1994.02.12
同じ視線
大阪東急ホテル Standard Room
怒-5

このホテルには、90年に一度泊まったことがあった。東京を深夜に出て、翌朝の大阪でのアポイントに間に合わせるために、疲れを押しのけて車を飛ばし、早朝5時に大阪に到着。約束までの3時間でリフレッシュできる空間を求めて、早朝にウォークインでチェックインした。

デポジットを要求されカードを提示し手続きを終えると、「ご出発は何時ごろをご予定ですか?」と尋ねられたので、「3時間後です」と答えた。するとチェックインを担当した不愛想なアシスタントマネージャーは怪訝そうな顔を更に歪めていたと記憶している。

まだ夜明け前のロビーは、ひっそりと静まり返っていて、従業員は冴えもなくぐったりしていた。部屋に入り、シャワーを浴びて2時間ほど眠り、さっと着替えて出発。3時間のために3万円ほど使ってしまったが、通りすがりのホテルだと思ったので損得を考えもしなかった。

その東急ホテルにまさかまた宿泊することがあろうとは思ってもみなかった。この日大阪は大雪にみまわれ、前泊の阪急インターナショナルをチェックアウトする頃には、新幹線も止まってしまった。この日東京に戻る予定だったが、交通機関が麻痺してしまったので断念し、もう一泊大阪で過ごすことにした。

ところが折からの大雪でどのホテルも満室。この東急ホテルに一部屋だけ空室があってそれを確保した。このホテルに宿泊する時はなぜかいつもラックレートを支払う羽目になる。前泊の阪急インターナショナルとさして変わらない宿泊料金を支払って案内された客室は、狭く息苦しいばかり。その上、老朽化が進み、シティホテルというのはおこがましいような設備だった。

ひざを抱えて湯に浸かるようなバスタブしかないバスルームには、「扉を開けたままシャワーを利用されますと、蒸気で防災設備が作動する恐れがありますので、扉は閉めてご使用ください」という注意書きがある。ホテルの客室はよく乾燥しているので、バスタブに湯を張ったり、時にはシャワーをしばらく出すなどして加湿するのだが、このホテルでそんなことをしたら警報が鳴ってしまいそうだ。

ベッドはダブルサイズだったが、それ以外に足の踏み場など残っていないほど余裕のないレイアウト。狭い部屋でも小さく感じる大きさの窓からは、となりのビルの壁しか見えないが、建物と建物の間にも舞ってくる雪がチラチラとキレイだった。

今回不満に感じたのは、客室のボロさでも、ボロい割に強気な価格だからでもない。フロント係の対応にガッカリしたからだ。チェックインの際、フロントは混みあっていた。担当した女性係に現時点で可能なら広めの部屋にして欲しいと頼んだ。もちろん料金が高くなるのはかまわない。

彼女は広い部屋の空きを見つけて、そちらをアサインしキーを出そうとしたその時、マネージャーが割り込んできて、彼女になにやら吹き込み、はやり用意できないと言わせた。一度手に入れたものを返上するようでとても気分が悪かった。

しかも、その際のマネージャーの態度は不愉快だった。ちらりとでも申しわけなさそうな素振りがあればまだしも、こんな客にいい部屋を譲れるかというようなきつい目つきでこちらをにらむ。4年前と同じ視線を感じた。

この先も、特別な理由がなければ決して宿泊しないと思う。設備で勝負ができないのなら、せめてサービスで補ったらいいのに。両方悪いのではどうやってゲストの支持を得るというのだろうか?

Y.K.