2001.01.17
ラストナイト
銀座東急ホテル Standard Room
楽-1

40年の歴史に幕を閉じる最後の夜にどうしてもこのホテルで過ごしたくなり、急遽予定を変更して予約をいれた。ところがホテルに直接問い合わせたところ満室との回答だった。JTBのサイトで確認したらトリプルルームがひとつだけ残っていたので、それを予約した。

館内は客数も従業員数もかつて目にしたことのないような数で活気に溢れていた。いつもは見かけることのないマネージャーたちまでもがロビーに顔を出し、長年の顧客などに親しく接している姿が印象的だった。昨年の元旦に訪れたときを思い出す、晴れやかな光景であった。レストランも長蛇の列ができ、午後8時を回る頃にはすでに品切れが続出し、ロビーラウンジでさえごく限られた品物しか用意できないという、予測を超えた展開になっていた。結局深夜近くまで客足は途絶えず、ロビーには零時を回ってからやっと落ち着きが戻ってきた。

客室に戻るといつもと変わらない空気がそこにあったが、それも今夜限り。古くなって使い勝手に不足を感じないわけではない客室だったが、お別れだと思うと名残惜しさがこみあげてくる。ぐっすり休んで、翌朝は「オーツーフォー」で最後のオリジナルエッグを注文。そのあとしばらく館内の雰囲気を記憶にとどめてからチェックアウトした。

フロントカウンターではルームキーのホルダーをプレゼントしており、残っている中から好みのルームナンバーのホルダーを選ばせてくれたので747を記念に持ち帰った。閉館時間の12時には従業員一同がロビーに集まり、ホテルを後にするゲストたちに「ありがとうございました」と声を掛けながら見送っていた。閉館を告げる館内放送があった他には、特別なイベントなどは一切なかったが、それもまたこのホテルらしい気がした。気取らず、飾らず、ひたすらなホテルであった。

2001.02.17
サービス鑑賞
「オリガミ」キャピトル東急ホテル
楽-4

スケート選手権の関係者が滞在している関係で、夜9時近い時間にもかかわらず、ロビーは国際色豊かなゲストたちで賑わっていた。そこへ選手のファンたちが集まり、ところどころで選手を囲んでサインや握手を求める光景が見られた。その賑わいはホテルの雰囲気を決して壊すことはなく、むしろ華やかなムードを盛り上げる役割を果たしていたようだ。国際ホテルならではのシーンだった。

渋谷で行なわれたミュージカルのリハーサルの帰りに、食事をとろうということになったが、車に乗ってしまってからだと赤坂や恵比寿、もしくは新宿あたりのホテルまで出てしまう方がかえって便利なので、六本木通りをしばらく走ってここキャピトル東急ホテルまでやってきた。この日のリハーサルは注意力をかなり消耗してしまったので、何も考えないでひたすら食べられるものに魅力を感じていた。

店に入るまでは「そばサラダ」が頭に浮かんでいたが、メニューを眺めるうちに3500円のコースを注文することになった。これなら一度の注文で、あとは自動的にサービスされて気が楽だ。カニ肉のサラダ、ニンジンのスープ、フォアグラソースのヒレステーキ、サイドサラダ、ベイクドチーズケーキ、コーヒーがタイミングよく運ばれてきた。アタマがボーっとしていた割にはなにを食べたのか良く憶えている。

店内もかなりの活気があって、すぐに座れる席はカウンターだけだったのでそこに座ったのだが、すぐにテーブル席にも空きができて、席を移れるよう気を遣ってくれた。でも、カウンターはカウンターで魅力的なのでそのまま席を動かなかった。のどが渇いていたので水を一気に飲み干してしまったのだが、なかなか注ぎにきてくれない。気が利かないのではなく、忙しくてまさに手が回らないという状況。

それでも、従業員はキリッとしながらスマートにサービスしており、イライラした様子など微塵も見せないところが見事だ。ぼくがグラスをテーブルに置くときコツリと音がしたのだが、その瞬間すこし離れたところにいる従業員と目が合った。次の瞬間にはピッチャーを持って席にきてグラスを満たしていた。そして次の瞬間には次の作業に移っているのがカッコいい。ひとりひとりのスキルが高いので、眺めていてとても楽しかった。食後はこの時期には珍しくアイスコーヒーを飲んだ。それだけアタマを冷やしたい心境だったから。

2001.04.07
Loppi
キャピトル東急ホテル Superior Room
楽-2

夜遅くなって、自宅に戻るか都心に泊まるか迷ったとき、近くにローソンがあれば覗いてみるといい。店頭に設置してある端末『Loppi(ロッピー)』ではJTBから提供されている様々な宿泊プランの予約が可能だが、その中に当日限定の「お気楽トンボ」という商品がある。ビジネスホテルからシティホテルまで結構豊富なラインナップの中から選択でき、当日ならではの低価格で宿泊できる手軽さがありがたい。中でもオトク度で光っているのがキャピトル東急ホテルだ。空いてさえいればツインルームが1室14,000円以下で利用できる。

安いプランを利用すると、あまり条件のよくない客室をアサインされたという話をよく耳にするが、このホテルなら最低ランクのツインルームでも32平米あって、快適な寝具と大理石張りのバスルームがある。たとえ最低層階の2階になったとしても、それほどがっかりすることもないだろう。もちろん、ルームサービスやベルサービスなど、様々な行き届いたサービスが利用できるし、夏期であればプールも使える。立地もいいし、つまらないビジネスホテルに収まるよりはずっと快適なのだ。

ただ、ある時は40,000円近く払って宿泊したのと同じ客室に14,000円で泊まれるのも不思議なもので、本来は「今回がトクをしたんだ」と感じるべきところが、「前回は損をしたな」なんてどうしても安い方を基準に考えてしまいがちだ。しかし、ホテルの客室を確保するのはある意味飛行機のチケットに似ていて、同じ内容でもどのタイミングで確保するかによって値段に差が生じるのが普通で、別の機会に高い料金で宿泊したことを損だと考えてはいけない。それに、このホテルは安い料金のゲストをないがしろにするようなことが一切ない心の広いホテルであることも、今回の滞在でよく理解できた。

キャピトル東急ホテルの他にも、新高輪プリンスホテルやホテルイースト21など普段よりもオトクに利用できるホテルがたくさんあるのだが、このLoppi、なにしろ反応が鈍いのが困りもの。操作を始めてからカウンターで発券してもらうまで、10分は見ておかなければならない。大抵店には1台しかLoppiがないから、先に誰かが使っている場合は、待つよりも次のローソンを探した方がいいくらいだ。

