2001.03.17
生命の樹
ソフィテル東京 Deluxe Room
喜-3

ロビー中央のソファから

一度目にした者は決して忘れないような個性の強い外観をもつこの高層ホテルは、あまり高い建物がない上野池之端では何にも勝り目立っている。細く聳える塔の部分は、ワンフロアに最大4室の客室しか設けず、ぎざぎざの外観は生命の樹をイメージしたという。もともと法華クラブ系のホテルCOSIMAとしてオープンしたが、その後をフランス系のアコーグループが引継ぎ、日本で初めてのソフィテルが誕生した。ソフィテルになるに際しては、既存の客室設備は概ねそのまま活用しているようだが、ロビーやレストランに関しては全面的に改装をし、その結果こじんまりとした本来の意を持つブティックホテルとなった。

小さなホテルらしく、エントランスホールもフロントデスクも小ぢんまりとしているが、センスよくまとまったインテリアがプライベート感覚を引き立てており、従業員たちにも好感が持てた。駐車場は立体式で収容台数が限られているようだが、利用客に対しては不便を掛けないよう、満車時にはキーを預かるなどの配慮を見せているし、その対応がすがすがしかった。大理石をふんだんに使ったロビーの中央にはソファや肘掛け椅子が数組置かれ、天井の高い空間でちょっと一休みしたり、待ち合わせなどに利用できる他、エントランス脇にはティーラウンジがあり、夕方からはバーになる。

客室へと向かうエレベータは2基と少ないが、客室数も少ないのであまり待つことはなかった。COSIMA時代からの既存客室とは別に、ソフィテルになってから増設された客室が元和食堂のあった3階にあるが、今回は既存の客室にアサインされた。エレベータを降りると確かに4室の客室しかなく、プライバシーがあるような感じもするが、この少なさがかえってお隣の客と出くわしたとき、マンションのお隣同士のような感覚になって、思わずこんにちはなどと挨拶をしてしまいたくなる。

室内はまだ新しい感じがしており、真っ白いベッドと木肌の色、ベージュ系のファブリックがよく調和してしる。同じツインの客室でも若干広さが異なるタイプがあり、こちらは狭い方のタイプ。窓からは不忍池が望め、低層階からでも開放感のある眺望が得られる。反対側は東京大学のキャンパスや古い家並み越しに都会的なビル夜景が見えるようだ。

窓はワイドで腰の高さは72センチ。カーテンはすべて片側に寄せられるデザインだ。大理石のテーブルと肘掛け椅子がひとつだけ置いてあるが、窓際はけっこう窮屈だった。そして、椅子の背に掛かっている額が客室の広さや壁の空間と比較すると極端に大きくて、バランスが悪いような気がする。ベッドは113×200センチとあまり大きくないが、寝心地は良い。ライティングデスクはベッドとクローゼットに挟まれており、正面が鏡張りで、白熱色の縦型チューブ蛍光灯が両側に付き、デスク自体はガラス製とモダンな印象。ベッドサイドのほか、こちらにも電話機があり便利だった。

クローゼットは引き戸になっており、中にはバスローブ、金庫、パイルスリッパなどが備わっている。ミニバーにはインスタントコーヒーや紅茶のティーバッグも備わり、ティーカップや3種類の洒落たグラスが、照明の当たるラックに収められている。ルームサービスは24時間営業しており、コーヒー800円、クラブハウスサンド1,300円など。

バスルームは全体で6平米弱と十分なスペースを持ち、一見とても秀逸に感じられた。ところが実際に利用してみると、見掛け倒しであった。まず、バスルーム扉と、バスタブとベイシンを仕切るガラスの扉がお互いにぶつかり合ってしまう。これは引き戸にでも改装した方がいい。カランのひねりが一般的なものと逆になっているのはしばらく使えば慣れるが、ベイシンに長年の汚れが付着しており清潔感に欠けていたこと。

そして、一見洗い場付きバスのような構造になっているが、シャワーヘッドホルダーはバスタブのところにしか備わっていないため、バスタブ脇のスペースでシャワーを浴びるには常にシャワーヘッドを自分で持っていなければならないこと。これでは特に洗髪は難しい。勢いのあるカランに対しシャワーの水圧が著しく低く、かなり強烈な節水コマを入れているような姑息さを感じた。このガラスの仕切り扉は、やけにバスタブから離れたシャワーカーテンだと思った方がよい。

仕切り扉の内側は壁が大理石、床はタイル張りとゴージャス。ベイシンとトイレの部分は壁がクロスで床がタイルだ。ベイシンの天板にも石を使い雰囲気はよい。アメニティは標準的な品揃えで、タオルは3サイズ2枚ずつと少な目だが、バスローブを含めとてもやわらかくて気持ちがよかった。バスルームでBGMを聞く設備があり、発信可能な電話機も備わっていた。入り口脇の大きな姿見も便利なだけでなく、とてもよいアクセントになっている。それでも、単なるユニットバスに比べれば格段に快適だし、料金を考えれば全体的な満足度は非常に高かった。

