1999.05.30
プラマイゼロ
パークハイアット東京 Park Suite
喜-4

リビングルーム

今回の滞在でパークハイアットに対するマイナスのイメージがすっかり払拭された。パークスイートに6連泊したが、滞在中、大きな不足はなかったし、小さな問題が生じたときも直ちに誠実な対応を取ってくれた。例えば到着時、このホテルでははじめてドアマンに車の扉を開けてもらった。その対応は決して好感が持てるほどのものではなかったが、とにかく前進が見られ評価できる。

チェックインもスムースで、部屋に入るとほぼ同時に荷物が届けられた。案内をしてくれたコンセルジュの「今、他になにかご用意するものなどございませんか?」という問いかけも、自然で心地よく響く。念願の「ピークラウンジ」の窓際席にも座れた。(しかし、フレッシュオレンジジュースは確かに搾りたてだが、青汁か?と思うほど苦くて飲めたものではなかった。)

このようにことがとんとん拍子に進むと後が恐いと思っていたのだが、今回はついていたようで本当に不愉快なことには出くわさなかった。しかし残念なことはいくつかあった。まず、客室係についてだが、毎日エキストラのタオルをお願いしているのに、それを毎日言わないとやってくれない。また、石鹸やシャンプーはステイ清掃の時でさえも、よほど小さくなったり空になったりしていない限り補充してくれないし、ターンダウン時はなくなっていても補充してくれない。

ぼくは最近ロンゲなので、30ミリリットルのボトルだと、午後にシャワーを一回浴びればほとんどなくなってしまうのに。また、在室中にターンダウンに来た時は、30分も掛けて何をしていったのかと思えば、特別なことは何もなされていなかった。ターンダウンにこれほど時間が掛かるとは思わなかった。

ある日、急に体調が悪くなって日中ベッドで横になり、汗をかいてシーツが湿っぽくなってしまったので、ターンダウン時にシーツを替えてくれるようお願いしたがしてくれなかった。なにやら、自分たちの方針をガンと押し付けられているように感じないでもなかった。また、バスアメニティとしてバスソルトが置かれるようになったが、中味は「バスクリン」だ。

コンセルジュのサービスも頼りないことがあった。銀座「レカン」の予約を頼むと、「レカン」を知らないという。「日本を代表するフレンチレストランのひとつですから、覚えておいた方がいいですよ」というと、「何のお店ですか?」と聞き返された。人の話しはきちんと聞いて欲しい。

一方よいと感じた点は、毎朝のモーニングコーヒーが必ず指定の時間通りに運ばれてきて、朝らしくにこやかにサービスしてくれることや、室内の氷バスケットにはいつでも氷が用意されていることなど。滞在中、2日目までは、エントランスやクローク前を通る度に「いらっしゃいませ」「ありがとうございました」と声を掛けられていたが、3日目からは「いってらっしゃいませ」「お帰りなさいませ」に変わった。

このホテルは確かにモダンで快適だ。ハイセンスでカッコいい。ところが知的な感じがかけている。その欠けた知性はサービスで表現する以外にないのだから奮起して欲しい。今までさんざん不満を感じさせてくれたが、今回でやっとプラスマイナスゼロになった。

ベイシン 長〜いバスタブ

グレックマルフの中近東と西欧料理のマリアージュ「ニューヨークグリル」

先月大きな不満を残したまま席を立った「ニューヨークグリル」だが、その際マネージャーに伝えた不満は大方解決されており、この店に対する信頼がかえって増した。予約の電話を入れると、「ニューヨークグリル○○でございます」と心地よいトーンで応対する。席の希望などについても細かく尋ねてくれ、好感度は高かった。

予約は午後9時30分からだったが、9時ごろには「お席が用意できましたがいかがいたしましょうか?」と電話をくれた。52階でエレベータを降りるとマネージャーが出迎えており、窓際の禁煙席に案内してくれた。その後は、いつも通り若い給仕のサービスだったが、いつもは感じられなかった謙虚さのある爽やかな給仕で、終始快適なサービスを提供してくれた。

この日は5月20日(木)〜30日(日)の期間「ニューヨークグリル5月のテイストコレクション・グレックマルフの中近東と西欧料理のマリアージュ 」と題したイベントの最終日だった。通常のメニューと共にマルフ氏のスペシャリティが太字で書かれており、見ているだけで食欲のわく料理が並ぶ。マルフ氏は、予約を取ることすら困難といわれるメルボルンの有名レストラン「オコーネル」のシェフで、レバノン出身。中近東で二千年に渡り継承された伝統料理と西欧料理を絶妙にマリアージュさせた新しいキュイジーヌの旗手として脚光を浴びているそうだ。

今回味わった料理は、鳩のケイジャングリルのミントキャベツサラダ添えとウナギのイスラエル風煮込み。丸ごと焼き上げた鳩が皿の上にダイナミックに乗せられ、スパイスと爽やかなサラダが添えられているケイジャングリルは、食欲をそそるスパイシーな香りと、脂の少ない鳩の肉がよくマッチしていた。ウナギは、ラタトゥイユ状の野菜と共に煮込んだウナギが、クスクスの周囲にカレーのようにかけられている料理だった。