2001.04.27
サラリーマン気質
コーヒーショップ「かるめら」セルリアンタワー東急ホテル
哀-4

セルリアンタワー東急ホテルは4月20日にソフトオープンしており、客室とレストランの一部がすでに営業している。国道から車で進入し、係員の誘導に従って、ホテルの正面玄関を横目に駐車場へのスロープを下ってゆく。くるくると随分深いところまで落ちてゆくような感覚だが、進入路は比較的広く造られており、駐車場内もゆとりがある印象だった。駐車場からロビーへと向かうエレベータは、まったく飾り気がなくセンスの悪いオフィスビルのエレベータのようだった。この時点で最新ホテルに対し少なからず抱いていた期待は砕け散った。

ロビーは2層吹き抜けでとても広く、見事な石組みをあしらった庭園を望むティーラウンジが正面にある。ロビーに面した一角にフロントカウンターがあって、そこにはソフトオープン中だからか、非常に多くの係が立っていた。ゲストで賑わっていれば様になる光景かもしれないが、ロビー内にゲストの姿は少なく、カウンター内だけが熱を帯びているような感じで妙な印象を受けた。同じくこのロビーに面してコーヒーショップがあり、ぼくらはそこに入ることにした。

禁煙席をと頼むと、窓際の奥まった席に案内された。そこからも、庭園の石組みを眺めることができる。日中の店内は日差しが入り、明るく軽快な雰囲気。気取ったところは微塵もなく、いつでも気軽に利用できそうだ。手渡されたメニューを見ると、料理の価格帯は1,000円台のものが多く、ホテルレストランにしては手頃に抑えている。おやつには遅く、夕食には早いという中途半端な時間だったので、BLTサンドとアイスコーヒーを注文した。練習あとで喉が渇いていたので、飲物は先に持ってきてくれるよう頼んだ。

そして程なく運ばれてきたのはサンドイッチだった。しかし、連れの料理ははなかなか出てこない。先に手をつけるわけにはいかないが、連れは「お先にどうぞ」と気を遣う。初めは「どうも」と答えながら適当にお茶を濁して料理の到着を待っていたが、あまりに時間の開きがあったので先に食べることにした。

サンドイッチそのものも、ぼくが想像していたものと違って、オープンサンドのスタイルで出てきたのだが、すでに冷めてしまったこともあってあまりおいしく感じなかった。係が空いた皿を下げる際、連れにコーヒーのおかわりを尋ねた。ぼくには「お客様にもなにかお持ちしましょうか?」と尋ねられたのでアイスコーヒーのおかわりを頼んだ。係の表現に何か引っかかるものはあったが、メニューには「コーヒーまたは紅茶(おかわりはご自由にお申し付けください)」と記載されていたのを記憶している。メニューに特にアイスコーヒーを別とは記載しておらず、ホットもアイスも含めてコーヒーまたは紅茶と記載してあるように読み取れるだけに、伝票に計上された2杯のアイスコーヒー代金には、してやられたという印象をもった。

さらに、会計時に割引をしてもらおうと思い、東急ホテルズの会員組織「ウェルカムメンバーズ」のカードを提示したところ、このホテルではレストランでの割引特典は適用外だといわれた。ここは東急ホテルではないのかと尋ねたところ、電鉄が運営するホテルだから東急ホテルズとは別会社なのが理由だとのこと。その理由に納得したわけではないが、サービスのセンスがない人間が指揮を取っているホテルであることがわかり、別な意味で合点がいった。

サービス業ではあっても、サービス人の気質ゼロ、商売人の気質ゼロ。あるのはサラリーマン気質だけだ。でも、立地は魅力的。サービスゼロでも客は来る、そのあたりの足元を見られているのがなんとも癪に触る。

2001.04.29
夢想花
セルリアンタワー東急ホテル Corner Room
哀-5

窓からの眺めは見事だ

到着はとてもスムースだった。正面玄関にはドアマンがおり、荷物がポーターへと引き継がれ、フロントカウンターへと案内される。このホテルにはベルアテンダントがいない代わりにポーターと呼ばれる係がいる。どうやら荷物の多いゲストのサポートをするのがポーターの主な務めらしい。最初はそれらの違いがわからなかったが、チェックイン時に荷物が少なくても客室まで案内するベルアテンダントに対し、ポーターはそういった案内は行なわないそうだ。

確かに別館だ新館だと館内が入り組んだ施設ならともかく、客室へのアクセスがとてもわかり易いこのホテルなら、案内なしを標準にしてもサービスを削られたという印象をぼくは受けない。ベルアテンダントに望むことは荷物の世話が中心だから、手ぶらに近い場合にわざわざ係を煩わせるよりは、ひとりで客室に向かう方が気が楽だ。

ベルアテンダントと一緒に客室へ向かう場合、「今日も暑いですね」とか「以前にもご利用いただきましたね、ありがとうございます」とか、ちょっとした会話で気分を和らげてくれたり、「今日からレストランでこんなフェアが始まるんですよ」といった情報を提供してくれるエンターティナーがたまにいるが、フロントやコンシェルジュに比べると経験の少ない従業員が多くいるセクションでもあるから、何かを尋ねても曖昧な返事をされることが少なくない。そんな経験から、ベルアテンダントに情報を求める時は人をみるようになったし、荷物がない場合には客室への案内を申し出られても断るようになった。

このホテルもフットワークの軽いホテル慣れしたゲストの利用を想定してこのようなシステムを採用したのだろうが、黙っていたのではそのコンセプトは伝わらない。それに、ただ「やりません」という姿勢では、単純にサービスをカットしたような印象をもたらし、不評を買うかも知れない。ソフトオープン中なのだからこそ、その辺の需要を探る期間だと考えて、フロントでゲスト一組一組に「客室へのご案内はいかがいたしましょうか?」と尋ね、結果をグランドオープン時に役立ててゆく方法もあったはずだ。

しかし、このホテルはソフトオープンをした時点で、すでに頭が固まっていた。実際に利用してみて、何のためのソフトオープンなのかわからなくなった。レストランは完全に通常価格、宿泊もとりわけ料金を抑えたとは感じられない強気なレートだ。フロントではキャピトル東急ホテルから移ったベテランの係がチェックインを担当し、正確で丁寧な対応を受けることができた。用意してもらった客室も、概ね清掃が行き届いてよい状態だったが、バスタブが汚れていたので再清掃してもらった。

