1999.10.31
コンセプト不明
第一ホテル東京シーフォート Standard Room
哀-4

2階フロント付近から見下ろすグランカフェ。天井高はなんと12メートル

このホテルはそれなりに高級路線を狙っているようにも見えるが、どこからともなくチープさが漂ってきて、コンセプトを理解するのが難しい。少なくとも開業当時は、デラックスなホテルとして運営していたようだが、立地がさして良くないこと、イメージ的に高級そうな感じがしないこと、サービスが伴なっていないことなどから、あまりパッとしない存在になってしまった。せっかくの立派な設備が、単なる過剰投資に過ぎないような現状になっているのはとても哀れだ。

それ以上に哀れなのは、そろそろ失敗に気付いて、これではまずいぞと軌道修正を図ったら良いようなものを、なぜか肝心の部分には手を加えないでいることだ。第一ホテルチェーンは高級ホテルの何たるかが、基本的に理解できていないといわざるを得ない。

30平米のスタンダードなツインルームは、このご時勢でさえ35,000円という強気な設定で、しかも大した割引もせずに販売している。7周年を記念して、期日限定2名1室ひとり7,777円(税・サ別)というプランと、スイート半額のプロモーションを実施しているが、それでもオトクな感じがしない。35,000円のツインルームを例に取れば、ラックレートで24,000円くらいが適正ではないかと思う。その半額くらいで宿泊して、はじめてお値打ちを感じることができそうだ。

このまま強気の姿勢を貫くならば、まずはサービスの充実を図らなければならない。ベルサービスは一応あるものの、部屋まで案内するのが基本ではなく、頼んではじめて案内してくれるようだ。タオルは3サイズ揃っているが、ターンダウンサービスもない。ルームサービスは朝食から夕食までで、メニューも限定されており、充実しているとは言えない。そもそも、宴会場施設が乏しく、婚礼の需要に応えきれないだろうし、館内にも周囲にもさして魅力的な施設がないので、どうしてもビジネスホテル的な色合いが濃くなっている。

エレベータが最上階レストランや宴会施設と兼用で2基しかないので、滞在中かなり待たされる場面があって不便に感じた。室内は天井高が255センチで窓は260センチの幅と130センチの高さがあり、蛍光燈の間接照明やダウンライト、ミニバー用ライト、2台のスタンドとナイトランプがあるので非常に明るい。防音性は比較的高い方だし、内扉があるので落ち着いた空間が確保される。

ところが、エアコンのメンテナンスが悪いようで、作動させるとかなりの騒音を立てるので、就寝中は停止させざるを得なかった。せっかくの4管式エアコンなのにもったいない。また、240×160×220のバスルームはタイル張りなのだが、カビだらけで不潔な感じがした。また、カランからの水圧は十分なのに、シャワーに切り替えるととたんに勢いが衰え、それどころか、湯温が著しく変化してしまうのには困惑した。

客室内全体がかなりタバコ臭いのも、ビジネスホテルっぽさを感じさせる要因になっていた。第一ホテル東京同様、設備がいいだけにメンテナンスの悪さは残念でならない。開業当時はミニボトルを含め完全に無料だったミニバーも有料化したが、価格設定は良心的だ。しかし、冷蔵庫内の飲み物が雑然と置かれていたのが気になった。

マイナスポイントを焦点にすると魅力のないホテルになってしまうのだが、良い点も少なくない。全室に備わったバスローブ、ミラショーンのシャンプー・リンスや石鹸をはじめとした充実のアメニティ、120センチ幅のベッドにはベッドスプレッドと一体型ながらも羽毛を採用した寝具と大型サイズの枕、レース・ドレープともに電動式になっている、バスルーム内にも発信可能な電話機がある、一輪挿しに生花が入っている、ライティングデスクにファックスや通信用のモジュラージャックを備える(ところが、電話機やファックス本体はない)など、一流ホテルと肩を並べる設備もある。

ロビーなどにさりげなく置かれたシノワズリーを基調とした調度品なども、よく見ると意外にも高級品だ。ところが、これだけで一流ホテルと互角にやりあおうと思っても、そうは問屋が卸さない。無理に高級路線を突き進むよりも、ちょっとアップグレードなビジネスホテル風、例えばセンチュリーサザンタワーや東京マリオット錦糸町東武くらいのグレードで勝負してみた方がいいのではないかと考えながらのステイだった。

大きなデスク、アーモア、ミニバー 充実したアイテムがそろうアメニティ

1999.11.17
ダブルベッドもどき
第一ホテル東京シーフォート Executive Suite
哀-4

ダブルベッドのように見えるが、実は・・・

このホテルのラックレートの設定には首を傾げてしまう。このエグゼクティブスイートは1名利用で6万5千円、2名利用で8万円、3名利用だと10万円となっている。2名利用を基準に考えて、シングルユースを割安に設定するというのは理解できるのだが、3名利用の場合、なぜエキストラベッドを入れるだけで、とたんに2万円高くなるのだろうか?

