季節の変わり目
2006.09.11(月)
ハイアット リージェンシー 京都 Guest Room
Hyatt Regency Kyoto
楽-4

窓の外に樹木があるゲストルーム 2005年1月、京都パークホテルが25年の歴史に終止符を打ち、それから14ヶ月経った2006年3月、同じ地にハイアット リージェンシー 京都がオープンした。京都は日本を代表する世界的観光地であるにもかかわらず、ハイセンスな高級ホテルが少なく、インターナショナルブランドのデラックスホテルは、ウェスティンと提携した都ホテルに次いで2軒目となる。駅周辺にはビジネスホテルが乱立しているが、それらは滞在そのものを楽しむには程遠いものばかり。それだけに、国際水準の設備とサービスを備え、センスの面でもリードするようなホテルの登場を待ち望んでいた。ハイアット リージェンシー 京都には、パークハイアット東京、パークハイアットシドニー、ハイアット・リージェンシー・オーサカなどで活躍した優秀な総支配人が着任。果たしてどのようなホテルになるのか、期待が膨らんでいた。

京都駅からハイアット リージェンシー 京都までは、タクシーで5分から10分程度。今回は、MKタクシーによる駅からホテルまでの送迎がプランに含まれていたので、それを利用した。ホテルのファサードには竹林が配され、日本的で涼しげな雰囲気。車寄せも十分に広く、高原のリゾートホテルを思わせるようなゆとりが感じられる。また、外観については風致地区に指定されている事情もあって、ほぼ旧来のままを保っているとのことだ。

エントランスを入ると右側にフロントカウンターがあるが、宿泊であることを告げると、ロビーのソファに案内され、そこで座ったままチェックイン手続きが行われた。担当したスタッフは礼儀正しく振舞っているつもりの様子だったが、どこか冷たくてトゲがあった。ロビーは、フロントの周辺だけが2層の吹き抜けになっているが、奥の方は天井が低い。だが、全体に見通しがよく、オープンなデザインになっており、とても明るくて居心地がいい。

客室までは若い女性のベルアテンダントが案内してくれた。この係はとても感じがよかった。つつましく控えめながらも、のちに館内で顔を合わせたりすると、にっこりしながら会釈を返してくれた。客室は1階から5階までにあって、そのうち1階と5階は部屋の大きさや配置が違っている様子。とりわけ5階は窓が大きく取られており、パークホテル時代、そこは部屋ではなく、レストランか何かであったものと思われる。

エレベータは3基あるのだが、いずれも超狭い。4人も乗れば一杯になる広さだ。だが、併せて階段も利用できるようになっており、そちらの方が手っ取り早くて便利だった。

客室は、パークホテル時代に270室あったものを、189室に絞り込んだ。内装は、パブリックスペースも含め、すべてスーパーポテトが担当し、日本情緒とモダンデザインが見事に調和した粋なインテリアに仕上がっている。今回利用したのは、最もコンパクトなタイプであり、かつ標準客室にも当たる28平米のゲストルームだ。かつては3室だった客室を2室のゲストルームに改装したので、窓が1つと半分になっている。

客室はとても使いやすかった。そして、28平米という狭さをさほど感じさせなかった。心地よいベッド、広いバスルーム、機能的なデスク周辺に加え、秀逸なデザイン性によって心地よい空間が演出されている。27平米だというグランド・ハイアット・福岡のゲストルームと比較しても、こちらの方がずっと広く感じられ、2名で利用したとしても程よい親密感とともに過ごせるだろう。

家具にはすべて明るい色の木が使われている。半円に迫り出したデスクには、アームチェアとイスが添えられているが、これ以外にソファなどはない。デスクのサイドには引き出しやミニバーのユニットがあり、32インチのViera、DVDプレイヤーが設置されている。地上デジタル放送や、海外CS放送も充実しているのが嬉しい。ミニバーには3種類のグラスや玉露茶が用意されているが、冷蔵庫のソフトドリンクは519円と高めだ。

壁には木目部分とクロス部分とで変化を付けている。明るい色調の木目部分に、あえて古木のオブジェを掛け、そこにハロゲンのスポットを当てるという演出もいいし、ベッドボードの古布は、いかにも京都らしいだけでなく、日本的な色彩感を表現しており見事なアイデアだ。ベッドは180×200×45センチで、ハイアットらしい真っ白なベッドリネンが清潔感を醸している。窓の外には庭の樹木が迫り、ここが都市の中心部に程近いことを忘れさせる。

照明デザインもいい。ハロゲンのダウンライト、調光可能なスタンドやナイトランプ、リーディングライトやデスクスタンドがそれぞれ独立している。ベッドボードにある照明コントロールパネルのスイッチにも、どれがどの照明に関係しているのかが表示されているので使いやすい。

バスルームはベイシンエリアとウエットエリアに分けられ、間は磨りガラスで仕切られている。全体を石で仕上げており、いい質感だ。トイレは完全に独立させている。ベイシン付近は明るく、スツールが添えてあるので、ドレッサーとしても利用できる。ベイシンエリアから2段の段差を上がると、ウェットエリアになっており、バスタブと洗い場が設けられている。洗い場には便利なイスが置いてあり、石張りの壁の一部が磨りガラスになっていて、居室越しに自然光を取り入れている。バスタブは140センチの長さしかないので、膝を伸ばして入ることは難しいが、深さが十分になるので、日本風に肩までゆったりと浸かることができる。アメニティはハイアットリージェンシー共通のものが揃う。

夕方にはターンダウンサービスも行われた。日中は日差しが強く、蝉の声も盛んに聞こえ、真夏のようだった。だが、夕暮れとともに季節は変わった。庭から聞こえてくるのは、穏やかな秋の虫の声だった。ゆっくりと眠った翌朝は、ルームサービスの朝食を。チャイムを鳴らさず、上品なノックとともに運ばれてきた和朝食は3,410円。一夜干しの焼き魚、煮卵、漬物、おひたし、焼き海苔、赤だし、湯豆腐、ごはんという素朴な和膳にフルーツの盛り合わせが付いてくる。特別な内容ではないが、京都らしさは十分に感じられる。

客室やパブリックスペースなど、客が目にする部分は、非常によくデザインされており、見事に生まれ変わったという印象だが、バックヤードには古い設備ゆえにまだ手直ししなければならない部分が数多く残っているという。最新設備が揃った新築ホテルのようなわけには行かないのだろうが、新築にはないよさもある。それは流れる空気の質だ。このホテルで感じる空気は、とてもしっとりとしていて感触がいい。パリのパークハイアットや、ミラノのフォーシーズンズにも、こんな空気感があったことを思い出させる。そう思うと、京都がパリやミラノに並ぶ場所になる日が来るような気がしてきた。

 
ベッドボードの古布が印象的だ 落ち着いた素材や色彩のインテリア テレビやデスクはひとつの面に集約されている

木目の壁に古木のオブジェ 照明のスイッチ ベイシン

ベイシン越しに洗い場を見る 洗い場にはイスが添えてある バスタブは短いが深い

ルームサービスの朝食 メインエントランス車寄せ 竹林越しにホテル棟を見る

ロビー フロント ロビーから2階に上がる螺旋階段

 
ハイアット リージェンシー 京都


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