デザートは、スイカのローズウォーター風味で、すっきりとしたスイカからほのかなバラの香りが立ち昇り各種のベーリーとアイスクリームが添えられ、新鮮な一皿だった。いつもは量の多さに圧倒されるニューヨークグリルだが、この日はきれいに全部食べられた。ハートのない乱雑なピアノ演奏だけが、楽しい食事をを妨げていた。

ランチビュッフェ「ニューヨークグリル」

マルフ氏のイベントが終わり、いつものメニューに戻った「ニューヨークグリル」。ランチタイムは、初回の印象がよくなかったために今まで避けていたので、昼に訪れるのはこれが2度目だった。ところが、印象が変わった。かつてはセットメニューのみでアラカルトはなかったが、今は夜と同じアラカルトメニューも用意している。セットメニューは4,400円で、メインディッシュを数種の中から選んだら、オードブルとデザートはブッフェスタイルで好きなだけ楽しめる。

ブッフェカウンターは「ニューヨークバー」のカウンター席を利用しており、多国籍な料理がところ狭しと並べられ、楽しい雰囲気だ。味もなかなかよい。一皿を食べ終わると、「もう少し召し上がりますか?」と尋ねてくれ、新しいシルバーをセットしてくれる。ブッフェカウンターに行っている間に、ナプキンをキレイにたたんでおいてくれるのもうれしい。多彩なオードブルですでにおなかいっぱいになってしまうが、メインディッシュもかなりの量だ。今回はポークフィレを選んだが、美味しく食べられた。デザートはバーに席を移して楽しむこともできる。客層はほとんどが主婦で、夜とは随分違った雰囲気だった。活気があって、オススメのランチだ。

誉めた後になんだが、受付の女性スタッフにやはりダメな人がいる。エレベータから降りて予約の名前を告げるなり、「お待ちください」と来る。いったいこの人は一日に何度お客さんに命令しているのだろう。まず「お待ちしておりました」とか「ご来店ありがとうございます」と、どうして言えないのだろう。ダイニング内でも、靴をカツカツいわせながらだらしなく歩いており、とてもみっともない。

「ジランドール」

午後8時に内線で今から食事に行きたいと告げたところ、満席のため30分ほど時間を要するとの返答だった。付け加えて、早く席が用意できた場合は部屋に電話をすると申し出てくれたので、客室で待つことにした。きっかり30分後に電話が鳴り、席の用意ができたとのこと。店に着くと、今し方窓際の席が空いたので、少し待ってもらえればすぐに用意するというので、そのようにしてもらった。こうした流れは、ゲストの要望に可能な限り応えようという気持ちのあらわれとして受け取ることができ、楽しい雰囲気で食事をスタートすることができた。

ぼくらの席を担当した若い男性給仕のサービスも、非常ににこやかで快適だったが、その彼が別のテーブルでサービスに当たっている最中に、ぼくらのテーブルにもサービス人が必要になった時、誰かを呼ぼうとしてもだれも気付いてくれず、結局担当の彼が手すきになるのを待たなければならなかった。担当がハッキリしているのは結構だが、持ち場以外は我関せずというのも困りものだ。

この日は、店内中央の席で大人数のグループが食事をしており、未だかつてない賑やかなしゃべり声が響き渡って、若者が集まる居酒屋のような雰囲気だったが、そのグループがお開きになるといつもの落ち着いたムードが戻ってきた。料理はアラカルトでオードブルとメインディッシュの2品構成で注文した。サンドイッチやパスタを除けば、ビストロ風の品揃えだが、味は期待しない方がいい。真っ白なクロスやナプキンは気持ちがいいものだが、料理の品質と価格とのバランスは必ずしも均整が取れているとはいいがたい。

ウイークエンドブランチ「ニューヨークグリル」

平日に4,400円のランチが、週末にはグラスのスパークリングワインが付いて5,800円となる。料理内容は変わらない。客層は、平日ではほとんどが主婦であるのに対し、週末はカップルを含め若い人々の利用が目立っていた。どちらかといえば、週末の方がここ「ニューヨークグリル」らしい雰囲気が出ていると思う。この日はメインディッシュに電話線のようにねじれたパスタの上にスモークサーモンが乗った料理を選んだが、他のメインディッシュと比較すると、いかにもライトミールという感じで、同一の料金としてはさみしい気がした。また、デザートには先日はなかったアイスクリームがあった。

サービス的にはいつも通りだが、なかなか伝票を持ってきてくれなかった。開業当時の信じられないような状況に比べれば、随分と改善されたというか慣れてきた感があるものの、最後までテーブルには注意を怠らないで欲しいものだ。また、退店しようと席を立っても、だれひとり見送ったりはしない。そこまでしなくても、せめて目線を合わせて「ありがとうございました」くらいは言って欲しい。なんとなく尻切れとんぼのように思え、食事が完結したという満足感が得られないまま、下りのエレベータに乗る場合がほとんどだ。また、週末の5,800円という値付けには、少々高いなという印象が残った。

Y.K.