今回利用した客室は22階のコーナールーム。客室は19階から37階までの高層階にあるので、どの方向にもダイナミックな都市景観が広がるが、すべて高層階だからと安心してはいけない。低い階では方角によってマークシティやインフォスタワーなどの近くの高層ビルが視界をかなりさえぎるので、ぜひとも高層階を利用したいもの。今回はそのための授業料だった。

さまざまなタイプの客室があるが、基本的なデザインやインテリアのクオリティは変わらない。新しいホテルらしく、シンプルでスッキリとした印象はあるが、家具の質感はまるで無印良品で売っていそうなものばかり。引き出しはすでに木材が反り返っていた。寝具は心地よいが、頬擦りしたくなるような上質なシーツだというわけではない。テレビは大型なのはよいが、剥き出しで目障りだし、湯沸しポットに至っては、町内会の備品じゃあるまいし勘弁して欲しいような代物。クローゼットの扉はどこのディスカウントショップで買ってきたのかと尋ねたくなるような安手な材質と建て付け。楕円形のライティングデスクは作業をするには小さすぎる。

天井は270センチの高さがあって、さすがに圧迫感のない空間づくりがなされているし、2面にある窓は腰の高さが63センチと、眺めを堪能するには申し分ないが、照明は平板で面白くないし、困ったことにヘッドボードに仕込まれた明りとスタンドが連動しているから、鬱陶しい蛍光灯のヘッドボード照明だけを消すことができず不便。

がっかりしっぱなしの室内だが、バスルームだけは秀逸だった。コーナールームではバスタブの脇に窓がある。9平米近い面積のバスルームは全体が石張りで、照明の明るさがコントロール可能なのがうれしい。シャワーブース付きで、洗浄機能付きトイレは個室でこそないものの、壁に遮られ目立たない位置にある。シャワーの水圧は十分で実に気持ちがいい。アメニティはSOMOのシャンプー類と、無香料の石鹸が印象的。パッケージのシルバーカラーも、全体の色彩感にマッチしている。この料金のホテルにしては珍しく、ターンダウンを実施しない。バスローブはエグゼクティブフロアにしかなく、せっかくバスルームに並々ならぬ力を注いだのに、最後の仕上げに手を抜かれた感じ。

ケチばかりだが、この客室でぼくが一番気に入ったのは、室内の静けさだった。眼下に鉄道や幹線道路、首都高速などが通っているにもかかわらず、その喧騒はほとんど伝わってこない。空調もほとんど音を立てないし、周辺の客室からもれ聞こえてくる音も感じなかった。この点は高く評価できる。

しかし、翌日またフロントに予期せぬことを言われた。ウェルカムメンバーの特典であるレイトチェックアウトができないという。客室が混雑しているからといった理由なら納得もするが、別に混雑しているわけでもないのに、一律にレイトチェックアウトはさせないの一点張り。なぜそのようなことを勝手に決めたのか不思議だ。ソフトオープン期間中は、ウェルカムメンバーの比率が高いと予想されるから、レイトアウトを認めていたら部屋が回らないとでも考えたのか。あるいは、ソフトオープン期間中は割安(とは思わないが)な料金で泊めやっているのだから、そこまでサービスするのは過剰だとでも考えたのか。

まあ、レストランでの会員割引もしていないことから考えると、セルリアンタワーは東急ホテルじゃなくて電鉄のホテルだから、ウェルカムメンバーなんて関係ない、くらいに思っているのかもしれない。もういちどなぜ顧客プログラムを設けているのか、なぜ特典を提供しているのか、考えて直してもらいたいものだ。顧客プログラムは、顧客を囲い込むためのツールだろう。顧客を囲い込むためには、何らかのインセンティブが必要だが、いまどきは割安なプランやクレジットカードでの割引などが活発だから宿泊料金の割引特典はあまり意味をなさない。東急ではポイント制はとっていないし、そうなるとレストランの割引やアップグレード、レイトアウトしかインセンティブにならない。それらのインセンティブを何ひとつ提供しないというのは、一体どういう考えなのか理解しがたい。ラックレート時の宿泊料金割引だけで十分なインセンティブだと考えるなら、マーケット感覚の欠如だ。

今回の対応をみていると、東急ではホテル側の厚意でオマケしてやってるんだくらいに思っているようにさえ感じられる。インセンティブではなく、ホテルの設備やサービスの質でお客を囲い込むというつもりなら、それは夢想でしかない。お客を囲い込む気がないのなら仕方ないが、もし囲い込みたいなら最初が肝心だ。旧銀座東急やキャピトル東急の既存のゲストは、最初はみな様子見にやってくるだろう。その人たちが当然期待しているものを敢えて提供しないのはなぜか。最初の一番重要なときに、わざわざお客を敵に回すようなことを、なぜ敢えてするのか。そんなことをしているようでは、「ゼロからの出発」ですらなくて「マイナスからの出発」になってしまうだろう。

客室の静けさひとつとっても他のホテルでは得がたいもののひとつだし、スタンダードルームにもゆったりした石張りのバスルームを用意しているのも強みだろう。ベルをやめポーターを配したことも、べったりと張り付いたサービスを見直し一歩離れたところから的確なサポートを提供するという新しい取り組みだと思う。そういった良い点には何も触れず、このホテルの広告は、「隅々にまで贅を尽くした空間」だとか「ゲストひとりひとりに照準を合わせたサービスを提供する」といった空疎な言葉で自画自賛していたが、一体どこにそれが顕われているのか見当がつかない。これらはそうありたいという希望や理想ではあるだろうが、実際にそれを提供できていると思っているなら目が曇っているとしか言いようがない。

そんな謳い文句と強気な料金だから、ラグジュアリーホテルなのかと一瞬期待を寄せてしまうが、実際に利用してみると、現状では東京ドームホテルに毛が生えた程度のレベルだ。日本の伝統美に通ずる高いデザイン性を垣間見せる部分も僅かながらあり、このホテルが本来目指そうとしたものも見え隠れするのだが、このホテルの実態はその高邁な理想とはかけ離れている。一見、素朴で簡素なものにでも心を通わせられるような利休好みのホテルになるには、スタートから道を踏み外しているように思えてならない。

シンプルな室内 2面の窓があり、レースカーテンの替わりにブラインド風のスクリーン

日本料理「金田中 草」

朝食券を持って朝食をとりに行った。ロビーを見下ろす2階に店のエントランスがあり、自然な草花をあしらったディスプレイが、その素朴さゆえに目を惹く。間接照明が施された白い壁伝いに進むと、既存の日本料理店とは一線を画するシンプルな客席が広がる。天井は高く明るい店内は、店名にもなっている「草」というイメージをよく表現している。シンプルなイスやテーブルは、ややパークハイアットの「梢」に似せようとした感が否めないが、高級感、完成度共に「梢」には遠く及ばない。

