1999.12.21
お堀と白鳥と富士山と
パレスホテル Deluxe Room
喜-4

和風の趣き

大手町のオフィス街と皇居に挟まれるという、最高のロケーションを誇るパレスホテルは、この好立地にふさわしい格式あるサービスが自慢の高級ホテルだ。とりわけ年齢層の高いエグゼクティブたちからの信頼は厚く、館内を見るとゲストのほとんどがビジネスマン。ロビーのソファや、ラウンジのそこかしこで、スーツ姿のビジネスマンたちが熱い会話を繰り広げている。

ロビーの一角からは白鳥がくつろぐ和田倉濠や手入れの行き届いた花壇が望め、落ち着いた風格を漂わせながら、活気ある館内を潤わせているかのようだ。サービスも節度のある伝統的なスタイルで、外資系のタッチとは一味違う気の配り方は、日本のホテルならでは。

各階にサービスステーションを設けたり、バリアフリー対応や高齢者の使い勝手を追求したマスターズフロアの設置など、ユニークなアイデアを導入している。今回初めて宿泊したのだが、想像していた以上に滞在が快適で驚いた。

57平米あるデラックスルームは、落ち着いた和風タイプと、明るい洋風タイプがある。間取りや家具などに若干違いがあるが、バスルームはまったく同じだ。ベッドは幅140センチ長さ215センチの大型サイズが2台入り、幅5メートルの大きな窓に向かって設置されたライティングデスクやソファセットが置かれてもまだまだ余裕があるし、スッキリした配置は端正な印象をもたらしてくれる。

バルコニーも広く、目の前に噴水公園が、眼下には和田倉濠が、そして大手町のオフィス街や東京タワー、遠くには富士山も望めるという絶景。見えるものはすべて東京らしいスケールの大きなものばかりで、ごちゃごちゃとしたものは一切目に入らない。日中は窓を開け放しておいても、燦燦と降り注ぐ陽光が当たって暖かい。

カーテンはドレープ、レース共に電動式。バスルームも広々としており、タイルの壁と大理石の床には清潔感が溢れている。ベイシンはシングルだが、別にドレッサーが用意され、シャワーブース、洗浄式トイレもある。全体に清掃状況はトップクラスで、細部に至るまで非の打ち所がなかった。ビジネスの中心地で、これほどまでに癒し効果が得られるとは思いもよらなかった。

天井がユニーク 落ち着いた雰囲気

カフェ・レストラン「ハミング」

パレスホテル地階にあるショッピングアーケード内に位置するカフェ・レストラン「ハミング」は、早朝から深夜まで、時間帯を問わずバラエティ豊かなメニュを楽しめる気軽な店だ。内装もカジュアルで、やもすればファミリーレストランや地下街にある店舗とそう変わらないと思われそうだが、節度あるサービスにふれれば、さすがホテルのレストランだと感じることができるだろう。

メニュにも楽しい工夫が凝らされており、月ごとの10種類デザート(コーヒーまたは紅茶付きで900円)や、豊富なバラエティの丼から好みの2種を選ぶセット(1,500円)などがある。ランチタイムには1,300円のセットメニュも用意されているので、近隣のビジネスマンにも人気が高い。グランドメニュにはハーフポーションも用意されているなどの柔軟性も見られる。

特にオススメなのはマロンシャンテリーだ。つぶしたマロンにフレッシュ生クリームを絞ったシンプルな菓子だが、とてもやさしい口当たりでおいしい。このマロンシャンテリーはテラスレストラン「スワン」前のデリカテッセンでも購入できる。

最近ではファミレスのみならず、ホテルのレストランでさえ、今風のスレた若い女性を起用して、汚い発音の日本語や色のついた髪の毛など、それがファッションの域に達せず、単に不快さを与えていることがしばしばだが、このホテルの店舗はどこもそのようなことはなかった。女性の制服はピンクで、とても可憐なイメージだが、中に外国人の女性ウエイトレスがおり、とりわけ彼女のブロンドによく似合っていた。やはり、制服の色と髪の色との相性は大切なようだ。

1999.12.25
特別な計らい
パレスホテル Deluxe Room
怒-3

バスルームには籠があって便利

22日にチェックアウトをしてからすぐの再訪だったが、今回の滞在は前回とは打って変わって、残念なことの多いものになってしまった。インターネットを利用してデラックスルームを予約して出掛けたのだが、実際に案内されたのはスーペリアルームだった。デラックスルームを予約してある旨を説明し、予約確認書を提示したところ、スーペリアと表記すべきところをデラックスと誤って表記してしまったことを認めながらも、スーペリアで我慢するようにとあしらわれてしまった。

ホテル側の事情も分からないではないが、スーペリアであることがあらかじめ判っていたのなら予約しなかったので、こちらとしては納得がいかない。責任者だと自称する若いフロント係は、できることならデラックスにアップグレードしたいところだが、今日は満室なのでどうにもならないと言いつつも、申し分けないという気持ちが伝わってこない。怒りを買ったのは、部屋が用意できないということよりも、係のしたたかな態度だった。

上司と直接話がしたいと申し出ると、しばらく裏に引っ込んでから再び姿を現し、「それでは『特別に』デラックスルームを用意させて頂きます」と、まるで感謝でもしろといわんばかりの勢いだった。とんでもない。こちらとしては、予約通りのものを手に入れただけの話なのに。結局その上司は、「重要な会議中」だということでチェックアウトまで顔を出すことはなかった。

