1993.01.30
JTB沖縄エグゼクティブプラン その2
パレスオンザヒル沖縄 Executive Suite
哀-3

窓からの緑が美しい

2年ぶりのパレスオンザヒルだった。ツアーで利用するのは今回が初めてだ。2年もご無沙汰していると、いろいろな変化がある。ウェルカムドリンクがなくなり、バスアメニティの質がずいぶんと低下した。また、客室の手入れが行き届かなくなったらしく、シャワーのノズルやヘッドがかなり傷んでいたし、壁も急に汚れた感じがする。節水をはじめたのか、かつては1分でいっぱいになったバスタブは、普通のホテルと同じような水圧になっているし、シャワーの水圧は低すぎるくらいだ。

それでも、シンプルなデザインの客室は、いつでもくつろいだ気分にさせてくれる。周囲が住宅街で、幹線道路からはかなり入った丘の上という環境が静けさを保ち、都市部にいてもリゾートのようなゆったりとした時間の流れを感じる。万座ビーチホテルの小さなバスルームに2日入ったからだろうか、総大理石張りで大きなバスタブとシャワーブースのあるバスルームが一層快適だ。

ウェットのミニバーを備える バスルームの窓が特長

レストラン「ル・パティオ」

この店に来て、「今晩は」とか、「お久しぶりです」といった親しみのこもった挨拶のない出迎えを受けたのは、開業以来初めてだ。これはツアーだからということではないと思う。2年も来なかったぼくが悪いのかもしれない。知った顔はひとりもいなかった。かつての優秀なサービス人たちはどこへいってしまったのだろう? 料理は画一的な「ホテル料理」そのものだった。

見た目の盛り付けはフランス料理みたいに見えるが、味はコーヒーショップの料理と変わらない。ちょうど、地方の披露宴料理のような感じ。残念だった。ワインは、ありきたりの手頃な銘柄か、10万円クラスのグランヴァンという極端な品揃えだ。思うに、リージェント時代からの売れ残りがそのまま、セラに眠っているのだろう。この料理と雰囲気では、グランヴァンを楽しむ気にはなれない。

日本料理「雲海」

万座の同名店と同じく、朝食をいただいたが、万座の勝ちだった。かつて、パレスオンザヒルの和朝食は高く評価していたが、今回は比較的印象がよくなかった。食材が万座の方がはるかによかったのが理由だと思われる。

「ロビーラウンジ」

チェックアウト後、しばらくロビーラウンジでくつろぎながら、開業以来ここで過ごした時間を反芻してみた。過去の思い出がなくてこのホテルを利用したのだったら、それなりに満足しただろう。だが、幾度となく感動的なサービスを提供してもらい思い入れが大きいホテルだから、サービス内容がどんどん削減されていくのを見ているのはとても悲しい。サービスがかわっても、この建物が今も丘の上に建っていて、当時の香りをどこかに残していてくれるのだから、それだけでもありがたく思うことにした。実際、ロビーラウンジのバナナスムージーの味は、昔と変わらない。

その後、ホテルのリムジンをチャーターして、幾つかの観光スポットをまわったあと、空港まで送ってもらった。ドライバーは昔から馴染みの人だったので、安心して周遊ができた。帰りの機内で、ツアーのお値打ちについて考えてみた。値段相応の価値は十分にあったと思うし、個人旅行よりもオトクだ。しかし、ツアー客というのは、なんとなく気分的に肩身が狭い。別に卑屈になっているわけではないが、自分でホテルに直接予約をして利用する時に比べて「住人感覚」が薄かった。特に、よく利用しているパレスオンザヒルでそれを実感した。

また、ぼくにとって個人旅行の方がやはりいいのは、気ままな旅ができるからだ。もう一日いたくなれば、フロントに電話をして延泊を頼み、フライトを変更すればいい。沖縄の帰りに台北に寄りたくなったら寄ればいい。しかし、ツアーの場合そうはいかない。あらかじめ決まった行程を守り、便を遅らせることもできないから、なにかアクシデントがあったら終わりだ。この束縛感がどうも好きになれないのかもしれない。個人旅行でしか味わえない自由さと開放感。一方、面倒なプランニングさえ不要なパッケージツアーの経済性。どちらも捨て難い魅力があると思が、本当の旅の醍醐味はパッケージツアーでは味わいきれない。ちょうど、フレンチレストランの実力がアラカルトメニューにあらわれるように。

Y.K.