朝食は至って質素で、坊さんになった気分。器には工夫が見られ興味をひかれたが、たどたどしいサービスで運ばれてくると、イメージが崩れてしまう。日本の伝統美を堪能するには、並でない想像力が必要なのだ。そして、卵焼きの中には殻が混入しており、じゃりじゃりした。名店「金田中」の名が泣く。

コーヒーショップ「かるめら」

夕方5時半頃に入店し、早めの夕食をとることにした。店内にゲストは少なく落ち着いていた。昼間見ると明るい店内だが、夕方を過ぎて外が暗くなるにしたがって、平板な照明が気になり始める。なにを狙ってそうしたのか不思議なほどに、まったくといっていいほど陰影のない照明だ。ハロゲン光の器具も備わっているが、それらしい効果を発揮しておらず、社員食堂のような雰囲気になってしまっている。これでは、わざわざホテルで食事をしている気分にはならない。

料理は2,500円のセットメニューを注文した。いわゆるプリフィクススタイルで、前菜、主菜をメニューから自由にチョイスして、その他に、サラダかライスかパンと、コーヒーか紅茶がついてくる。手頃な価格設定でありながら、選択の範囲が広くてありがたい。ただ、味は空港内施設やデパートの食堂街のような感じで、キャピトル東急や銀座東急のような、オーセンティックなホテルメイドの味わいとの共通点はあまり見当たらなかった。サービスは快活で、テーブルによく気を配り、不足のないものだった。

2001.05.17
折り目
セルリアンタワー東急ホテル Standard Room
哀-3

西側の夜景

ソプトオープンの特別レートを利用してスタンダードルームに宿泊した。高層階をリクエストしたところ、たまたま一般階では最も高層の34階にアサインしてもらうことができた。前回のコーナールームは22階だったが、それに比べると眺めははるかに素晴らしかった。眺めのよさは向きも影響するが、このホテルではむしろ高さがものを言うようだ。

37平米の客室は、なかなか機能的にレイアウトされ、使い勝手がよいと感じる部分も多い。しかし、家具はいくら眺めても、手で触れても、よさを見つけることはできない。エントランスを入ってすぐの場所にある、クローゼット・引出し・ミニバーの3つの家具は、せいぜい子供部屋向けの材質だ。楕円形のライティングデスクは、テレビ台も兼ねた大きなコンソール型デスクに固定されており、小さすぎるし動かないしで不便極まりない。照明に関する工夫もいまひとつなのは、コーナールーム同様だ。

しかし、やっぱりバスルームの誘惑に負けてしまう。スタンダードルームのバスルームとしては、実に完成度が高い。コーナールームと違いバスルームに窓はないが、全体に石を張りめぐらせたバスルームには、7.5平米近い面積を割いた。トイレとベイシンとの位置関係も巧みで、直接便器があまり目に入らないような工夫がなされている。ベイシンのあるコーナーと一面のガラスで仕切られたバスタブのコーナーは洗い場付きで、シャワーの水圧も十分で快適だ。ベイシンの周囲には小物を並べたり片付けたりするスペースがたっぷりとあるのも便利。もちろん、BGMも聞け、照明は調光式だ。やはりこうまで充実したバスルームがあると、バスローブが欲しくなる。

フロントのサービスはだいぶ愛想が出てきたが、まだ感覚が未熟だ。部屋の便箋を使い果たし、追加の便箋を食事の帰りにフロントに立ち寄ってもらおうとしたところ、折れ曲がってしわくちゃの便箋を差し出された。それでは具合が悪いと言うと、交換して別のものを差し出したが、それも大差なく折り目のついたものだった。自分の働くホテルのネームが入った便箋に折り目やしわがあるにもかかわらず、平気で差し出せる神経が信じられない。キャピトル東急のベルマンが深夜に必死で磨く真鍮の灰皿は、東急ホテルのサービス精神をぼくに伝えてくれた。その輝きを一瞬で曇らせるのは、新しいフラッグシップホテルで働く同僚の無神経さなのだから、困ったものだ。

壁にギリギリなベッド 光がまっすぐ目に入って意外とまぶしいスタンド

2001.05.23
グランドオープン前夜
セルリアンタワー東急ホテル Standard Room
楽-2

シングルルームを予約してあったが、アップグレードされて前回利用したことのあるスタンダードツインルームにアサインされた。できるだけ多くの客室タイプを利用してみたいと考えている手前、本来うれしいはずのアップグレードが不都合な場合もある。せっかくの好意をムダにしはしたくないし、シングルがないからツインにしたのだろうから、ありがたくツインを利用させてもらった。

今回に限らず、シングルが埋まってしまい、ツインのシングルユースにアップグレードしてくれるというのはよくある話だ。しかし、大抵の場合、ツインルームのベッド幅はシングルルームのそれより狭い。部屋の総面積よりも、ベッド幅を大切にしている人もいるわけだから、面積の広い部屋とか、料金が高い部屋にしたからといって、必ずしもよろこばれると考えるのは間違えだと思う。たとえ、よりよい部屋を用意するにしても、予約で受けたタイプと異なるのなら、ゲストの意向を確認した上で、承諾されても詫びを添えるほうがいいだろう。

今回のスタンダードルームは清掃も十分に行き届いており快適だった。高速インターネットが1泊につき1,000円で利用できるのだが、接続がスムースにいかなかった。なぜか知らないが、パスワード入力画面でパスワードを入力するとブラウザが強制終了してしまう。その直後に再度アクセスすると上手く接続ができるようになる。しばらく使わずにいて、自動的に接続が切れると、また同じことになった。最近は、無料で高速インターネットが使えるホテルが増えてきたのに、新規開業ホテルがそれを有料サービスにするとは、時代に逆行しているような気がする。

チェックアウト日は、このホテルのグランドオープンだった。ロビーで弦楽四重奏の演奏があり、胡蝶蘭の鉢植えが飾られた程度で、特に印象に残るイベントは行なわれなかった。なんとも味気なく、センスの感じられないオープニングで、インパクトもなければ、客足もまばらであった。

