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ホテル別インデックス
レストラン別インデックス

2003年5月25日

ストリングスホテル東京 Club Premior Room
怒-5 掛け声倒れの体裁ホテル
アトリウムロビー
開発が著しい品川駅東口に、高水準であることを売りにするホテルがオープンした。全日空ホテルズが手がける新業態、ストリングスホテル東京は品川イーストワンタワーの上層部(26階〜32階)を占める全206室の小型高級ホテルだ。つい先日もグランドハイアットがオープンしたばかりで、今後も高級業態が相次いでオープンする激戦の時代のオープンだ。その中を勝ち抜いていくため、高いレベルのサービスと、斬新なアイデアを盛り込んだホテルづくりをしているようだが、果たして全日空にそんなセンスがあるのかと、半信半疑(というか一信九疑)で出掛けてみることにした。

エレベータで26階にあがると、ガラス扉を隔ててすぐ目の前にレセプションデスクがある。カウンターには3〜4名のクラークが待機していたが、先客はだれもいなかったので、とりあえず真ん中にいた男性クラークに名前を告げたところ、「チェックインでいらっしゃいますか。それではそちらへ」といって、隣の若い女性クラークのところに移動させられた。彼はチェックインの担当ではなかったのかなと思い、素直に隣のカウンターに移動したが、横で見ていると次にやってきた外人客のチェックインをしている。どういう都合か知らないが、失礼な話だ。

さて、こちらの担当の女性は、慣れない手つきでカタカタと端末を打ったり、後ろのキャビネのファイルを探したりしているが、どうも予約が見つからないようだ。仕方ないので、念のために控えておいた予約のプリントアウトを見せたところ、予約したカテゴリーや料金ははっきりしたようだが、今度はその予約した部屋の準備がまだできていないらしい。

部屋ができていないならその辺でブラブラして待っていると申し出たのだが、それでは申し訳ございませんからといって、いろいろ調べてくれて、同じカテゴリーの喫煙の部屋ならすぐに用意できるという。新しいホテルでまだそれほどタバコの臭いも染み付いていないだろうと思ったので、それで構わないと伝え、何とかチェックインすることができた。本来このホテルのクラブルームは部屋でチェックイン手続きができるのだが、そんなこんなで、結局フロントで20分も立ち尽くしたまま手続きさせられるハメになってしまった。

ベルガールに案内されて28階の客室にたどり着くと、なんとドアが半開きになっている。まだ清掃が済んでいないようだ。それを見たベルガールは、慌てた様子で「こちらで少々お待ちください」といって、荷物カートもそのままにして、どこかに走り去ってしまった。取り残されて、仕方なく廊下で立ち尽くして待っていると、5〜6分ほどしてさきほどのベルガールが息を切らせながら走って戻ってきた。フロントが部屋のアサインを間違えたとのことで、今度はひとつ上のフロアに案内された。やっとのことで部屋に落ち着いたのは、車で到着してから35分も経ってからのことだ。

あちらでもこちらでも待たされていい加減いやな気分になったので、責任者にきちんとした説明をするようベルガールに言ったのだが、マネージャーがやってきたのは、それからさらに20分後だった。そのマネージャーが言うには、予約が通っていなかったことについては、予約は確かに頂戴していたが、オンライン経由で届いた予約データをホテル側の予約システムに手作業で移す段階で処理の遅れがあったとのこと。

また、部屋に問題があった場合は、ベルがお客さんと一緒に一旦フロントまで戻るのが本来のやり方で、お客さんを廊下に残したままベルが戻ってしまったのは間違いだったとのこと。済んだことにこれ以上文句を言っても仕方ないと思ったので、「ずいぶん立派な値段を取っているが、これでは値段の半分の価値もない」と正直な感想を述べ、「チェックアウトまでにこれまでのミスを挽回してほしい」といって、もう下がるよう指示した。