このように、予約したはずの部屋タイプが用意されなかったとか、パッケージに含まれるはずのサービスを受けることができなかったという話は、あちこちでよく耳にする。それだけでも十分に問題だが、それよりも、実際に本来与えられるものを受け取るまでに、非常にイヤな思いをし、なおかつエネルギーを消耗しなくてはならないことだ。

こういったことは大抵の場合、ホテル側の管理不行き届きに起因する。自分たちのミスが原因となってゲストに不愉快な思いを強いているにもかかわらず、誠意を持って対応できないホテルが多いのは、とても残念なことだ。なにか不測の事態やミスが生じたときには、その傷口が広がらないうちに適切な処置を講じることが必要だ。何事もないときには快適でいいホテルだと思えても、何かあったときにはとたんに信用できなくなるようなホテルがなんと多いことか。パレスホテルの残念ながら、そんな未熟児の仲間だった。

さて、今回『特別に』用意してもらったデラックスルームは、丸の内側と和田倉濠側のコーナーに位置するタイプで、2面に窓を持っているのが特徴だ。高層階8階だったので、濠越しに東京タワーや日比谷方面のビルが望めるほか、夜になると大通りを往来する車のライトが美しい。内装は派手なストライプの壁紙に象徴されるように、ややうるさい感じのコーディネイトだ。ベッドはスーペリアと同じく120センチ幅で、置かれている家具類の数も同じだし、バスルームもひとまわり大きいものの同等の設備。バルコニー付きのデラックスとの共通点は、カーテンが電動であることと、人造観葉植物が飾られることくらいなので、どちらかというと、スーぺーリアに毛が生えた程度に感じる。

前日がクリスマスイブとあって、たまたま清掃が行き届かなかったのかもしれないが、あちこちに汚れが目立っており、手抜き清掃御三家の一員、グランパシフィックの部屋を思い出させるものがあった。また、ライティングデスクのところにある椅子が壊れていて、背もたれに寄りかかると、自然にリクライニングしてしまう。そのうちに誰かがひっくり返る羽目になりそうだ。コネクティング仕様のため、ドアからもれてくる隣室の話し声や物音もかなり気になった。

デコラティブなコーナーツイン コーナーツインのシッティングスペース

和食「和田倉」

ホテルで楽しむ和朝食としては、トップクラスに属す店だろう。十分な人数が揃った女性従業員は、ピンクの和服を着ており、物腰といい気品といい、皇居前の伝統あるホテルにふさわしい人材ばかりであった。ご飯、粥、麦飯から選べる和朝食は、美しい器に丁寧に盛りつけられ、味噌汁のだしや、煮物の火の通し加減に至るまで、料理屋としてのクオリティーを貫いたもの。しかも、この品質とサービスで2,300円とはお値打ちだ。いい加減なものを適当に盛り付けてごまかしながらも一緒前な値段を取る新参ホテルには、見習って欲しいものだ。

クリスマス明けだけあって、こう言っては何だが、明らかに場違いな客層がいて、それはそれでおもしろかった。しかし、なぜ最近のカップルは食事中に会話がないのだろうか?

2001.01.04
3階の差
パレスホテル Deluxe Room
喜-2

年末に残念な気持ちを残したまま後にしたパレスホテルだったが、今回の滞在は初回同様に快適なものだった。正面玄関に到着した際は、大勢のドアマンが入口で待機していた。何事かと思っていたら、黒塗りの車が続々と入ってきて、大勢のおじさんを吐き出し、そのおじさんたちは豪快に笑ったり声を掛け合ったりしながらエスカレーターで宴会場へと向っていった。クリスマスに見た客層よりも、この光景の方がパレスホテルらしいことは言うまでもないが、社会的地位は高そうでもネクタイの趣味は最悪だ。

しかし、その対応に当たるドアマンたちの仕事ぶりは素晴らしかった。覇気があり、謙虚でありながら誇りを持っていた。「チェックインしますので荷物を降ろして頂けますか」と頼むと、「ご宿泊でいらっしゃいますか? ありがとうございます。お荷物を運ばせて頂きます。」との気持ちよい返事と共に、機敏な動作で対応してくれる。それに続くフロントでのチェックインもスムースで親切だった。

今回の客室は8階のバルコニー付きデラックスルーム。初回に宿泊した時と同じタイプの客室だが、5階と8階では眺望にかなりの差があることがわかった。5階のバルコニーからでは、噴水公園の木立に遮られて見えなかった日比谷のビルや東京タワーの全貌が、8階からだとよく見渡せ、東京のホテルでも指折りの景観が楽しめる。高層ホテルの場合は数階違う程度ではほとんど差がないだろうが、こうした低層ホテルだと1階ごとの差が大きい。同じ料金でこれだけ景観に差があるなら、リクエストをしてぜひ高層階を利用した方がよいと思う。

8階と9階のエレベータホール前には、パレスクラブ会員専用のラウンジがあり、イブニングカクテルとコンチネンタルブレックファストのサービスを行っている。また、高齢者の利便性を追求したマスターズフロアは7階となっており、大型のルームキーや少ない力で使える引出しや蛇口が設置してあるそうだ。各階にサービスステーションがあり、タオルの追加や氷などを依頼した場合のレスポンスは非常に迅速だ。ウエスティン東京のサービスエキスプレスも、この域を目指してもらいたいものだ。

Y.K.