中国料理「陳」

ご存知「鉄人」の店。この手合いの店に真っ当な料理なしと考えていたが、ここは違った。ソフトオープンから連日人気で、予約も取りにくい。ホテルロビーを見下ろす2階のデッキに面しており、エントランスを入るとすぐに客席ホールが広がる、無駄のない造り。オープンキッチンを採用しており、人気に支えられた満席の賑わいが、厨房の熱気とあいまってライブショーのような独特のパワーを生み出している。夜のコースは7,000円からと、そこそこ手頃な印象。しかし、せっかくだからと、陳氏の得意料理を中心にアラカルトで注文したところ、高級フランス料理店も真っ青なお勘定書きが回ってきた。まぁ、それでも味としては満足だ。

とにかく独創的な料理が多く、オーソドックスな定番メニューでさえも、スパイスのマジックで、新鮮な驚きを感じさせてくれる。しかし、つくりおきのデザートには全く感心しなかった。カトラリーが安っぽいステンレスなのもいただけない。サービスは洗練度が低かった。よく言えば家庭的なのだが、親しみもなくガサツでデパートの食堂街レベルだろう。もう少し料理を引き立てるサービスを心がけて欲しい。

近くの席で有名なジャズミュージシャンが食事を楽しんでおり、その人に挨拶をするために、オーナーシェフが厨房から客席へと出てきた。その席にだけ挨拶をして、すぐに引っ込むかと思いきや、出てきたついでにすべての席に立ち寄り、「こんばんは」とか、「ありがとうございます」といった声を掛けて回っていた。素晴らしい心がけだと思う。

コーヒーショップ「かるめら」

朝のロビーにはビジネスでステイしている一人客が多く見受けられ、これから仕事に出かけるのか、キリッとした雰囲気のゲストがほとんどだ。年齢層も新しいホテルとしては比較的高い。コーヒーショップの入り口では「おはようございます」と声を掛けながら、席に案内してくれる係が立っているが、ここ何度か朝食で利用してみて、感じの良い時とそうでない時が半々だ。席についてからは、若いスタッフがそれなりのサービスをしてくれるが、今ひとつサービスに活気がなく、素人臭さが抜けないのは残念。

朝食は、主にアメリカンブレックファストとブッフェがあるのだが、ブッフェといっても卵料理、ジュース、コーヒーは係が持ってきてくれるので、アメリカンブレックファストとの差は、パンを席まで届けてもらえるかどうかだ。そして、ブッフェなら、フルーツ、シリアル、サラダ、コールドミートなども食べられるから、内容的に見てもブッフェの方が圧倒的にお得。ディスプレイも楽しく、おいしいそうに見える工夫をしている。ただし、早朝など、時間帯によってはブッフェが利用できないようだ。卵料理は少々時間が掛かるものの、記載になくてもポーチドエッグもつくってくれる。別皿で添えられるミートは脂っこくて口をつけられなかった。

2001.06.28
エレベータ
キャピトル東急ホテル Superior Room
楽-2

以前にも触れたが、このホテルのエレベータは、かなりの年季が入っている。絶えず人々が行き交う大理石の舞台とも言うべきロビーの中央を見据えるように設置された3基のエレベータは、音もなくスッと扉が開く最近のものとは違って、ガラガラという音をたてて開閉し、停止するときもなんとなくぎこちない感じで、ガクンと止まる。中には緑色をしたレトロな感じの行き先ボタンが並んでおり、それをブチッと深く押し込んで階数を指定するのも、今ではなかなか味わえないことだ。しかも、上に行くのかと思って乗り込めば、降下しはじめたりと、そうやすやすとは御せないところも、なぜか憎めない。なんとなく頑固じいさんを思わせるエレベータだが、このたび改装されることになったそうだ。あまり雰囲気が変わってしまわないといいのだが。

「オリガミ」

この店にはホテルコーヒーショップの定番メニューの他に、各国の代表的な料理も各種用意されており、なにを食べたいか気分が定まらないまま出かけても、メニューを眺めている間にあれもこれも食べたくなってくるから不思議だ。入り口でのキビキビとした出迎えも、食欲のスイッチをオンにする手助けをしてくれているのかもしれない。この日もあまり食べたい気分でなkったのに、オニオングラタンスープとタイ料理のガイカパオを注文してしまった。濃厚な味わいがやみつきになりそうなオニオングラタンスープは、ホテルならではの正統派。ガイカパオは、タイで食べるよりもかどが取れてずっとまろやかだが、深みのある仕上がりになっており、上品なイメージだった。これだけのバラエティを誇りながら、ひとつひとつの料理が高い完成度を保っている店にはなかなか出会えない。

2001.07.20
バスローブ
セルリアンタワー東急ホテル Corner Room
楽-3

ベイシン右のチューブ内、下の電球が切れている。

到着からチェックインをして、バゲージが届けられるまで、サービスは概ね良好に感じ、オープン当時から比べるとかなりスムースになってきたように見受けられた。スマイルもあるし、ゲストの言葉に耳を傾けるだけの柔軟性が見られる優秀なスタッフにも出会えた。技術はまだまだ荒削りだが、若者には謙虚さのなかに意欲が感じられほほえましい。最近のスタイリッシュなホテルに見られがちな、自意識ばかりが大きくなってしまった割にはちっとも役に立たないホテルマンにだけはならないよう、気をつけて欲しいものだ。

今回は34階のコーナールームを利用した。清掃は行き届いていたが、一部の備品が補充されていなかったり、バスルームに電球切れがあるなど、インスペクターの目の付け所には問題がある。この日は天気が良く、ずいぶんと遠くまで見渡すことができた。特に明治神宮の緑や、新宿の高層ビル群がくっきりと映えて見える。バスルームの窓からは、夏の雲が浮かぶ広い空が望め気持ちがいい。窓が大きく取られているので室内はとても明るいが、家具の色合いが寒色系で渋いものばかりで、どうしても気が滅入ってしまう。

クローゼットには前回まではなかったバスローブがセットされていた。尋ねると、以前もリクエストがあれば届けていたそうだが、つい最近からはデラックスタイプの客室には標準で用意するようになったとのこと。まだ新しく、白さが際立ってやわらかいバスローブは、肌触りもよかった。氷をもらいたいと思いディレクトリーを読んでみたが、それらしい案内は記載されていなかった。ルームサービスに問い合わせてみたところ、そちらで無料にて用意してくれるとのことだった。