ところが彼はすぐには下がらず、今後の予定はどうなっているのか、食事の予定は決まっているのか、としつこく尋ねるので、「とくに予定は決めていないが、夜は友人と食事をする約束がある」と答えた。すると、もしよろしければ館内のレストランをご用意させていただく、という。フランス料理と中国料理があるがどちらでもお好みのほうをと言われたが、どういうレストランがあるのか予備知識がなかったので、自分ならどちらがいいと思うかと尋ねたところ、彼は中国料理のほうが景色も良くてよいと思うというので、そちらを用意してもらうことにした。

クラブ・プレミアルームは、38平米という割りには少し狭いような気もしたが、バスルームがかなり広いのと、ベッドの裏側にあたるクロゼットと入口ドアのあたりがゆったりした造りになっているせいかもしれない。また、ベッドサイドテーブルは、左右対称になっている例が多いが、ここは右と左がまったく異なるデザインになっているのも面白い。

ワイド型の液晶テレビは、フォーシーズンズホテル丸の内東京とは違って画面は小さいが、BSやCS、映画上映も含めて、31chすべてが無料だという。この日の映画チャンネルは、オースティンパワーズ・ゴールドメンバーとバイオハザードが上映されていた。ミニバーは、ミニチュアボトルが5本と、シャンパンのミニボトルやビール、ジュースなどが収められているが、いずれも無料だが、品揃えは貧弱な印象。バスルームは洗い場式になっているが、お湯の水圧はかなり高く、リフレッシュには最適だ。

26階から32階までの中央部分は、外光が差し込む大きなアトリウムになっている。客室はすべて外向きだが、アトリウムを取り囲む廊下の壁はガラスで、どこからでもアトリウムを見下ろせるようになっている。アトリウムの中央を横切るように、ガラスの橋が架けられており、それを越えたところに中国レストランがある。アトリウムの半分はフレンチレストランになっており、食事をしているお客さんたちが廊下から見下ろせるというのも面白い。客室階へのエレベータホールには鍵のかかった入口があり、ルームキーを差し込まないと鍵が開かないようになっている。フィットネスルームやビジネスセンターの入口も同じ仕組みで、宿泊客以外は利用できないようになっている。

クラブルームというと、特定の階が対象になっている例が多いが、ここでは、各階のレインボーブリッジ側の一列がクラブルームになっている。この向きが見晴らしのよい一角ということのようだが、レインボーブリッジの眺めでは、インターコンチネンタル東京ベイや日航東京のほうがはるかに見ごたえがある。

クラブプレミアルームの横長い窓からは、左手にレインボーブリッジが一応見えるものの、真正面には隣のインターシティのビルが立ちはだかっている。この部屋がクラブルームの中では最もインターシティ寄りの東側の一角にあって、一般のクラブルームとは向きが45度ずれているせいだろう。同じ広さ・間取りのモデレート・プレミアルームがちょうど反対側の東海道線側の角にもあるが、そちらの方が見晴らしはよいかもしれない。また個人的な好みでは、線路越しに都心部を一望できる泉岳寺方向のモデレートルームのほうが、クラブルームより良い眺めなのではないかという気がする。

26階に用意されたフィットネスルームは、ウェアやシューズも無料で貸してくれて、宿泊客は24時間利用できる。マシン数台程度のこじんまりした施設ではあるが、ここまでのいやな気分を解消できるかと思い利用してみることにした。ところが、受付の女性は「本日は、ウェアがすべてクリーニング中で、ご用意できません」という。聞けば、ウェアはもともと5着程度しか用意していないとか。あまりの用意の少なさに、驚きを通り越して情けなくなってしまった。部屋に戻って、さきほどのマネージャーに電話で事情を話したところ、「申し訳ございません。すぐにウェアをご用意します」とのこと。

