1994.05.06
日本と欧米との距離
ホテル西洋銀座 Boudoir Room
楽-4

海外の主要都市には当たり前のように存在するスモールラグジュアリーホテル。日本に西洋銀座がオープンしてもう随分経ったが、まだその真価が広く理解されるには到っていない。ある意味、時期尚早だったのだろう。日本で高級ホテルと言えば、同時に規模も大きいというイメージがあり、国際会議ができる宴会場や、数々のレストランを擁するのが当然だった。それは都市の顔であり、日々が華やかな舞台であるべきだった。

しかし、個人が個人として真のくつろぎを求める場所に、巨大なボールルームが必要だろうか。雑踏とは完全に遮断され、静寂もプライバシーも守られた空間、腕利きシェフのいる居心地のいいレストラン、有能なコンシェルジュ、広くて清潔な客室。それらを満たしていれば、ホテルはむしろ小さい方がいいという考え方もある。とりわけ人目にさらされる職業の人は、できるだけ静かに過ごせる環境を求める。しかも、それは都心の一等地でなくてはならない。

すべてを満たすホテルが西洋銀座だ。サービスは完璧。ホワイトを基調にしたインテリアは明るく清潔感がある。銀座という場所にありながら、その内部の様子はあまり漏れ聞こえてこない。それだけ堅実にゲストのプライバシーを守る努力をしているのだが、おかげで真価を広く知らしめることもなく年月が経ってゆく。

見事なクオリティを守りつつも、事業として成功しているようには見えないのが残念。このホテルには日本のホテル文化を一歩前進させる成功例となってほしいものだ。日本が欧米の真似をして追随ばかりすることはないのだが、スモールラグジュアリーホテルが、街の自慢として市民に受け入れられればたいしたもの。まだまだ日本と欧米は遠いようだ。

今回利用した客室は、ブードアルームと呼ばれる60平米のツインルームだ。入口付近には第1のクローゼットとミニバーがあり、すぐ奥にベッド、アーモア、アームチェア、窓際に面したソファセットという配置。さらに、窓の近くから横にもう一部屋あって、広い大理石のバスルームとブードアがある。ブードアとは衣装室と化粧部屋を兼ねたようなもので、大きなウォークインクローゼットの中にドレッサーを設えた小部屋だ。窓に面しており非常に明るい。

バスルームにはいつでもたっぷり用意されたタオルがあり、アメニティも豊富だ。シャワーブースの内部の気密性が高く、下水の臭いが上がってくるのが難点。到着時のハーブティのサービス、モーニングコールと共に好みの飲み物を届けてくれるサービスも健在。こびるところなど微塵もない立場をわきまえたサービスが、いつでも要望に応えてくれる。

Y.K.