1998.02.08
クラシックホテル
富士屋ホテル(宮の下) Deluxe Corner Room 花御殿
楽-4

創業120周年を迎えるクラシックホテルに滞在した。客室はいくつかの棟にわかれていて、今回は各室に花の名前を冠した建物のコーナーにある部屋に泊まった。どのみち国内のリゾートホテルなんて、サービスは悪いだろうし、料理だってたいしたことないだろうと思いながらやって来たが…。

扉を開けた瞬間から、想像は覆された。どの従業員もよく教育が行き届いるし、それだけでなく、心もこもっている。都内では、若い従業員が必死になって立ち回っているのに、偉い人たちはそれを監督しているだけで、まったく動いていないと言う図をよく見掛けるが、ここではベテランも一同にきびきびと気持ちよく動いている。

とりあえず、サービス面ではリゾートホテルの群を抜いている。恐れ入りました。これだけの高い水準を維持できるのなら、系列のホテルでももう少しノウハウをいかしてもらいたいと思う。

館内はどこを見てもクラシックの馨りいっぱいで、歴史を感じずにはいられない。客室もまた同じで、高い天井に和洋折衷の年季の入った家具が配置されている。でも、正直言って、このホテルで見るからこそ味わいがあるあるわけで、これが自宅にあってもただのボロでしかない。おじいちゃんの家にお泊りに来たって気分。

夕食は,メインダイニングでとった。コースは1万、1万2千、1万5千。その他アラカルトがある。ワインリストは、リゾートホテルとしては他に例を見ないほど充実しているが、料理同様、価格がやや高めだ。まず、店内の雰囲気が素晴らしい。これほど広々としたダイニングは東京でもなかなかお目にかかれない。客の年齢層の高さが、落ち着いた雰囲気を一層深めている。

十分な人数の従業員がおり、日曜日の夜だと言うのにほとんど満席で、レストランとして理想的な活気がある。料理は、目新しいところのないクラシカルな仏料理だ。ところが、今ではかえってこれが新鮮に感じられた。自家製のパンもどことなく懐かしい味がする。面白いと思ったのは、スープやドレッシングは客にレードルを持たせ、皿に移させる点だ。お好きなだけどうぞと言われても、自分でレードルを持つのは妙な気分だった。

食後に出されるフィンガーボールや、デミタスカップで提供されるコーヒーも、今や他では見られない。タイムスリップしたような気分と期待よりはるかにおいしい料理とよいサービスで「楽」。

Y.K.