20分ほどたって、ちょっとサイズは小さいものの、何とか用意された。ややキツ目ではあったが、せっかく用意してもらったので、それを着て30分ほど軽く運動をした。一通り体をほぐして帰ろうとしていたところに、入れ違いに3人連れの女性がやってきた。彼女たちもウェアがないと言われて断られていたが、受付係も少し学習したのか、夜の11時頃にはウェアがクリーニングから戻ってくると言っている。彼女たちは、その後で利用することにしたようだ。そんな真夜中に運動して健康によいのかどうかはやや疑問だが、割引料金でさえ1室4万円もの料金を払っているのだから、本来使えるはずのものは、意地でも使ってみたいのかも知れない。

さて、夜になって友人もやってきたので、ホテル側が用意してくれたという中国レストランに行こうとすると、先ほどのマネージャーがロビーで待ち構えていた。そして彼は、お詫びの印としてひとり分だけは無料にするが、友人の分は負担しないという。その言葉を聞いて耳を疑った。あくまでもご宿泊者への不行き届きに対するお詫びの印だから一人分招待すればことが済むと判断したというが、今回のことの流れや状況を考えると、片手落ちもいいところだ。

こちらとしてはホテル内レストランを利用する気は毛頭なかったのに、連れがいるとわかった上で、お詫びとしてレストランに招待すると切り出したのはホテル側だ。外で食事をする予定をこのホテル内に変更させておきながら、お連れ様の分はしっかり頂戴いたしますと言われて、それはそれはありがとうございますと感謝するような感覚は持ち合わせていない。むしろカモにされているようないやな気分になった。ひとり招待してひとりからしっかり料金を取るということは、事実上半額にすることと同等だが、レストランの原価率から考えればそれでも十分に利益が残る。そんな押し売りのようなまねがお詫びだなどとはおかしな話だ。結局気を利かせたつもりがかえって墓穴を掘るサービスの典型になってしまったのだ。

初めからレストランで食事をどうぞなどと色気を出した提案をせず、部屋にフルーツを入れるとか、チェックアウト日に午後までゆっくり部屋を使えるようにするなど、細やかな気遣いを積み重ねる方策を採るべきだったと思う。大きな提案にはインパクトはあるが、それだけで十分な効果は望めない。結局心に染み込んで来るのは、ひとつひとつ誠実で丁寧なサービスであり、ホテルにおいてはそれが確実に次につなげる鍵だ。

そして、この件を担当した若いフロント責任者の態度は極めて劣悪であった。ホテルサービスに求められるものにことごとく反する存在だ。話せば話すほど高慢になり、相手の立場を考慮することなく自己の正当化に終始するようでは、この仕事に向いていないと言わざるを得ない。彼には素朴な疑問を感じ、このホテルが開業する前は、どこのホテルにいたのかと質問をしてみた。その答えは、今回のこととは無関係だから答える必要はないとのことだった。後刻、彼の経歴を彼の上司に尋ねてみた。そのホテルの名を聞いて、一連の態度に妙に納得してしまった。

ホテルのブローシャーには、「価値」とか「上質」「極上」という言葉が散見される。ほんとうの価値を知る人に満足してもらえるホテルが誕生する云々と書かれているが、本当の価値には疎く、体裁や見た目に左右される人にしか通用しないのが現状だ。これで室料が安ければまだ我慢ができるが、「狭い」「気が利かない」「高い」と3拍子揃ってしまったら、人にはとても勧められない。せっかく掲げた目標をきちんと実現できるよう、相当に奮起してもらいたい。

モダンながら落ち着いた色調の室内 和のテイストを巧みに取り入れている

木肌の風合いも落ち着きを感じさせる ベッドの裏側にクロゼットやバーコーナーがある

プライベートバー デスクにはミラーを備える

バーの引き出し 冷蔵庫は寂しい品揃え

ベイシン バスタブ

アメニティ ラテデュールのチューブやソープ

横目に眺めるレインボーブリッジ 目に前にビルがはだかる眺め

外観 ロビー階の客室階行エレベータホール

[ストリングスホテル東京]

Y.K.