2001.03.02
魅力の中身
「ジランドール」パークハイアット東京
怒-5

とにかく人を怒らせるのが得意な店だ。この日は人と大事な話があるので他の客と隣り合わせにならない席にして欲しいと、予約の時点でそう頼んでおいた。しかし案内されたのはこの店に6卓しかない、他の客と至近距離で隣り合わせになる席だった。席に着く前に予約時に頼んだ内容と違っていることをやんわりと案内係に告げると、あきれたような表情をしながら「本日はご覧の通り金曜日で混みあっておりますので!」と取り合う様子さえ見せない。予約を受ける際に行き違いがなかったかとか、他に方法はないかなど考えてもいないようだった。

すぐにマネージャーに代わってもらい、ことの次第を説明すると、たちまち「空いている席ならどこへでもどうぞ」とくる。しかしこれは逆効果だった。ぼくが怒っているのは席が気に入らないことではなく、案内係の態度だ。それなのに部下の態度を詫びることなく、「席が気に入らないなら、好きに選ばせてあげますよ。それで満足でしょ?」といわんばかりの対応では、かえって神経を逆撫でしてしまうことくらい想像に難くないはずだ。希望の席が用意できないとしても、初めからラグジュアリーホテルらしく丁重に接してくれればこちらも妥協できないことではない。それを説明したがどうやら理解してはもらえなかった。

結局、たやすくなのか、相当のムリをしてなのかは知らないが、隣に他人が来ないブースの席に案内された。その後のサービスはこのセクションを受け持つ若い給仕に任せきりで、マネージャーが二度と席には来なかった。その若い給仕は笑顔を保ちながら自分のペースを作って効率的にサービスに当たっていたが、セクションの中でタイミングがかみ合わないシーンが多く、どうしても滞りがちになっていた。それでも、よそのセクションの人たちは決してフォローをしようとはしない。

待てど暮らせど注文は取りに来ないし、空いた皿は下がらないしと、いいことなし。それでも担当給仕を責める気になれないのは、彼は彼なりにフル回転していたからだ。よそのテーブルで呼び止められていては、物理的にそれ以外のテーブルのサービスはできない。店全体がそういう状況なら仕方ないが、ちょっと目をやると従業員同士楽しそうに歓談している風景が見える。お誕生日のゲストがいれば、それ以外のサービスは一切中断してバースデーソングを歌いに行ってしまう。

さて、料理は料金を考えるとセットメニューの方がお値打ち感があるが、今回はアラカルトで注文した。アラカルトで注文すると、デザートとコーヒーだけで2,000円掛かってしまうし、「ニューヨークグリル」とあまり料金は変わらなくなる。料理はどれも、立体的でダイナミックな盛り付けが印象的だが、味にはそれほどのインパクトはなく、どちらかというと淡白だ。ピンとした真っ白なクロスやナプキン、しゃれたグラスなど、インテリアも含めて環境は魅力的だが、それがすべてだと言える店。今回は残念ながらそんな印象しか残らなかった。

2001.03.20
アクセス
ハイアット・リージェンシー・オーサカ Guest Room
喜-3

入り口にあるポプリ

大阪出張の際、目的地から離れたこのホテルに敢えて宿泊したのは、地下鉄が開通しUSJのオープンを間近に控えて、どのように変化したかをこの目で確かめたかったからだ。実に3年半ぶりの宿泊だったが、過去の印象は決してよくない。ハードが秀逸であるがゆえに、サービス面が揺らいでいたのが非常に残念でならなかった。

しかし、久しぶりのハイアット・リージェンシー・オーサカは、ロビーで感じる空気そのものがやわらかくなり、ここ数年でずいぶんと成熟してきたことがうかがい知れた。東京とシドニーでパークハイアットの成功を支えた極めて優秀な総支配人の就任と、USJに賭け更なる賑わいを求めた活気が、ホテル全体を熱くしたのだろう。この日は女子大生たちの卒業謝恩会が行なわれており、ロビーは一層華やいだ雰囲気に満ちていた。