TV画面で見られるホテル案内は、よくあるビデオタイプではなく、インターネットのスタイルで、リモコンを使って目的の情報にアクセスする方法をとっている。しかし、操作性が極めて悪いだけでなく、情報量が非常に貧弱で見るに値しない。印刷物と違って容易に更新ができるはずだから、毎日更新して、その日のオススメ情報やレストランのメニューなど、有益でエキサイティングな情報を提供してもらいたい。

ソファセット バスルームバスローブ

タワーズレストラン「クーカーニョ」

土曜日であったが、当日の予約で窓際のいい席を用意してもらうことができた。入り口でゲストを出迎える女性は、緊張をしているせいか笑顔も見せず、ゲストと決して目を合わせようとはしなかった。帰る際も「ありがとうございました」とあさっての方向を向きながら言われた。彼女を入り口に立たせたのは不適切だったと思う。

店内はシックな内装ではあるが高級感はなく、大きく取られた窓からの景観が最も印象的。昼間のテーブルセッティングは、ランチョンマットにナプキンというシンプルなものだが、それはそれでスタイリッシュな感じがしてよい。食器もドイツ製のシンプルなものを採用し、カトラリーはユニークな意匠のものを使っている。それらに囲まれて、流行に敏感な友人の家に招かれたような気分になった。

ランチタイムのメニューは、アラカルトのほかに3種類のコースがある。3,500円、4,800円、8,000円とあって、8,000円のスペシャルコース以外はアラカルトから自由に選ぶプリフィクススタイル。3,500円の場合は魚か肉どちらか、4,800円なら魚と肉が両方選べて、その他にオードブル、スープ、デセール、コーヒーが付く。また、選択する料理によっては追加料金が必要になるものがある。

盛り付けはダイナミックで斬新だが、料理はオーセンティックな印象を残すものが多かった。しかし、狙いを印象付けるだけにとどまり、完成度に感嘆することはできなかった。オーセンティックならば、余韻を堪能できるだけの深みを感じさせてもらいたいものだが、スタイルだけで終わっている。オードブルに選択したキャビアと夏カブのブラマンジェはキャビアの塩気をもってしても薄味すぎ。コーンスープのカプチーノ仕立ては、コーヒーショップでも味わえるクラス。オマールのオレンジ風味は唯一「ル・ギンザ」的なイメージだったが、肝心なオレンジのフレッシュさが感じられなかった。デセールは小さなものが5種類、盆のようなプレートに盛られて運ばれてくる。見た目には楽しいが、締めくくりとしてはいまひとつ。「トゥーランドット遊仙境」のマネか、はたまた女性を意識しすぎか。

サービスは思いのほか快適だった。特に銀座から来た黒服連中の存在が安心させてくれた。よく気が付き、熱心だ。時折用事を頼もうにもホールに誰もいなくなり困ってしまうことがあったが、次に目が合った瞬間に状況を感じ取ってとっさに駆けつけてくるので不満には思わなかった。次の機会にはランチでなく、ディナーのアラカルトで実力を感じてみたい。まだまだよくなる店だと思う。

2001.08.18
プールサイド
キャピトル東急ホテル Standard Room
喜-3

明るいナイトランプ

4階のスタンダードルームに宿泊した。スタンダード、スーペリア、エグゼクティブと、3つのカテゴリーのフロアがあるが、それぞれ標準となる客室の広さや天井高は同じだ。最もモダンな内装のスーペリアより後から改装されたが、スーペリアほど全般に渡って内装が改められることはなかった。まだ十分利用できる部分はそのまま活かしながらも、全体的にはリフレッシュした印象を与えている。室内のレイアウトは以前と全く同じで、昔ながらのキャピトル東急らしさを残しているところに、むしろスーペリアよりも馴染み深いものを感じる。ベッドにはきっちり全体にカバーを掛けてある点も、個人的には好ましく思うところだ。使い込まれたデスクやテーブルにはぬくもりがあるし、下手な絵画が一切掛かっていないところは、クリエイティブな作業をする際にありがたい。古い部屋といえば薄暗いというイメージがあるが、この客室は明るめだ。デスクとナイトテーブルの両方に電話機があることも重要。ターンダウンはリクエスト制だが、応じている。

アメニティに関しては、スーペリアとの差がはっきりとしている。品数はぐっと少なくなり、バスジェルや化粧品類はない。バスローブ、大きめで重宝なショッピングバッグも用意がない。LANも整備されていなかったし、コンセントの数も少ないので、コンピュータを持ち込んでの滞在なら、スーペリアの方が機能的だ。ちょうど9階と10階が改装中で、3基のエレベータのうち1基も改装のためクローズされていた。ロビーフロアのエレベータホールに掲示されてあったマル適マークも取り外されていたのは、改装中だからだろうか。

今回はプールを利用してみた。プールへはバックヤードのようなところから、エレベータで向かう。シャワー付きのロッカールームが備わってるので、そこで着替えができる。プールサイドのサービスは素晴らしく、海外の高級ホテルのように、デッキチェアにタオルをスッと敷いてくれたりする。また、「オリガミ」と同じメニューが用意されており、注文をすると「オリガミ」から直接運ばれてくる。

落ち着いた雰囲気を醸し出す和のテイスト デスク前の鏡とランプが新調された

2001.09.12
メモ用紙
セルリアンタワー東急ホテル Standard Room
喜-2

コースターが敷かれるようになったグラス

最近、到着時の案内や手続きがとてもスムーズになってきた。ドアマンからポーターへの受け継ぎ、カウンターでのチェックイン、客室への案内、どれをとってもテンポよく流れるように進んでゆき、気持ちがよい。客室にはリクエストしたバスローブがすでに用意されており、高層階からの眺めはいつもながら素晴らしい。このホテルはオトナの落ち着きをウリにしている部分もあるようだが、むしろ若い力をひしひしと感じる。あれほどメチャクチャだったオープン当時と比較すると、よく短時間でここまでサービス体制を築き上げたものだと感心せずにはられない。今後がますます楽しみだ。

客室には、スタンダードルームでも、ライティングデスクとベッドサイド両方に発信可能な電話機が備わっている。その他にファクシミリやデータ通信に利用できるモジュラージャックが備わっているので、なにかと便利なのだが、メモ用紙はベッドサイドにしか用意がなく、デスクで電話を受ける際にメモが取れずに困ることがしばしばあった。発信する時にはまったく問題のないことだが、電話はいつ鳴るとも限らない。海外のホテルの場合、トイレの電話機にさえその用意があり、ペンの向きひとつにも高い美意識を漂わせていることも珍しくない。そこまで多くは求めないが、室内の電話機のそばにはメモ用紙と筆記具の用意を欠かさないでほしい。

