1996.11.22
フロント前の行列
帝国ホテル大阪 Superior Room
哀-3

東京にある「世界の帝国」が大阪に進出した。同じく大阪に以前から構えているビジネスホテル「大阪帝国ホテル」とは仲良くやっていくそうだ。所詮土俵が違うのでぶつかり合うことは少ないだろうが、タクシーで乗り付ける場合は注意が必要になるかもしれない。パークハイアットのオープン当初も、よくセンチュリーハイアットに連れて行かれたものだ。

この帝国ホテル大阪は、東京の帝国ホテルに比べると、随分と女性を意識した部分が多い。ロビー周りには鮮やかな色使いのソファが配置され、ラウンジを見下ろすようになっているが、パントリー内まで見渡せてしまって、ラウンジを見下ろしている限りでは、帝国ホテルの雰囲気には感じられない。

しかし、V.I.P.専用エントランスや、しきり板の移動によりV.I.P.専用にすることのできるエレベータ、宿泊客専用音楽練習室など、他のホテルには真似ができない設備も備え、大阪の迎賓館的な位置付けをも狙っていることがうかがえる。また、宴会関連施設の充実を図り、主にウエディングの需要に重点を置いたマーケティングを展開し、オープン前から話題になっていたが、その甲斐あってか婚礼需要は絶好調のようだ。

今回利用した客室はスーペリアルーム40平米。夜遅くに到着したためか、まったくと言っていいほど眺めのない低層階の客室だった。室内は暖色を基調としたクラシカルなモチーフとモダンなテイストを巧みにブレンドした独特の雰囲気があり、総じて居心地のよい客室だ。

バスルームもユニークな造りで、日本人を意識してバスタブの脇に洗い場を設け、腰掛けを用意している。ベイシン脇には籐製のワゴンが置かれ、アメニティやタオル類、ドライヤー等が収納されている。アメニティにも工夫を凝らし、気分をリラックスさせる作用のある香りのアイテムが用意され、種類も豊富だ。ゲストステーショナリーひとつとっても、高品質のものが採用されており、妥協がない。

こうした高水準の設備の割にはラックレートが低く抑えられており、ホテル客室価格の新しい基準を打ち出した格好にもなっている。しかし、残念だったのは、翌日のチェックアウト時の係りの対応だ。チェックアウトタイムにはフロント前に長蛇の列ができている。それをロープで列を作り順番に対応をしているわけだが、カウンターには3人の係りしかいないので、なかなか列が進まない。

その上、列によって進み具合に差があって、後から来た人の列の方が早く進んで、手続きを終えているケースがあったり、平気で横入りする客がいたりと、数人の客から厳しい苦情が飛び出していた。混み合うのは仕方がないが、この程度のことをスムースに、かつ公平にとりおこなえないようではお粗末だ。一言お詫びを入れながらせめて列を整えるための係りを配してはどうかと思った。どことなく日航東京と同じよな雰囲気を醸し出している。

「フライングトマトカフェ」

遅い時間に到着したため、食事のとれる店はここだけだった。東京の「ユリーカ」同様、気軽に利用できる明るいイメージだが、客層やサービス陣の洗練度にも相当の差がある。メニューは遅い時間だからか、品数が絞り込まれており、選択肢が少ない印象だった。結局パスタをオーダーしたが、さほど混んでいないにもかかわらず、提供に時間がかかった。

また、コーヒーは相当時間が経ったものらしく、煮詰まっており、まるで毒水のようだったので、一口しか飲めなかった。トマトに顔が付いたポップな絵柄がプリントされた食器は、ホテルとしては斬新なアイデアではあるが、遊びが度を越した感じがした。東京でも評判のパンケーキもあるので、今度試してみたい。

「ジャスミンガーデン」

ひときわ高い天井と、高層階ならではの眺望、フローリングの床に、赤い椅子など、中国料理店のイメージがまたひとつ広がった。かつてはホテル内の中国料理店といえば、低層階や地階に設けられ、内装がありきたりで窓のない店も多かった。

ところがヨコハマグランドインターコンチネンタルホテルの「カリュウ」やハイアットリージェンシーオーサカの「天空」など、眺望をウリにしながら、ヨーロピアンスタイルのサービスで中国料理を提供する店や、フォーシーズンズホテル椿山荘東京の「養源斎」のように、海外初出店の名店を置くなど、ホテルの中国料理店がおもしろくなってきた。

ここ帝国ホテルの「ジャスミンガーデン」はメニュー構成を見ると、オーソドックスな内容で、コースにも馴染みのある料理が並ぶ。今回注文した8,000円のコースも目新しい料理はなかったが、とても丁寧に調理されており安心感があった。サービスは概ね快適だが、薦められたボジョレーヌーボーのグラスワインは、抜栓してから相当の時間を経過していると見え、品質が著しく低下していたのが残念だった。

Y.K.