1992.06.28
100万ドルの夜景とジンギスカン
六甲オリエンタルホテル Standard Room
楽-3

神戸ベイシェラトンをチェックアウトしてから、六甲山に上がり、ロープウェイを利用して有馬温泉に出掛けた。日帰り利用のできる温泉につかり、夕方になって同じルートで六甲山に戻り、六甲オリエンタルホテルにチェックイン。客室はいかにも昔ながらのリゾートホテルという趣きで、必要最低限の設備しかないが、窓からの眺めは、木立の向こうに開けている100万ドルの夜景。ちょっと角度がよくないが、これさえあれば、この際室内のことはどうでもいい。これで、もし天気が悪く何も見えなかったら、かなり落胆することだろう。

6月とはいえ、日没後は肌寒く感じる。夕食を屋外のバーベキューテラスで初めてのジンギスカンを。風が吹くと少々寒かったので、卓上のバーベキューのコンロで暖を取りながらの食事。このレストランはコンクリートの床に張り出したテントをかぶせたような粗末なつくりで、まるで飯盒炊爨か、キャンプの食事というノリだ。それがかえって楽しい。サービスに当たるのも給食のおばさんみたいな感じの人たちで、なぜか憎めない。お客さんは他に一組しかいなくて、閑散としていたが、これがシーズン中だったら、雰囲気も盛り上がるだろう。

食後にコーヒーを飲みたいと思ったが、すでにどの店も閉まっていて、諦めるより仕方なかった。寝具の毛布にはシーツが片面にしかかかっていないので、直に触わるとチクチクするのが気になった。前日の神戸ベイシェラトンの方が、ホテルとしての設備ははるかに優れているし、最新のホテルらしく、インテリアも洗練されているので、アドレナリンが出て気持ちがパッと晴れやかになる感じ。一方こちらは、のんびりとリラックスし、気持ちを開放することができる。何も考えずにニュートラルな自分を取り戻せる。

最近は都市部でもアーバンリゾートを謳ったホテルが増えてきた。リゾートとは「行楽地」を意味する言葉だから、ホテルを楽しみに行く意味で言えば、ぼくにとってはどのホテルもリゾートホテルだ。だがぼくは、都市部のホテルで過ごしている時は、都市の空気を吸っているせいか、完全に「OFF」にはなれず、どこかで気を張っているが、この日のぼくは「OFF」になれた。この六甲オリエンタルホテルのように、ひっそりとした雰囲気で、気持ちを開放してくれるホテルは、リラクセーションホテルと呼ぶ方がイメージに合うのかもしれない。

Y.K.