1999.05.01
かずさアーク
オークラアカデミアパークホテル Superior Room
喜-1

ベイシン

本当にこの先にはホテルがあるのかと疑いたくなるほど、周囲の景色はのどかだった。アクアラインを渡りきってから所々に案内板があったので、それを頼りにやってきたが、もし夜だったら特に照明も当てられていない案内板だから、見ることができず道に迷ってしまったかもしれない。完成して間もない感じの整備された道路を行くと、道すがらに数多くのゴルフ場があり、行く手には造成された広大な敷地に点在する施設群が目に入ってくる。まだまだ整備の途中で、景観を損ねるような汚いフェンスやむき出しの地面が、30年近く前の多摩ニュータウンを彷彿とさせた。ホテルのある中核施設群へのアプローチは長くて感じがよい。

ホテルの正面玄関にドアマンはいないが、車が着くとすぐに中から係りが出てきて対応してくれる。このあたりはさすがオークラという感じ。ロビーまわりの雰囲気はなかなかで、よく手入れが行き届いている。客室へのエレベータは2基のみ。客室階エレベータホールの空調吸い込み口が埃まみれに汚れているのが気になった。同じエレベータホール内の床にはキャンディーが3粒落ちており、それはチェックアウト時まで清掃されていなかった。しかし、客室の清掃は念入りに仕上げられており清潔感がある。

天井の高い室内は、シンプルなインテリアで、全室にバルコニーがあり、リゾート気分をかきたててくれる。窓からは付近の豊かな緑や敷地内の庭園の他、向きと階層によっては東京湾岸の夜景も望むことができる。今ごろの季節には窓を開け放って、新鮮な空気や庭園内の滝の音などを室内に取り入れれば、開放的な気分が味わえる。

しかし、発生源は中国料理レストランかと思われる、油っぽいにおいが少々気になってしまうのが残念。バスルームは大理石張りで一部にモザイク加工が施されており豪華。ベイシンはひとつだが、大きな引出しがふたつあって便利。シャワーの水圧は十分だが、バスタブの排水に時間が掛かり過ぎる。アメニティーは必要最低限で、品質も他のオークラ同様に一般的だった。シャンプーはリンスインシャンプーなので、気になる人は持参した方がいいかもしれない。

クロゼットはやや広めだが、掛かっているハンガーがチープだった。また、電話機がベッドサイドに一台しかなく、不便を感じた。ターンダウンサービスは行っていない。レストランの閉店時間が早い上にルームサービスも一切なく、付近にも店は見当たらないため、コンファレンス等のビジネスで利用するには不便極まりない。ランドリーは伝票に記入してフロントまで持参しなくてはならないという、ビジネスホテルレベルの内容だ。ゴールデンウィークのイベントとして、ロビーに5月人形がディスプレイされている他、琴の生演奏があった。

レストランは3店舗あるが、いずれも午後9時には閉店してしまうので、チャンスを逃すと翌朝まで何も食べられなくなってしまう。また、ゴールデンウィーク中は、各レストランともスペシャルメニューを用意しているが、洋食の「カメリア」ではブッフェのみの営業としていて、普段のアラカルトメニューやセットメニューは用意できないとのことだ。ブッフェはローストビーフが目玉商品だが、都内のブッフェレストランと比べると品数が少なくい上に、4,500円税・サ別という高額。この商品オンリーに踏み切るところは、リゾートホテルならではの戦法だろう。店内のみならず、パブリックスペースはどこでも子供が大声で駆け回り、騒々しかった。

朝食はこの「カメリア」一箇所のみで提供されており、しかもブッフェのみで1,800円。品数と品質はオークラの意地をかろうじて感じられるもので、この立地と値段にしてはよく頑張っていると評価できる。ラウンジ「シエールブルー」はエントランス正面にあり、吹き抜けの高い天井と庭園を望む大きな窓を持ったくつろぎの空間だ。ワッフルのセットを注文したが、肝心のワッフルはレンジアップするだけなのか、すぐに提供され、しかも熱くなかった。

バー「オーキッドバー」はロビーの内装の色調とは異なり、ややモダンで鮮やかな家具を配している。客の層がこの雰囲気に合っていれば申し分ないムードになるところだが、ゴルフ客のカラーの方が濃厚で、街場のスナックのような雰囲気になっているのが残念。バーテンダーはひとりきりで、会計や片づけまですべての業務をこなしていて大変そうだったが、サービスは快適だった。

中国料理「桃花林」は、昼のセットメニューがが1,300円から、夜のコースメニューが5,000円から用意されていてお手頃。東京のオークラにある「桃花林」は、非常に評価の高い中国料理の名店だ。その味を引き継ぎながらもこの低価格、しかも昼でもきちんと布のクロスとナプキンを使用しているから、お値打ち感は高い。サービスはどの店でも概ね快適で、オークラの水準の高さを改めて感じさせられた。

しかし、こんなエピソードもある。ぼくらのとなりの席でおじさんが五目入りのつゆそばだけを注文した。すると、黒服のサービス人は「つゆそばは10分程度お時間を頂戴しますがよろしいですか?」と確認した。ぼくはそれを聞いて、この黒服はこの注文を快く思っていないような印象を受けた。実際にはつゆそばが一番早く提供され、むしろ先に注文を済ませたぼくらの料理の方がよほど遅れて出てきた。もし、この黒服に邪なところが無いのなら、ぼくらの注文を受ける時にこそ、時間がかかる旨を案内すべきだった。

窓からの眺め 琴の演奏

Y.K.