スムースなチェックインが済み、22階の客室へと向かった。ひとり利用なので、もっともスタンダードなゲストルームを予約した。客室は30平米で、ブラックを基調とした渋いコーディネートは全室共通だ。エントランスを入ると、ガラステーブルにポプリが入った日本の器が飾られており、趣味のよさを感じさせる。家具類はすべてブラックで統一され、落ち着いたムードだ。このゲストルームにはソファの類がなく、窓際には高めのテーブルに椅子が対面して置かれ、ライティングデスクとダイニングテーブルを兼ねたしつらえになっている。ベッドはダブルサイズで、シーツの肌触りも快適。最近はやりになってきた真っ白いコットンのベッドカバーを剥き出しにセッティングする、白いデュベカバー採用ホテルの元祖だ。白いコットンが室内のインテリアにもよく調和している。

また、照明がとても効果的にデザインされている点も印象に残った。バスルームは真っ白なタイルと黒い石のベイシン天板でコーディネートされ、面積も十分だが、グランドルームとは違いシャワーブースが設置されておらず、便器は洗浄機能が備わっていなかった。アメニティはどうなることかと思うほどに淋しくなってしまった数年前の状況からすれば、それなりの水準に戻ったが、シンプルで必要なアイテムに絞り込まれている。

このホテルは立地的にはまだまだ厳しい状況にあるように思う。地下鉄が近くまできたとか、ニュートラムが延伸したといっても、駅までは相当に距離がある。そして、なんといっても初めて訪れるゲストにとっては、入り口がわかりにくい。関空には近いような印象があるが、バスに乗っても相当に時間を要する。もっとハイアットらしくインパクトの大きい交通アクセスがあると楽しさが増すだろうが、日本では難しいかもしれない。

ダブルサイズベッド 窓際には対面に椅子を配置したデスクがある。

テレビ台は大きなガラス製。ドレッサーも兼ねる。 ナイトテーブル

ブラックアンドホワイトのシックなバスルーム アメニティもシンプル

2001.06.28

日本料理「梢」パークハイアット東京
喜-4

予約を入れた際の対応がとても素晴らしく、出かける前から胸の躍る気分だった。電話口からでは実際の態度や表情を窺い知ることはできないのだが、話し方や声のトーンからもそれらが十分に伝わってくるようだった。希望の時間を告げると、窓側から3列目の小さなテーブルになると断りがあったが、それを承諾して予約は完了した。店に着いて用意された席は、それよりも条件の良い、窓から2列目の大きなテーブルだった。さらに席についたところで窓際の眺めの良いコーナー席が空き、そちらをすすめてくれたが、この日は特別な食事ではなかったので、今の席で十分だと思い辞退することにした。

昼間の「梢」には、手頃なセットメニューがたくさん用意されている。特に平日限定の「悦」は、食事を「梢」でとった後、デザートとコーヒーを「ピークラウンジ」に席を移して楽しめるという内容で、5,000円というお値打ち価格だ。この日の献立は穴子と茄子の味噌和えを先付けに、海老しんじょの吸い物、2段重と続き、かわりごはんと香の物が付く。器はどれも個性があり、妥協のないインテリアによくマッチしている。窓は「ジランドール」よりも腰が低く、見通しもよい。壁の木材も日焼けして年季が入った感じで、より味わいを深めたこの店の料理やサービスを象徴するかのようだ。タイミングがよく、若い女性のスタッフたちにも落ち着きが感じられ、安心して食事ができる。

「梢」で会計を済ませて「ピークラウンジ」へ向かうと、すでに席が確保されていた。数種のデザートからチョイスすることができ、どれも手抜きのないしっかりとした一皿だ。なかなか人が絶えない「ピークラウンジ」も平日の午後は比較的空いており、いつも以上に時間がゆっくりと流れ、思いがけずとても贅沢な午後を過ごすことになった。

