長門セントラルホテル Single Room
Nagato Central Hotel
2009.06.15(月)
山口県長門市
楽-2

通へ向かう途中の風景
 
沈黙の駅 山口市内から車で2時間ほどだったろうか。日本海に面した長門の街に到着したのは午後9時頃だった。長門市駅にほど近い長門セントラルホテルは、コンクリートの素肌がモダンさを感じさせる一方、館内は至ってレトロなビジネススタイルのホテルである。

恵比寿さまが出迎える自動ドアの玄関を入ると、小さなロビーになっており、傍らにこれまた小ぢんまりとしたフロントがあって、オーナーと思しきおじさんがすべてを取り仕切っている。おじさんは愛想こそないが、その無表情さとは裏腹にとても親切だった。お正月はホテル全館が休業するという点も含め、ビジホというよりマチナカにあるペンションといった趣きだろうか。

チェックインを済ませ、ロビーに面した1基だけのエレベータで、用意されたシングルルームへと向かう。部屋はかなりくたびれた印象があるが、カーペットだけは新しい。かなりタバコ臭いが、ここには禁煙ルームはないらしい。シングルは30室。他にダブルがひとつとツインが4室あるそうだ。

ベッドは窓を頭にして置かれ、カバーと一体になった寝具と枕ひとつが添えられている。デスクはコンパクトにまとまっており、小型のブラウン管テレビが年季を醸す。デスク下に取り付けられたドライヤーも、かなりボロボロだ。冷蔵庫は窓際の壁の横に、まるで空気清浄機のようにフロアに置かれているのが面白い。

クローゼットは置き家具で、空調は個別式のエアコン。バスルームは旧式のユニットで、カビや傷みが目立ち、タオルにも妙なにおいが染み付いていた。便座に洗浄機能はなく、バスアメニティもリンスインシャンプーとボディソープのボトル、歯ブラシセットだけという最低限のものだった。

LANもなく、部屋にいても退屈なので、周辺を散歩してみることにした。近隣には住宅がたくさんあるが、店舗の類はみな閉店している。歩いていてもまったく人に出会わないのが不気味だった。みな宇宙人にさらわれてしまったのだろうか。それとも駅に行けばだれかがいるだろうか。

そう思って長門市駅に行ってみたが、なんとこちら側には改札がない。柵越しに見る線路には、照明の消えた車両が眠っており、まるで墓場のように静かだった。もう最終列車が出た後なのだろうか。まだ22時前だというのに。

改札は線路を橋で越えた反対側にあるようだったので、行ってみることに。すると、まだ駅舎には灯りが点っており、駅前には迎えの車が列をなしていた。ほどなくしてディーゼル車の鈍行が到着すると、高校生などが改札から出てくるのが見えた。そして、迎えの車に乗り込んだり、自転車に乗ったり、あるいは友だちと徒歩でそれぞれの帰路につき、駅はふたたび沈黙に戻った。やはり、駅前にも店らしい店はなく、来た道をまたホテルへと戻る以外になかった。

早めに休もうと思いつつも、結局いつもの時間となり、束の間の睡眠を取った後、朝は1階のグリルで朝食。和洋あるが洋をチョイス。目玉焼き、ハム、野菜、食パン1枚、オレンジジュース、コーヒーという内容で、800円。フロントにいたおじさんの奥さんらしき人がひとりで対応していた。

8時にはチェックアウトをして、金子みすゞゆかりの地を通り、青海島の先端近くの通まで向かった。途中、祭で使うというクジラの形を模した船に出会ったり、美しい海を眺めたり、なんとものどかな風景に酔うことができた。やはりこの町も夜より太陽のもとでの方がはるかに魅力的であった。

 
シングルルーム デスク 部屋の入り口付近

バスルーム 長門市駅 夜の正面玄関

朝の正面玄関 外観 くじら型の船

 長門セントラルホテル(公式サイトは見当たりません)
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