妖精の棲む森
2007.06.13(水)
ホテル ミレ・オ・マーレ Twin Room
Hotel Mire o Mare
喜-2

ホテル外観 長い時間、車に揺られて辿り着いたのは、わずか10室のプチホテルだった。玄関先には花々が咲き乱れ、霧雨に湿った空気がその芳香を運んでくる。そこは音のない、静寂が支配する世界だった。ふと携帯を見ると、「圏外」である。今回の公演がなければ、この宿のことを知ることもなかっただろうし、もしかすると生涯この地を訪ねることもなかったかもしれない。

階段を上がるとウッドデッキのテラスがあり、赤い瀟洒なガラスの扉から館内に入る。玄関ホールで館内用のスリッパに履き替え、左側にある小さな小さなカウンターでチェックイン。子供の頃に通っていた街のお医者さんに、ちょうどこんな受付があったことを思い出す。玄関の正面には広いダイニングがあり、泊り客でなくても料理を楽しむことができる。ダイニングホールの規模からすると、ホテルよりもむしろレストランがメインなのかもしれない。さながらオーベルジュという感じだろうか。夕食が楽しみだ。

部屋は1階から3階までにあり、今回は3階のコーナールームが用意された。これは標準的なツインルームではあるが、最上階であること、そしてコーナーゆえに、サイドにも小さな窓がひとつ加わっているという点で、条件のいい部屋である。すべての客室にはバルコニーがあり、周辺の豊かな自然を感じることができる。早速バルコニーに出てみた。間近に海と小島が見える。てっきり山の中だと思っていたが、その名の通り、海の見える宿だった。

部屋は約18平米。100センチ幅のベッドが2台、イス・テーブルセット、テレビの載った冷蔵庫キャビネットというシンプルな設えながら、木製家具はとてもしっかりとしている。職人による手作りという感じで、デザインや仕上がりに愛情が込められているのがわかる。バスルームは150×105センチのユニット。1階にはリニューアルされたばかりの温泉浴室が男女別にあるので、そちらを利用した。湯は「はぎ温泉」。真新しい浴室にはヒノキの香りが立ち込めていて、深いくつろぎが感じられた。

お愉しみのディナータイム。コースは3,500円と5,500円。その他、パスタやピッツァなどのアラカルトも豊富にあり、単品価格にプラス1300円でちょっとしたコースに仕立てられる仕組み。どの料理も美味しく仕上がっており、もし都心にあっても十分に勝負できる味だった。客は泊り客だけでなく、食事だけを目当てに足を運ぶ人も多い様子。少ない人数での給仕は大変そうだったが、アットホームな雰囲気で多少の滞りは気にならなかった。シェフは無口で愛想なしだが、味がいいのでそれもまたよし。

でも、朝食は意外とオーソドックスだった。スクランブルエッグ、サラダ、ソーセージのワンプレート、ロールパン、ジュース、コーヒーという内容。夕食の実力から考えて、もっと洗練されたものが出てくると期待していただけに、ちょっと残念だった。

朝食前に、付近を散歩してみた。草むらの中に潜む真っ赤な蟹や、見たことのない鳥に出会った。このまま歩き続けたら、森の妖精に会えると言われたら、信じてしまいそうな不思議な雰囲気のある場所だった。朝食が済んだら、すぐに出発。まだ8時前だというのに。もう少しここでゴロゴロしたり、ただただ雨を眺めたりしていたかった。大きなホテルでは味わえない静寂は、新鮮な感覚を呼び覚ましてくれた。

 

玄関とウッドデッキ ホテルのサイン 小さなフロントカウンター

コーナーの客室 とてもシンプルな内装 ユニットバス

窓からの眺め 新しい温泉浴室 ダイニングルーム

 
ホテル ミレ・オ・マーレ


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