2001.07.27
7周年記念
「ジランドール」パークハイアット東京
喜-3

公演がはね軽い食事をとろうと思って、近くのパークハイアット「ジランドール」に予約の電話を入れた。このホテルはよい時と悪い時の差が著しい。とんでもないような電話応対をすることがあるかと思えば、この日のように実に見事で好感の持てる対応をすることもある。爽やかな声で、わかりやすく、かつ正確な予約対応だった。スタートがよい場合は、不思議と不愉快なことに遭遇することも少ない。店先で予約があることを告げると、店の奥のほうにある席に案内された。壁際の小さな席だったが、静かに食事ができそうな環境だったので満足した。

途中、前回あまり感心しない対応をしたマネージャーとすれ違ったが、ゲストの顔を覚えるという能はないらしく、そ知らぬ顔をされた。そこで「またようこそお越しくださいました」というような表情でもたたえることができれば少しは見直すものを、だめだこりゃという思いを一層色濃くする結果となった。

席に着いて差し出されたメニューのうち、口頭でも重ねて薦められたのが「7周年記念スペシャルメニュー」だった。オードブル、魚、肉、デザート、コーヒーに、さらに一人につきハーフボトルのルイロデレールが付いて、5,800円という大変お値打ちなもの。あれこれ迷うこともなく、そのメニューに決めて注文を済ませた。席を担当した若いスタッフは大層な美形だったが、仕事振りはそこそこ。できのいいバイトくんという印象だった。皿を下げるタイミングなどはよく見ているが、動作に洗練を感じられない。何かを頼もうにも肝心な時はそばに誰も居ないというのも、あいかわらず。料理は値段を考えれば、非常に満足のいくものだった。料理やサービスはともかく、この雰囲気は捨てがたい。

2001.12.25
充実と値上げのバランス
パークハイアット東京 Park Suite
喜-4

高層ビル方面の眺め

このご時勢、どこのホテルも苦戦を強いられているというのに、なんとも元気なホテルだ。アメリカのテロ事件の影響を一時的は受けたようだが、それでも値上げをするなど、その勢いはとどまるところを知らない。しかし、それは奇跡ではない。施設もサービス内容も、何から何まで高いレベルにあり、価格なりの満足感を与えてくれるからだ。しかし、逆に考えたら、少しでも満足感が低下しようものなら、それは許しがたいことになる。この値段なのだから、素晴らしくて当然といえば当然なのだ。

とにかく個性のあるホテルだから、好き嫌いははっきりと出てくるだろう。個人的にはどちらかというと好みではない。特に、若いスタッフが多く、その一部が鼻に掛けたような尊大な態度をとるところが気に入らない。サービスに味が出るには、あと10年は待たなければならないだろう。しかし、それほど気が利かなくても、情報の蓄積やマニュアルの活用面では優れており、顧客満足をシステムで勝ち取ろうというガッツを感じる。時にそれがしたたかで心無いイメージとなって映ることもあるのだが。

値上げに関しても、単に価格を上げるというだけに留まることはなく、いつでもその分の充実を図っている。無料のミネラルォーター、ハーブティ、絵葉書、常備されているCD、シューキーパーなど、開業当時にはなかったアイテムも徐々に増えてきた。室内の照明は照度がコントロールできるようになった。また、何かをリクエストした時には、プラスアルファの気遣いを心がけてはいるようだ。その更なる洗練を期待したい。

今回はバンケットでのイベントを依頼したのだが、そのレベルの高さには驚かされた。サービス、料理ともに素晴らしかった。パークハイアットの実力はバンケットに最もあらわれていると実感した。

天井は最も高い部分で315センチ 照明はコントロール可能になった

鏡の一部が汚れたままになっていた 今でもスタイリッシュな印象のある室内

ベッドは快適 扉の裏は鏡張り

バスルームへの扉にも鏡が張ってある 客室エントランスからリビング方面

バスローブ ベイシン ドレッサー

Y.K.