しばらくはホテルの存在を知ってもらうためか、「旅の窓口」を初めとしたオンライン予約システムで格安販売しているので、この機会にまずは利用してみては。

ロビーから見上げる大きな時計。2階エレベータホールから見ると裏側が見え、逆時計になっている。 こちらもロビー中央ソファから

シックな室内 ナイトテーブルには洒落た時計が

デスク脇に引き戸はクロゼット 石張りのバスルーム

「プロヴァンス」

ホテル内で朝食を提供しているレストランはこの「プロヴァンス」1軒。6:30から10:00までだが、そのうち卵料理が注文できるのは7:00から。メニューはコンチネンタルブッフェ1,800円とブレックファストブッフェ2.200円が中心となり、その他アラカルトがある。コンチネンタルブッフェといえども、ブッフェ台にあるものはすべて食べられ、簡単だが和食のアイテムや、フルーツ、サラダ、コールドミート、シリアル、ヨーグルトなどもある。但し、和食アイテムは決して期待しない方がよいだろう。そのブッフェにキッチンメイドの卵料理が加わるのがブレックファストブッフェだ。卵料理以外にも希望すればパンケーキやフレンチトーストもこしらえてくれる。でも、パンケーキはパッサパサで冷凍ものをチンしてきたとしか思えない味だった。

ジュースは3種類のチルドが用意されている。メニューには英語表記はチルドとあったものの、日本語表記にはフレッシュとなっていた。改めて欲しい。シリアルは6種と豊富。また、サラダのドレッシングはウォールナッツ風味で実に素晴らしい。サービスは自然体でくつろいだ雰囲気を醸し出している。アコーのホテルだけあって、フランス語を話すゲストが多かったが、従業員は英語で対応していたためにゲストはイライラしているようだった。また、中央の大きなテーブルでは、カトラリーを打楽器代わりにしてパーカッションアンサンブルを演奏している子供たちを連れたファミリーが幅を利かせており、朝とは思えない雰囲気になってしまった。しかし、窓の外には豊かな緑と池のほとりの風景があり、なんともすがすがしい。

2001.04.14
散策のススメ
ソフィテル東京 Deluxe Room
楽-3

正面エントランス

このホテルの周辺には下町風情というものがまだ残っており、散歩やジョギングなどにはとても恵まれた環境だ。目の前の不忍池から入る上野公園はもちろん、裏の東大方面もちょっと路地を入れば閑静な古い住宅街になり、形のよい樹木や数多くある寺院などちいさな発見がたくさんある。歩いていても雑踏と違ってさほど疲れないのがいい。でも、道が入り組んでいて、帰り道を見失いやすいから、地図が必要だ。周囲には大きな店舗もないし、これといったレストランもない。すぐ横に個人経営のコンビニエンスストアがあるくらいだ。

周辺を歩いてみると、おもしろい場所にホテルが建っているなとしみじみ思う。サバンナでブランドのブティックを見つけたような存在だが、利用してみると意外にも印象以上に交通の便がよいことがわかる。車で大手町辺りに出るにしてもそれほど距離はないし、5分強歩くものの千代田線の湯島駅が近いので、都心の要所には30分見ればアクセスできる。

今回利用した客室は、前回と同じカテゴリーのデラックスルームだが、4段あるギザギザの一番出っ張った部分で、前回よりも少し奥行きが長くなった分広かった。肘掛け椅子がふたつになり、テレビがアーモアに収まって、絵の趣味が少し違っていること以外はまったく同等の設備。広いに越したことはないが、こちらのタイプにこだわる必要はなさそうだ。

そして、眺めは前回と逆の裏側。東大病院の古い建物や、豊かな緑が手前に広がり、遠くには高層ビルが見えるというなかなかの構図だ。清掃の仕上がりは良好だが、気になる部分も前回と同様。やはり一番のネックはちょろちょろシャワーだった。空調はホテルにしては珍しく、オフィスでよく見かけるタイプのもので、室温や風量の設定が細かくできるのはいいとしても、スイッチを入れると切るとでは室内の静けさがまったく違うほど賑やかな音を立てる。作動音の大きさは客室によって違うのか、前回の宿泊時の方が顕著だった。

サービスは良好で、夜遅くなっても愛想のいい駐車場係など、ちいさなホテルならではの親しみを大切にしている様子だが、このホテルを広く印象づけるには、今一歩の洗練が必要だと感じた。

ベッドと窓の間のスペースが広く取られている テレビはアーモアに納まっている

クロゼットにはバスローブがお行儀よく並んでいる シンプルなアメニティ

Y.K.