2001.11.03
空調わざ
ホテルオークラ Superior Room
喜-4

窓から本館を望む

オークラに宿泊するのは久しぶりだった。ご無沙汰している間に別館の改装が終わったようだったので、予約時に別館の客室をリクエストした。本館の他に別館を持つホテルは、本館に比べて別館の方が客室の配置やカテゴリーが画一的なケースが多い。ここオークラの別館は、外観は本館に似せてあるが、客室の配置は横一列で、標準客室の大きさも広いものと狭いものの2種類に大別され、本館ほどのバラエティはない。また、順次改装を進め、階層によって随分と設備が異なる本館に比べ、別館は割と一気に改装したようで、内装の差異はあまりないと思われる。

今回利用したのは、広いタイプの標準客室だった。家具やファブリックは本館のものに準じており、別館ならではの特徴というものをとりわけ見つけることは難しい。しかし、本館で不便に感じていたことが、幾つか改善されており、より進化したという印象があった。例えば、ほとんどが連動してしまっていた照明スイッチが独立したり、暗かった入り口の姿見のサイドにも照明が付き便利になった。ミニバーはクロゼット内に収納されている他、宿泊した階はほとんどがコネクティングの客室であるなど、ユニークな点もあった。

バスルームは、あまり改装された形跡はない。ブルーのバスタブやベイシンというのがなんともキッチュで、オークラ名物のサッシ扉も健在。しかし、壁は大理石が張られておりゴージャスだし、バスタブが壁から少し離れているため、その間にちょうど腰掛けられて、意外と使いやすいバスルームだ。

客室の清掃状況は素晴らしく、極めて高い水準を保っている。スタンドの真鍮の脚にさえ、埃ひとつ見つけることはできなかった。ターンダウンも端正に行なわれ、客室内の空気をかき乱すことはない。室内が寒かったので、空調の温度設定を高くして風量を強にしていたのだが、温度が上がらず風邪をひきそうになった。これはいかんと思い、ヒーターを借りることにした。立派なヒーターを運んできてくれたベルマンが、空調のコツを教えてくれた。オークラは2管式の空調で、この時期はまだ冷房の設定になっていて、室温を高く設定しても風量を強くすると、どうしても温度が下がってしまうらしい。そんなときは、空調のスイッチを切って、室温設定だけを上げておくと、徐々に暖かくなるらしい。勉強になった。

室内全景 荷台の脇はコネクティングの扉

デスク付近 ターンダウンが済んだ状態

スタンドの脚はピッカピカ 石のベイシントップ

ブルーのバスタブとサッシ タオルやバスローブを収納できる棚

日本料理「山里」

朝8時に朝食をとりに出かけた。宿泊客のみならず、外から来る朝食の常連が多くいるらしい。それだけ素晴らしい朝食を提供しているということだ。注文してから、さほど待たされることなく運ばれてきた朝定食は、高級ホテルの和朝食はかくあるべきという完成度の高さだった。一品ごとに手が込められていておいしい。サービスは折り目正しく、よく気がつく。朝ならではの時間の流れ方に沿ったサービスだった。しかし、店を出る時に、なぜだかしらないが、アシスタントマネージャーが店先に立っていた。その感じの悪いこと。オークラの汚点だ。

2001.12.16
謝恩会
ホテルオークラ Standard Room
怒-3

室内全景

ドアマン、ベル、フロント、すべての場面でタイミングがよく、スムーズにことが運んだ。案内された客室は、リクエストした通り、本館のシャワーブースのあるタイプだった。シャワーブースのあるフロアの中では、最も後から改装したタイプで、改装をスタートした当初の華美な路線から比べると、落ち着いた雰囲気になっている。かつては、チェックインした時点でターンダウンが済んだ状態になっていることが多かったが、最近ではきちんとベッドカバーの掛けてセッティングしてあることの方が多い。

夕方、客室で作業をしていると、客室係のおばさんがターンダウンにやってきた。ひとりで丁寧にベッドカバーをはずし、タオルを交換したり、使用したティーカップを洗ったりと、落ち着いた仕事ぶりで好感が持てた。たまたまラッキーだったのか、タオルやバスローブは比較的新しいものが揃っていて、肌触りがひときわよかった。寝具にもちょっとした変化があった。羽毛布団を包み込むデュベは、白い生地ながら模様が入っていて、ターンダウン後も室内に華やかな雰囲気を与えている。

ロビーに出ると様々な人々が行き交っており、いつまで眺めていても飽きない。コートの中にタキシードを着て帽子をかぶった男性、見事な着物姿が印象的な年配の女性など、駅で見かけたら違和感さえ覚えるような格好をしていても、オークラなら浮き上がることもない。時おり、永田町の先生方が足早にロビーを横切る姿も見受けられる。

この時期は謝恩会などの宴席が多く、若い人たちがいつもよりも大勢いた。ちょうど宴会がはねたところなのか、大声でしゃべりながらエレベータになだれ込んできたのは、20代の女性たちだった。エレベータはたちまち朝のラッシュ状態になったが、「まだ乗れるよ!」と声を張り上げ友人を手招きしている。ブザーが鳴るたびに大騒ぎをし、乗るの乗らないのと中途半端なままエレベータの扉を開いたままにして、とても迷惑だった。ホテルのエレベータでは、他人と肩が触れ合わない程度に距離を保つよう心がけ、混雑している時には、次を待つくらいの感覚を持ってほしい。ホテルそのものは快適だったが、彼女たちに対しては怒。

