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2002年2月23日

ホテルニューグランド Executive Deluxe Room
哀-5 哀しみのホテル
本館2階へと続く階段
出迎えたのは、がっしりとして気さくな感じがするドアマンだったが、客が車から重い荷物を降ろしているのを横で立ったまま眺めているだけで手を貸そうとしないのには、いささか驚いた。促されるままにフロントに進むと、カウンターに立つなり、係からレジストレーションカードを差し出される。ごく当たり前のことのようだが、何かが欠けているために違和感があった。

その違和感の原因は、作業のペースにあるようだ。担当したフロント係は、おそらくベテランで手際がよく、処理能力に優れているのだろう。ぱっぱと自分のペースで手続きをこなしていたのだと思うが、それが客であるこちらの呼吸とまったく合わなかった。なにも後ろに長い列ができているわけでもないのだから、ゲストのペースに合わせてサービスするというのも、大切な考え方のひとつではなかろうか。

レジストレーションカードを書き終わり、あとはルームキーをもらえばおしまいという段になって、エグゼクティブフロアで予約が入っているので、手続きは向かい側のデスクで行なうから、そちらへ行くようにと言われた。カウンターで立ったまま手続きの大半を終えてしまった今となっては、改めてデスクに腰掛けることに何の意味があるというのだろう。チェックインを別の場所で行なうサービスがあるのなら、該当するゲストの名前はリストアップし、ドアマンにも把握させておくくらいの徹底をしなければ、せっかくのサービスが生きてこない。

案内された客室は、どういうわけか、トイレの清掃が行なわれていなかった。単純な見落としだとは思ったが、ルームチェンジしてくれることになった。しかし、新しい客室に落ち着くまでには、結局50分を要した。その間、16階のラウンジで待つことになった。ラウンジはセルフサービスのコーヒーや紅茶が用意されているが、使った器を片付けるところまでセルフサービスを要求しているのには驚いた。

ゲストリレーションが常駐してホテル内外の案内を行なっている、とディレクトリーには記載されていたが、実際にはほとんど無人で、時折アルバイトの男の子が食器を整えにやってくるだけだった。そのアルバイトも、廊下ですれ違う客室係のおばさん達も、皆感じはよく、よい指導さえすればよい仕事をしてくれるに違いない。こういった磨けば光る人材を生かしきれていないのは、ホテルのオペレーションの問題だろう。

人件費を圧縮するためにアルバイトを多用するのは多くのホテルで行なっていることだが、頭数をそろえるだけではよいサービスは提供できない。完成度の高いマニュアルやトレーニングプログラムを持つ大手外資系チェーンホテルなら、アルバイトにもそこそこのスキルを与えることはできるだろうが、地方の一中堅ホテルがその真似事をするのは大変危険な気がしてならない。人件費を単純に圧縮するだけで、将来本当に勝ち残っていけるのと考えているのだろうか。ことに、ここのような名門ホテルでは、期待される相応のレベルのサービスが提供できなければ、客足は遠のく一方だろう。これでは、いくら人件費を圧縮できても、結局は角を矯めて牛を殺すことになってしまうのではなかろうか。

新しく用意された客室は、概ねよく清掃されていたが、前の客室でも気になっていたバスルームの電話機の上に積もった埃は、この客室でも同様だった。この部分は清掃しなくてよいことになっているのかもしれないが、相当の汚れなので、たまには全室チェックした方がいいだろう。

海側正面を向いた客室は、窓が横幅一杯にあるが、窓の高さはそれほどない。タワーのサイドにある客室の多くは床から天井近くまで高さのある大きな窓を特徴としているが、眺めがより素晴らしい正面の窓がそうでないのは少し残念だ。面積は33平米で、設備面ではサイドにあるタイプとほとんど変わらない。かつてベロア風だった壁紙は、ありきたりの材質のものになってしまい、部分的に波打ったり浮き上がったりしているのが見苦しい。電動カーテンのモーター部分がむき出しで丸見えなのもみっともないし、カーテンそのものも長さがわずかに足りず、遮光性に欠ける点もマイナスポイントだ。

ターンダウンでは、アイスバスケットを用意してくれるが、タオルの交換や使用したカップの洗浄などは行なわない。ベッドカバーは無造作に丸められ、クローゼットの棚にだらしなく放り上げられていたのはショックだった。自分のホテルに愛情があったら、こうはしないだろう。

そんな哀しいことをすべて忘れさせてくれるのが、素晴らしい眺望だ。眼下には山下公園が、そして港やベイブリッジが一望でき、時間が経つのも忘れてしまう。肌触りのよいソファに腰掛けて、何時間でも眺めていたい。ベッドに横たわってもその眺めを楽しむことができる。バスルーム、ベイシンには大理石を使い、その他の部分には木目を多用して、ぬくもりのあるインテリアに仕上がっている。光の使い方も巧みで、効果を上げており、居心地のいい客室だった。

今回の滞在で最も残念に思ったのは、パブリックのトイレの清掃状況だった。床が水浸しで、ベイシンも汚れ放題。この状況は、数時間を隔てても変わらなかった。オマケにロビーに落ちているゴミも長時間放置されっぱなしだった。いかに歴史があり、立派な建物を持っていようとも、こういったつまらないことで大きな落胆を感じさせるようでは、三流といわざるを得ない。ホテルが泣いている。

ハリウッドツインベッド ベッドから窓を見る

眼下の山下公園 ベイブリッジを望む夜景

オットマン付きのソファ 港を眺めながらのティータイム

ターンダウン後のベッドカバーは無造作に置かれていた アウトベイシンの天板も立派な石

エグゼクティブフロアの客室廊下 エグゼクティブラウンジ「ザ・クラブ」

本館2階 本館2階

2002年2月23日 夜
ホテルニューグランド カジュアルレストラン「ザ・カフェ」
楽-2 気質の濃度
ちょうど受験のシーズンだったのか、店内には学生らしきひとり客が多く見受けられた。慣れないホテルでの食事に戸惑った後は、ひとりで緊張と不安の一夜を過ごすのかと思うと、急に同情心が湧き上がってきたが、なにひとつしてあげられることはなく、ただひたすら合格を祈るだけだった。

店内は100席以上の客席があり、それなりの面積があるが、天井が低いので、窮屈な印象がある。その圧迫感の割には、椅子は大きくて座りやすく、一度席に着いてしまえば居心地は悪くない。しかし、空気が停滞しやすく、タバコの煙がいつも気になるのが残念だ。サービスに当たるスタッフの数は十分で個性もまちまち。不足のないサービスが得られるが、若いスタッフはあまりパッとせず印象が薄い。もう少し積極的に仕事を楽しんでしまう方が、働いていて時間が経つのも早かろうにと思った。

料理はなかなかしっかりしている。ホテルのコーヒーショップでありながら、街の洋食屋さん的な雰囲気も持っている。ライトミールやデザートには、どことなく懐かしさが感じられ、歴史あるホテルにふさわしいラインナップだ。面白いことにこの店は、バリーデザインのインテリアにフォーカスすれば、確かにそれらしさが感じられるが、バリーのテイストよりも、ニューグランドの従業員が醸し出す「横濱チック」なテイストの方が圧倒的に勝っている。長年に渡って染み付いた気質は、デザイナーの個性さえ塗り隠してしまうものなのかと思うと驚きだった。その個性は他では味わえないもの。それが備わっているだけでも十分に価値ありだ。また、宿泊中のみならず、港の散策の途中にふらりと立ち寄るにもいい店。

[ホテルニューグランド] 950430 991001 010428

Y.K.