また、以前は天を向いてセットされていたベイシンのグラスは、マットを敷き伏せてセットされるように改められ、より衛生的な印象が得られるようになった。客室の清掃状況も良好で、廊下をバタバタと騒がしく動き回る係の姿はなく、いつも静かなのがうれしい。

2001.09.12
初めてのことば
セルリアンタワー東急ホテル Corner Room
喜-3

ベイシン脇のベース

オープン以来、まだ数えるほどとはいえ繰り返しこのホテルを利用してきたが、この日初めて、チェックインの際にフロントで「いつもご利用いただきましてありがとうございます」と声を掛けられた。外資系のホテルならば、マニュアルに沿って、たとえ2度目の宿泊でもそのように声を掛けられる。それは規定どおりの仕事をしてるなとしか感じさせないような、うわべだけの言葉として聞かれることが多い。しかし、このホテルで掛けられた言葉には気持ちが込められていたように思う。

案内されたコーナールームは、いつも利用しているブルーを基調としたタイプとは異なり、ベージュ系でコーディネートされていた。どちらかというと、寒々しさのあるこのホテルでは、こうした暖色系のコーディネートの方が合っているように感じた。清掃状況も素晴らしく、快適に過ごすことができた。

毎回訪れるたびに新しい工夫があるが、今回はバスルームにちょっとした植物が飾られるようになっていた。開業当時の殺風景で、しかも心無いホテルとはうって変わり、だいぶ充実してきたことが実感できる。真新しいが冷たい印象だった家具も、人が使うことによって、ぬくもりを携えるようになってきている。

グレーやブラウンの色使い クッションもベージュ

「金田中 草」

朝食時とはいえ、気が利かない若い従業員に任せきりで、マネージャーの姿が見られないのはけしからんことだ。入り口にディスプレイされた「草」は素朴を通り越し、みすぼらしさしか見て取れない。草にも命はあるものだ。生命力を失ったものを飾りつづけるのはよした方がいい。

まだ人のいないオープンキッチンのカウンターには、洗剤か消毒液のようなものが入ったスプレーが無造作に出しっぱなしになっており、パントリーへと続くのれんの向こうには、食材が入っていたと見られるダンボールが積み上げられているのが丸見えだ。シンプルを極めるのなら、目に入るすべてのものを、よく吟味してほしい。

料理は悪くなかった。6種のおかずが少しずつ小皿に盛られているのは、いかにも女性好み。ごはんはふっくらと炊き上がっている。汁は塩気の少ない分、だしがよくないのが気になった。また、BGMの選曲も、どうしたことかと耳を疑うものだった。近くの席のゲストは、いたたまれず、どうにかならないかと苦情を言っていた。

イタリア料理「Oli」

昼のパスタランチは1,500円。オードブル代わりにもなる大皿のサラダと、パスタ、それにデザートと美味しいコーヒーが付いてこの値段は、かなりのお値打ち感がある。サービスはスピーディで、親しみのある若いスタッフが、快活に動き回っている。彼らのネームプレートには、ファーストネームがアルファベットで綴られており、ユニークだ。店のインテリアはスターバックス風で、高級感というよりも気軽に利用できる雰囲気を大切にしているようだ。ロケーションも、ホテル内ではなく、外のデッキに面しているのも街場の店のようで面白い。

夜は昼に比べて割高感がある。コースは40階のダイニングと大差ない料金なので、どうしても40階に気持ちが傾きがちだが、フランクなムードを大切にしたいデートなどには、むしろこちらの方が向いているかもしれない。

2001.09.23
ラジカセ
キャピトル東急ホテル Executive Room
楽-3

貸し出してもらったラジカセ

ホテルに到着したのは21時頃だった。ドアマンに迎えられたが、それに引き継ぐベルマンは、あいにく全員出払っているところだった。ロビーは、まだまだ活気に溢れ、来日中のマゼール率いるオーケストラのメンバーたちがソファで楽しげに歓談しながらくつろいでいる。この雰囲気がホテル全体を磨いていくのだ。チェックインカウンターも混み合っていた。常連と見られるゲストたちが、フロント係と親しく言葉を交わしながら手続きをしている様子が印象的だった。荷物より先にエレベータに乗り込み客室へと向かったが、今なお3基のうち1基が改装中のため、エレベータ内はラッシュの電車のような混雑だった。

客室は9階のエグゼクティブルーム。廊下や客室扉が改装されていた。室内は、絨毯と壁紙を新しくした他は以前のままに保たれている。長くこのホテルを愛用しているゲストにとっては、新しい雰囲気よりも、使い慣れた状態の方が大切なのだろう。冷蔵庫が無音型になったのはよいが、スタンドが電球型蛍光灯になったのが残念。

荷物を運んできたベルマンに、ラジカセを貸してもらえないかと頼んだ。ところが、騒音の問題などもあり、このホテルではそのサービスを行なっていないと丁重に断られた。どうしても繰り返し聞いて、頭に入れてしまわなければならない曲があったので、断られた時は困ったなと思ったが、ないものは仕方がない。諦めて他の仕事に取り掛かろうかと思ったところに、部屋のチャイムが鳴った。ドアを開けると、先ほどのベルマンがラジカセを持って立っていた。自分が未熟で知識が足りずに申し訳なかったと詫びる姿に誠実さを感じた。そして、そのラジカセにはアシスタントマネージャーの私物であると書かれていた。そうまでして、用意してくれたことに感謝せずにはいられない。

昔ながらの雰囲気が漂う ベッドサイドのコントローラはみな旧式

背もたれの高い肘掛け椅子が心地よい デスクも昔ながらだ

大理石でできた棚には花が飾られている 窓からの眺め

「オリガミ」

ウィークリーコースメニューの代わりに、スプレンディドコースメニューというのがスタートした。プリフィクススタイルで、基本が3300円となっており、選択する料理によっては1品100円から200円が加算される仕組みだ。その内容はなかなか魅力的なラインナップで、バラエティ豊富なコーヒーショップならではのコースが仕立てられる。今回は、春巻とゴマをまとったエビフライ、オニオングラタンスープ、和風ピラフ、マロンパフェ、コーヒーという組み合わせでオーダーしてみた。「オリガミ」のオニオングラタンスープは大好きな味だし、メインディッシュにピラフを持ってこれるなんて面白くて、なんだか嬉しくなってしまう。パフェも大きくてボリュームたっぷりだ。でも、栗とブルーベリーソースはイマイチ合わないような気がするけど。それに、サービスが心もち適当になってきたような印象があった。