このタイプの客室は24階から26階までの各16番に、のべ3室が設けられており、いずれもダブルベッドの仕様になっている。面積は74平米で、海(というか運河)に突き出した建物の先端部分に位置しているので、2方向の景観を得られる客室だ。エントランスも、オーシャンスイート、タワースイートと並び、それ以外の客室とは違った立派な造りになっており、以上3タイプのスイートが、このホテルにおける特別客室だと考えてよさそうだ。

エントランスを入ると、長い廊下になっており、途中に大きなクローゼットとハロゲン光のスポットが当たったコンソールが配置されている。ところが、クローゼットの扉はガタがきて壊れているし、スポットを浴びているのは寂しいスプレーカーネーションの一輪挿しと、このホテルのお寒い状況を象徴するかのようだ。廊下は途中で90度折れ、直進、左右の3方向の扉に到達する。右にリビング、左にバスルーム、直進するとベッドルームという具合だ。

リビングとベッドルームの間は、もうひとつの扉でも行き来できるようになっている。リビングに入って真っ先に目に入るのは、斜めに切り取られた大きな窓と、そこから望むベイサイドの景観だ。室内のインテリアはシンプルにまとまっており、明るい色合いの家具が採用されている。奥のソファは90度に折れ曲がったカタチで、その一部がエキストラベッドになる仕様だ。ダイニングセットが3人用というのも珍しい。照明は3段階の調光が可能で、カーテンはドレープ、レース共に電動式だが、接触が悪いのか正常に作動しなかった。かといって無理に手でひくとより悪くなりそうなので、だましだまし使用した。

ベッドルームには240センチ幅の大きなベッドが一台入っているのかと思いきや、つながっているのは下のマットだけで、掛け布団とシーツは真ん中で重ねあわせてある、ダブルベッドもどきだった。これなら、素直にハリウッドツインにすればいいのに。ベッドルームの窓際にも肱掛椅子が置かれ、こちらの窓からはお台場やレインボーブリッジが望め、なかなかの眺めだ。ベッドルームにはその他にライティングデスクが設置されており、こちらにもリビングとは別にミニバーが用意されている。

ライティングデスクにはFAX用のモジュラージャックがあるので、接続しようかと試みたが、発信音がしないため、フロントに問い合わせたところ、スタンダードルーム以外ではそういった需要がないと見込んでいるため、配線工事は行っていないとの回答だった。ホテルのパンフレットでも、テレビでのホテル案内でも、全室にFAX回線を設置してあるとのふれ込みにもかかわらずだ。本来なら高級な客室こそ、こうした設備は充実させるべきだと思うが、第一ホテルの考えは逆であるらしい。

バスルームは狭いながら、大理石を使用したゴージャスな仕上がりで、シャワーブースも設置されている。カランやシャワーヘッドには金メッキを施したユニークなものを採用している。ベイシンの両脇には棚があって便利だ。アメニティは一般客室と同等で、特別な用意はなくタオルも2枚ずつしか置いていない。フロントの係は愛想もいいし丁寧だが、いくら暇でも、いくらこちらが大荷物であろうとも、決して進んで手伝おうとは申し出なかった。

それなのに、1階のエントランスには、なぜかドアマンがいる。タクシーさえ客待ちをしないほど、エントランスは人影がないにもかかわらずだ。これこそ無駄だと思う。因みにタクシーを呼んだら、待たせた訳でもないのにエントランスを出たとたんにメーターが上がった。2キロ近くはなれたところから、はるばる駆けつけてくれたということだろうか?

リビング奥のソファはエキストラベッドにもなる 先端部分からの眺望

白系の大理石を使ったバスルーム ベイシン上の丸い鏡がキュート

1999.11.19
ここってホテル?
第一ホテル東京シーフォート Ocean Suite
哀-5

皮張りのソファ

このホテルのトップスイートであるオーシャンスイートは、23階の先端部分のすべてを占め、144平米の面積がある。2名利用で20万円、シングルユースだと、とたんに8万円も割り引きしてくれ、12万円となるが、3名利用の設定はない。

客室のエントランスは、このクラスになると両開きになっている場合が多いが、この客室はエグゼクティブスイートと同じ片開きの扉だ。入ってすぐのところには、大理石を敷き詰めた広い前室があり、バカラの花瓶やオベリスクなどの調度を配した瀟洒な空間になっている。この前室が各部屋へとつながる中継ステーションのような役割も果しており、その他ゲスト用トイレ、クローゼットが設置されている。