シャワーブースとトイレ ベイシンとバスタブ

中国料理「桃花苑」

午後2時を過ぎ、ランチタイムの営業時間も残り少なくなったころ、予約をしないまま店に入った。混雑していたが、スムーズに席へと案内された。いつもながら店内はさまざまな客層で大変な賑わいを見せていた。案内された席は一番奥だけれど、脇にサービスステーションとかパントリーへの通路がある騒がしい席だった。しかも、どういうわけかテーブルが常に微振動しており、ちょっと不気味な感じのする席だった。卓上にはカーネーションが飾られてるのだが、完全に乾ききって枯れている。このような状態なら置かない方がましだと思う。

料理はいつもながら美味しかった。しかし、サービスに当たる女性は無表情で、卓上のカーネーション同様にドライだった。黒服は近くのお得意さまに終始ベッタリ付きっ切りで、ごはんのおかわりやお茶が欲しい時には、注意を惹くのに苦労した。お得意さまをとりわけ大切にするのは一向にかまわないのだが、周囲にも必要なサービスを滞らせるのは考えものだ。

2001.12.27
明るさ
ホテルオークラ神戸 Deluxe Room
喜-3

青空に映える白いタワー

クリスマスは過ぎでも、神戸の街にはクリスマス前のような、あたたかさを感じさせる空気がみなぎっていた。訪れるたびに新しい建物ができ、今も街は生まれ変わりつづけている。そんな街角をふらりと歩きながら、ホテルオークラへ向かった。天気にも恵まれ、ゆっくりと散策するには最高の一日だった。

少し遠回りをして、ホテルにチェックイン。いつもながら、スマートで感じのよい対応だ。用意されていた客室は、メリケンパークを見下ろす、眺めのいい高層階のデラックスルームだった。ホテルのサイト情報によると、このフロアはブロードバンドフロアとして、高速インターネット回線や、ビジネスユースに便利なアイテムを揃えたフロアとなっているようだが、今回はブロードバンドフロアとしての予約を入れていたわけではないので、特別の備品は用意されていなかった。

デラックスルームは約40平米。113×200センチのベッドが2台入り、4人が一度に掛けられるソファセットが置かれても、なお空間に余裕がある。そして、幅280センチ、高さ140センチのワイドな窓からは、実に神戸らしい景観が楽しめる。日中は行き交う船が、夜にはハーバーライトが間近に眺められ、すぐ脇にはポートタワーもあって、見飽きない眺望だ。

バスルームは5平米程の面積があり、大理石張りに仕上げてある。バスローブは常備していない。蛍光灯の照明で、清潔感に溢れている。シャワーブースはないが、バスタブは長さ170センチとゆったりとしたサイズなので、思い切り足を伸ばしてくつろげる。シャワーの勢いも抜群だ。ただ、バスタブに横たわるとベイシンの壁が視界を遮り、壁に囲まれるような感じになるので閉塞感を覚える。ベイシンの天板は写真だと大理石のように見えるが、石風の樹脂のような素材でできている。ターンダウンは行なっていないようだったが、タオルの交換や備品の追加には、スピーディーに対応してくれた。

ロビーは東京のオークラとよく似せて造っているが、神戸の方がずいぶんと明るい。特に夜になると違いがはっきりとする。東京はランタンからもれる明りをベースに、仄かで落ち着いたイメージで演出しているが、神戸は天井のダウンライトが明るく、あまり陰影のない照明で独特の緊張感がある。エレベータ内はハロゲン光を使いながらも平板な印象になっている。一時期、廊下の照明をぐっと落としてムードを作っていたが、不評だったのか、最近はまた明るくなってきた。日中、明るい客室から廊下に出ると、確かに暗いと感じたこともあったが、夜はその暗さがいい雰囲気を生み出していた。時間帯によって照明をガラリを変えてみるのも面白いかもしれない。いずれにしても、このホテルで一番明るいのは、サービスに当たる人々の笑顔であった。

ベッドはやや小さめ 白木の家具が明るい雰囲気

右にアタマがくるので、壁に隠れてしまうバスタブ ベイシンとトイレ

メリケンパークより眺める ロビー

客室からの眺め左方向 客室からの眺め正面

レストラン「カメリア」

なんと、一日に3回も利用してしまった。一度はランチ、次にティータイム、そしてディナー。立て続けに利用したので、給仕たちもすぐに覚えて、親しく話し掛けてくれた。特に、ランチで食べた三田地鶏の香草どんぶりが美味しかった。デザートには400円のソフトクリームを食べた。これもなかなか。オークラのレストランは四角い箱型の構造になっている店が多く、この店も長方形をしている。ひとつの面は、メリケンパークに向いた大きな窓になっており、景観とともにふんだんな自然光が得られる。朝食から深夜まで気軽に利用できるオールデイダイニングだ。サービスはオークラ風の伝統的なスタイルを保ちつつも、軽快で楽しい雰囲気を併せ持ったもの。

中国料理「桃花林」

東京の「桃花林」には窓がないが、神戸のには港や公園を望む大きな窓があり、明るい雰囲気だ。年末の平日だったが、昼の店内は賑わっていた。手頃なランチセットがいくつか用意されている中、3,000円のビジネスランチを注文した。味は、東京の完成度を受け継ぐもので、信頼できるレベルにある。昼でも専任のソムリエを置くなど、しっかりとしたサービス体制を整えている。神戸の中華街ともいうべき南京街は、横浜の中華街と違って高級店がない。ここ「桃花林」は、接待や家族での会食に、安心して使える数少ない中国料理店として、人気を博しているようだ。

Y.K.