2000.02.16
ヨコハマ黄昏ホテルの小部屋
ザ・ホテルヨコハマ Deluxe Twin
楽-3

ベイシン

みなとみらいに外資ホテルが上陸する以前、ニューグランドにも新館がない頃、「ザヨコ」の愛称で親しまれているザ・ホテルヨコハマは、この異国情緒豊かな港町を代表する最新の都市型ホテルとして、多くの人の憧れの存在だった。山下公園越しに港を一望できるロマンティックなロケーションは、今も昔も変わらず、時には世界航路の豪華客船を目の前に眺めるられることもある。

しかしホテルそのものの魅力は、最新設備のある広い客室とバラエティゆたかなレストランを擁する大型ホテルの陰に隠れてしまった感が否めない。標準の客室面積は26平米程度と狭く、斬新なレストランもないが、それがかえってノスタルジックな雰囲気を醸し出しているようだ。

山下公園に面した正面玄関は徒歩とタクシー専用で、車で到着する場合は駐車場がある裏手の入口に回ることになる。タワー式の駐車場入口にも車寄せとホテルエントランスがあるものの、どうしても裏口から入るような感じがする。パブリックスペースは小ぢんまりとしており、フロントも小さ目だ。チェックインをしながら、地方の小さなホテルにありがちな、あたたかさがしみじみと伝わってくるものの、都市型ホテルとしての機能はさして期待できないタイプのサービスタッチだと感じた。

とりわけゲストの少ない日だったのかもしれないが、全体的にひっそりとしていた。異人さんがひとりも見当たらないところを見ると、このホテルのゲストはほとんどが日本人であるようだ。ちょっとお茶を飲もうと思っても、ロビーフロアにはラウンジもなく、13階のスカイラウンジか2階のリストランテを利用しなくてはならない。ショップがあるわけでもないので、通り掛かりにふらっと立ち寄るような雰囲気はない。冷やかしのお客が少ないのは結構だが、特にレジデンシャルなテイストを追求しているわけでもないだろうから、もう少し街のプラザ的な要素があってもいいように感じた。

客室まではベルガールが案内をしてくれ、非常口や客室設備の説明を一通り行った。今回は5階にあるデラックスツインを利用したが、夏は鬱蒼と茂って視界を遮るという銀杏が、今は見事に禿げ上がっているので、山下公園と港がとても近い距離に望め、とても横浜らしい景観だった。窓はさすがに小さ目だが、窓際のソファに腰掛けて外を眺めると、なにか乗り物に乗っているような気分になる。

インテリアはアーリーアメリカン調コーディネートされており、クローゼットを含め、家具類はすべてステンシル加工を施した置き家具だ。ベッドは幅がひろくヘッドボードも立派。電話機はベッドサイドのみでライティングデスクにはない。照明はやや暗い感じだが、この部屋の雰囲気にはよくマッチしていると思う。

バスルームは標準的なユニットタイプだが、ベイシン下の引出しの他にも鏡や便座を木製にするなど、ユニークな工夫も見受けられる。ザ・ヨコといえば、市松模様のタイルというイメージがあるが、この客室は白とベージュのオーソドックスなデザインだった。シャワーの水圧は十分で、サーモスタット式の湯温調節が付いており便利。アメニティはさして面白味のない取り合わせだった。せめて、各アイテムにホテルのロゴを入れる程度の努力は欲しいところ。タオルは3サイズ揃い、白と青の組み合わせだ。

山下公園といえば、深夜の暴走族が騒音を立てて安眠を妨げるが、この日は階下で改装工事を行っており、その騒音に悩まされた。レストランの床の張り替え工事とやらで、どうしても深夜にしか実施する機会がないとのこと。それは良く理解できるが、電気ドリルなどを用いての派手な作業があるのなら、あらかじめ客室のアサインをもっと考えるべきだったと思う。

しかし、感心したのは翌日のチェックアウト時だった。深夜に軽くクレームを入れておいたものが、きちんと引き継がれており、迷惑を掛けたことをマネージャーが丁重に詫び、ホテルを後にするまで見送ってくれた。当たり前のことかもしれないが、これしきのことが出来もせず、一流を気取るホテルが多いことを考えると、賞賛に値するのではないだろうか。

アーリーアメリカン調 レトロなムードが漂う

便座は木製 カゴ入りアメニティ

スカイラウンジ「鴎」

スカイラウンジ「鴎」のランチタイムには、サンドイッチやカレーなどのオーソドックスなメニューの他、2種類のお弁当が用意されている。1,800円のお弁当「英吉利御膳」はローストビーフのどんぶりと、サラダやフルーツ、ケーキののったお重が添えられ、あとでコーヒーも付いてくる。それほど驚くようなおいしさではないが、大きな窓からの港の風景が素晴らしい。サービスには明るさが乏しいが、一生懸命さは伝わってくる。仕事ではなく、プライベートで利用したい店だ。その他、1,500円でケーキバイキングの用意もあるが、品数も少なく、料金には値しないように見受けられた。

2000.10.31
6時間の滞在
ザ・ホテルヨコハマ Standard Room Bay View
喜-2

ヨコハマらしいティーセット

予約を入れたのが午前1時過を回ってからで、チェックインをしたのは午前2時10分だった。その時間にもフロントには2名のスタッフとひとりのベルマンが待機しており、ひっそりと静まり返ったロビーにふさわしい控えめなトーンでのサービスに出迎えられた。手続きが済むと、客室までの案内を申し出られたが、荷物も少なかったので辞退して自分で6階にある海に面したスタンダードルームへと向かった。

翌朝は8時にはチェックアウトする予定だったので、滞在時間は6時間足らず。窓からの景色をゆっくり楽しむゆとりの時間はなかったが、カーテンを開ければ港が見えるとわかっているだけでも、気持ちの上で開放感が味わえるから不思議だ。テレビも点けず、すぐにバスタブに湯を張りながらグレーシルバーのベッドカバーをはずし休む準備をする。ファニチャーはやはりアーリーアメリカン調のもので、ずっしりとした質感を持つ木製の家具は、どれも使い込むほどに味が増すだろう。

特にライティングデスクは思わず恋文でもしたためたくなるようなしつらえで、デラックスルームに置かれていたものよりもユニークだと感じた。窓際に置かれたソファはストライプ柄で、ノスタルジックなランプシェードと共に室内のアクセントとなっている。天井高は240センチで、窓も小さいため開放感はあまりない。ベッドはやわらかめだが幅が136センチもあり、スタンダードルームにしてはかなりワイドだ。ミニバーはビールが800円と少々高めだと思ったが、用意されたお茶のセットはとてもヨコハマっぽくて印象的だった。ルームサービスは7時から10時の朝食と、16時から22時の夕食のみの営業で、コーヒーは600円と標準的ながら、氷だけでも600円という設定。

バスルームは4平米弱のシンプルなタイル張りのユニットバスだが、ベイシンの上には5つの電球が並び、かなり明るい上に調光が可能だ。BGMを聞く設備もあり、トイレはウォシュレットになった。シャワーヘッドもシンプルだが、シャワーのしぶきが肌に心地よい。前回も感じたが湯の勢いは申し分ないもの。タオルがややくたびれていたのが気になったほかは、満足のゆく内容だった。

どこか郷愁を誘う客室 家具はしっかりしている

Y.K.