両サイドがエッチングガラスで装飾された扉を開くと、リビングダイニングがある。グレーの皮張りソファセット、ライティングデスク、コーヒーテーブル、8名用ダイニングセットが広い空間にゆったりと配置されており、据え付け家具には大型テレビ、オーディオセットが組み込まれている。コンソールやダイニングボードの上にも、数々の高級調度品が並んでいるが、手入れが悪いのでかなり汚れが目立つ。窓際には、かつては観葉植物が植わっていたと思われる大きな鉢だけがドンと置かれていて、客室というよりも倉庫のようだ。ダイニングの奥には簡易キッチンが設けられている。

ベッドルームはシングルルーム2部屋分の面積があり、140センチ幅のベッドが2台入っている。窓際にはバックスキン地の肱掛椅子が置かれ、アーモアには小さなテレビとミニバーがある。このスイートにはのべ3個所に冷蔵庫が設置されていて、それぞれにぎっしりと飲み物が詰まっているが、今となってはすべて有料なのであまりありがたくない。以前のミニバーオール無料の頃だったら、さぞかし利用のし甲斐があったことだろう。リビング、ベッドルーム共に、電動カーテンと調光付きの照明が採用されている。ベッドルーム脇にはクローゼットとドレッサーを配したドレッシングルームがあり、広々とはしているが、収納スペースは意外と少ない。

バスルームは総大理石張りで、2色の大理石を巧みに使った動的なインテリアだ。ダブルベイシン部分から一段上がってジャクージ風呂とシャワーブースが配されている。シャワーブースは水圧が低い上に排水が悪くて水が溢れるし、金具の周りにはヘドロが付着しているしで不潔な印象。バスタブは大型なのはうれしいが、せっかくのジャクージ機能は勢いがないのが残念。奥の小窓は曇りガラスになっているので、外光は入っても景色は見えない。ベイシンの手前の隠れた位置にトイレがあるが、洗浄機能は付いていない。一方、ゲスト用のトイレは洗浄機能付きだ。

今回利用したときは、客室の清掃・メンテナンス状況が最悪だった。先程指摘したバスルームの汚れの他、床にはあちこちに細かいゴミが散乱、カーテンの故障、ナイトテーブルの時計の故障、調度品や窓ガラスのひどい汚れなど、散々な状態だった。リーガロイヤルホテル早稲田同様、見た目の華やかさを優先させ過ぎて、メンテナンスがしにくい設備が多すぎる。

ルームサービスで、朝食を注文してみた。貧弱な内容に比べて、価格は2,800円と大層立派である。コーヒーは1杯分しか入っていない上に、砂糖もミルクもポーションだ。パンもいつ焼き上げたのかわからないような味だし、パン皿さえ付けてくれない。これではせいぜい2,000円が上限だと思う。なお、この客室にもFAX用の回線はなく、電話回線は1本のみで、電話機もこの広い客室のなかに3台しかない。なんともお粗末な設備だ。

第一ホテル東京シーフォートはモノレール駅と直結で、ウォーターフロントの好立地とはいえ、わざわざこのホテルを目的地として訪れるだけの魅力は残念ながら持ち合わせていない。館内はいつも閑散としていて、その静けさが癒しやくつろぎにつながればいいが、実際には耐え難いほどに寂しい気分にさせただけだった。アートスフィアの楽屋代わり以外には用途がないホテルだ。

2階ロビーフロアでシーフォートスクエアのショッピング街と連絡しているが、ホテルの中と外の雰囲気に大差がなく、レストランの料金だけが、いきなり高くなっただけの印象なので、近くに来ていても「せっかくだからホテルで食事でも」という気分にはなれないのかもしれない。

大きな据え付け家具が高級感を演出 ダイニングからソファを望む

寝室のベッド ベッドサイドのコージーな空間

広いバスルーム せっかくのジェットバスだが勢いが弱い

「グランカフェ」

ちゃんこ鍋をワインで煮込んだ「ワイン鍋」という商品を熱心にプロモーションしているが、さすがに試す勇気はなかった。メニューは3,500円のセットメニューから、このしつらえでは目玉が飛び出てしまいそうに高いコースまで、幅広い品揃えだが内容は寂しく、田舎のホテルレストランを彷彿とさせる。アラカルトで数品注文してシェアするのが、もっとも無難なスタイルだと思う。

居酒屋風のオードブルが、新幹線の車内販売以上に高い価格で販売されているほか、創作どんぶりなど、個性的なメニューもあるので、一度目はそれなりに楽しめるかもしれない。ぜひまた利用しようと思える人は、相当心が広いか物好きかのどちらかだろう。

窓はひどく汚れていて、せっかくのプラザの景観が霞んで見える。ホテル内よりも、他の施設の方が清潔感もあるように感じさせてしまうのだから困ったものだ。サービスは悪くないのだが、それだけでカバーできないマイナスポイントがある店だ。別れ話をするには、いいと思う。ここらでケリを付けたいときに利用してみてはどうだろう。

Y.K.