2001..09.29
玉手箱
コーヒーショップ「かるめら」セルリアンタワー東急ホテル

哀-3

この日は、演奏の本番の後にリハーサルが重なっており、夜遅くなるまでまともな食事を口にする時間が持てなかった。この店に入ったのは21時過ぎ。疲れきってはいるが、まだ演奏の余韻が体に残っており、鋭い感覚のスイッチが入ったままになっていた。メニューをゆっくりと眺める気にはならず、オススメの品として枠で囲まれていた「玉手箱」という品と、おかわりが自由になったアイスコーヒーを注文した。

まず一口大の器に入った茶碗蒸の上にコンソメを浮かべたスープ料理が出て、それに続いて冷温2段の重が運ばれてきた。重の中には、和食堂の昼弁当のように、いろいろな食材を使った料理が、一口ずつ並べられている。松茸ご飯や、タラバガニなど、ちょっと贅沢な素材を使った料理が華を添えている。大変手が込んでいるところに価値があるのかもしれないが、奥様がたが好みそうな内容だった。デザートは洋ナシのグラタンだったが、えぐい味のアルコール分が残って口当たりが悪い上に、人肌程度の中途半端な温度で提供され、かつて口にしたあらゆる洋ナシグラタンのうち最悪の味だった。

2001.10.22
おひさしぶり
大阪東急ホテル Superior Single Room
楽-1

ミニバーやクロゼットも同じく木目

今回で3度目の宿泊となった大阪東急ホテルだが、かつての2回はあまりいい思い出はない。特に前回94年に宿泊した時は散々だった。高い料金を払って不愉快な思いをしたことは、今でもはっきりと覚えている。でも、覚えているが怒りはなくなった。あの日、大雪のため混乱するフロントで、予約上の手違いになんとか対応しようと努力をしてくれていた女性スタッフは、自分の配慮に許可をもらうため、脇から首を突っ込んできた上司に事の次第を説明していた。すると、その上司はゲストを目の前にして「そんなことをする必要はない、だめだだめだ」と語気を荒げたのだった。その表情は今も忘れられない。

当時はもう二度と利用しまいと思ったが、この年齢になると、そんなこだわりはどこかへ行ってしまう。今年は大阪に出向く機会が非常に多いので、毎回違うホテルを利用し、なろべく幅広い体験をしたいと思っている。その好奇心が、かつての恨みよりも勝っていた。しかし、もうラックレートで宿泊するなんてバカな選択はしたくない。Webをしっかりとチェックして、なるだけリーズナブルなプランを探して予約を入れた。

ホテルに到着すると、かつてよりも雰囲気がだいぶ明るくなったように感じた。改装の結果ということもあろうが、このホテルでは今までに感じたことのない雰囲気だった。フロントの対応もよく、すっかりと印象が変わった。客室は10階のシングルルームがアサインされた。低層階とは廊下などのインテリアに差があり、高層階の方が少し立派にできている。特にエレベータホールの差が顕著だが、室内の差は確認できなかった。

今回利用した客室は、扉の内側に掲示された避難経路図によるとコンパクトなタイプのようだ。室内はグリーンの色調で、木目との相性も悪くない。ベッドはセミダブルサイズで羽毛布団。ベッドの両側が空いてるので、壁に沿って配置されたベッドに比べてゆったりと感じられる。デスク前の壁には、鏡ではなく額が飾られているので、その代わりに鏡が卓上にセットされてある。バスルームはシンプルなユニットで、かなりコンパクトだが清潔だった。アメニティはポーションのシャンプー・リンスなど、控えめな品揃えだが、タオルは一応3サイズが2枚ずつ揃っている。アメニティも2名分あるということは、ダブルルームとしても販売しているのかもしれない。窓からは、間近にそびえ立つ阪急インターナショナルや、ウエスティン、リッツカールトンなどが望め、その堂々たる風格にちょっと圧倒され気味の東急ホテルだった。

両側が空いたベッド デスクとソファ

2001.11.29
エアポートホテル
羽田東急ホテル Standard Room
楽-1

室内全景

翌朝のフライトに備えて、深夜1時にチェックインをした。ロビーに人の姿はまったくなく、照明も落とされてひっそりとしていた。フロントにも係はおらず、しばらくカウンターで待っていると、ロビーにいたベルマンが慣れない手つきでレジストレーションカードを差し出し、奥の事務所へ係を呼びに行った。ネットからの予約だったが当日予約だったので、連絡がうまく伝わっておらず、チェックインの手続きには時間が掛かった。

荷物が多かったが、深夜とはいえしっかりとベルマンが客室まで運んでくれた。エレベータは2基で、随分と使い込まれた感じ。以前のキャピトルのによく似ている。客室もまた年季が入っており、何もかも古々しかった。それに加え、少し暗めの照明がフシギと旅情のようなものを描き立てる。まるでホテル界の青函連絡船。

天井高は240センチと低く、客室面積も30平米に満たないコンパクトなものだが、手狭というよりはよくまとまったという印象だった。デスクにはポットが載っていて、左側にはテレビがあり、なにかを広げて作業をするには狭く、スタンドがないので暗い。デスクに電話機やモジュラージャックもない。その右脇にはバゲージラックがあるが、スーツケースを載せることはできないサイズで、エアポートホテルらしからぬ設備に思えた。ベッドサイズは110×195センチで、羽毛布団を使っており寝心地はよかった。ルームサービスは12時から23時までの営業で、食事のセットメニューが3,500円、コーヒー700円、ミックスサンド1,600円など、絞り込まれたメニューながら、きちんとした食事がとれる内容になっている。

バスルームはちょうど3平米で、タイル張り。ベイシン上の鏡は、両脇が動いて三面鏡としても使える。トイレは洗浄機能付きになっていた。タオルは3サイズが2枚ずつ。アメニティは標準的な品揃えながら、シャンプー・リンスはポーションだった。

翌朝は、早い時間にチェックアウトしたので、滞在時間はごく短かったものの、深い印象が残っている。最近では、新しいホテルはもちろん、既存のホテルも改装を進めて、ニュータイプの客室が多くなった。むしろこうしたオーソドックスなスタイルの客室は珍しくなってきており、今のうちに味わっておかなければ、いずれ姿を消してしまう運命にある。このなんともいえない落ち着きを、しっかりと記憶にとどめておきたいものだ。

この暗さがあったかい感じ コンパクトなデスク

タイル張りのバスルーム 鏡は三面鏡にもなる

Y.K.