

窓からの眺め 外観 波打ち際

 観音崎京急ホテル(公式サイト)
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