1998.02.07
ホテルゲストの扱い方
ホテルモリノ新百合丘 Suite
怒-1

小田急線新百合丘駅前に昨年オープンしたホテル。デザイン性が高く、センスよく仕上がっているが、住宅地に果たして似つかわしいのか疑問だ。まだまだホテルを使いこなす客層に恵まれない土地で、地域の方々にホテルの利用の仕方を伝えていこうと言う姿勢はとても立派だが、その担い手になるような魅力的なホテルマンがここにはいない。

車を正面に付けると、とりあえずドアマンが寄ってくるが、ドアを開くでもなく突っ立っている。仕方なく自分で降り立つと、いぶかしそうにホテルをご利用ですか?と尋ねてくる。同じ建物にショッピングゾーンが共存しているため、そこの利用客がホテルの専用玄関に来ては困ると言う発想なのかもしれないが、ホテルとは何かを伝えたいと豪語しているのなら、たとえ間違えて尋ねてきた客でもホテルのゲストとして丁重に扱ったらどうだろう。

このホテルがビジネスホテルでないことは料金表を見れば一目瞭然だ。都内のそれなりのホテル顔負けの客室料金を設定している。確かにどの客室も照明効果が高く、スタイリッシュにできているものの、シーツやタオルの質から考えると割高感がある。

ただ、スイートだけはなかなかよい。70uの広さを確保し、石張りのバスルームやモダンなデザインの家具も然る事ながら、自在の調光設備が雰囲気を高めている。しかし、同じ4万5千円を投じるなら、例えばフォーシーズンズホテル椿山荘東京のクラブスーペリアの方が満足度は高い。ただ部屋が良いだけではホテルとして優れているとは言えない。到着から出発まで安心して快適に過ごすためには優秀な従業員の存在が欠かせないのだ。

1998.03.24
女性の本音
「梅の花」ホテルモリノ新百合丘
楽-2

この店は女性に圧倒的な支持を得ており、いつでも店の前に行列ができている。ほとんどが個室になっており、清水や源衛門などと名前のついた各部屋では、それらの焼き物の器のみを使用して料理が提供される。こう言っては女性に怒られてしまうかもしれないが、女性に人気と言われている店にはろくな店はない。

本質よりも雰囲気やスタイルを重んじているために、肝心の料理は「おいしそう」ではあるがおいしくない。また、サービスは仰々しくはあるがマチュアがないので、慣例にない事柄が起きるとたちまち対応できなくなる。今回は「清水の間」での会食だったが、これが本当に清水焼なの?と疑わずにはいられないような肉厚で、下品な絵柄の器ばかりだった。

豆腐料理店だから豆腐ばかり出てくるのも当たり前だが、そもそもその豆腐があまりおいしくなかった。テーブルで湯葉をひいたあと、にがりを加えおぼろ豆腐をこしらえてみせるパフォーマンスがあるのだが、最後まで豆腐が固まらず、豆乳状態のままだった。なんだか興ざめといった感じ。

それはそうと女性が集まり、なおかつ個室に収まって周囲の目が遮断されると、ものすごいことになるらしい。薄い壁を伝わって聞こえてくる淫靡な会話とけたたましい笑い声には驚いた。壁に耳あり。淑女の皆さん、ご注意を。

1998.11.02
踊るシャワーヘッド
ホテルモリノ新百合丘 Suite
怒-3

この月、開業1周年を迎えるホテルモリノでは、さまざまなプロモーションを企画しており、宿泊関係では朝食を無料でサービスしたり、スイートを半額で利用できるプランを設けたりして、積極的に地域の人たちに知ってもらおうという試みが感じられる。

このホテルにはスイートが1室しかないので、半額の期間中は予約を取るのが困難なほどに人気だった。客室の仕上がり具合や、対面積でのコストパフォーマンスはこのスイートが一番優れている。70平米の客室はワンルームタイプで、リビング、ベッド、バスルームと、それぞれコーナーに分かれてはいるが、連続性があり、リビングとベッドの間はステップで、ベッドとバスルームの間はすりガラスと開き戸で仕切っているに過ぎない。リビングにはソファセットとオットマン付き安楽椅子、ライティングセットが置かれ、サイドテーブルには生花が飾られている。

リビングから石の階段を上がるとベッドが2台ハリウッドスタイルに置かれているが、ツインルームと同じ寝具を使用している。もっとも完成度が高く感じられるのは大理石をふんだんに用いたバスルームだ。窓際に置かれ外光がたっぷりとそそぐ大型のバスタブと、シャワーブース、別室に設えられた洗浄式トイレがあり、すりガラスの天板を採用した、ステンレスボールのモダンなベイシンは、床からライトアップされている。

せっかくのスタイリッシュなバスルームだが、メンテナンスがまったくなっていない。ステンレスのベイシンは真っ白くなっているので、もう傷だらけになってしまって気の毒だと思いきや、タオルで擦れば何ということはなくきれいになる。単に垢がこびりついているのを拭き上げていないだけだった。更にベイシンの下から水が漏っていたが、接合部のネジを締めてやったら、簡単に直った。

バスタブには天井からハロゲン光が当たり、水に反射して美しいという効果はあるが、実際にバスタブに横たわった時には、その光が直接目に入り、眩しくて困った。また、シャワーブースのシャワーヘッドは、フックが壊れていて固定できず、湯を出すと気でも狂ったように踊り出して、四方八方に湯を撒き散らすというありさま。これでは、シャワーを浴びるにも一苦労だ。なんということはない、ただ部品がひとつ欠けてしまっただけなので、修繕しようと思えばすぐに出来るはずなのに、それを怠っている。

これでは、せっかくのデザインが台無しで残念だ。アメニティはニナリッチで、石鹸、シャンプー類共に、大型のものが用意されている。タオルは豊富に用意されているが、ホテルのクラス上、2サイズのみだ。バスタブには湯の逃げ口がないので、湯を出しっぱなしにしていると溢れてしまうので御用心を。

Y.K.