1992.05.15
舞うサービス人
フレンチレストラン「アランシャペル」ポートピアホテル
喜-5

2ヶ月ぶりのアランシャペル。いつも通り、そして期待通りのおいしい料理と、いいサービス。この店に来るためだけに神戸に来るのも悪くないと思う。上柿元さんがハウステンボスに行き、アランシャペルさんが亡くなり、サービス陣も料理人も顔ぶれが随分と入れ替わって、質の低下がささやかれている。もちろん、全盛期の勢いも眩さもなくなったことは百も承知だが、その変化の中でこれだけのものを保っていることは、むしろ評価できる。

それも、アランシャペル氏とそのスタッフが、ここ神戸で日本のスタッフにフランスの技法を惜しみなく伝えていったからだろう。また、長い付き合いゆえかもしれないが、いつでもあたたかく迎えられ、注意を払ってサービスされるのだから、満足感が減少することはない。噂されていたアランシャペルからの改名の話しは、マダムシャペルとの折り合いがつき、どうやら消え去ったようだ。

料理は18,000円のイマージュドアランシャペルというコースを注文した。印象的だったのは魚料理で、カレイに煮詰めた甘いソースを使っていたことだ。ワインはCHATEAU PALMER '82、30,000円。ソムリエ和多谷氏のオススメで、今日の料理との相性はとてもよかった。

食後はいつものように山側の個室に席を移し、エスプレッソとデジェスティフを。夜景も美しいが、磨きこまれた腰板のつやもまた美しい。.

1999年のコメント:この店はぼくが自分のお小遣いではじめて友達と行ったフランス料理店です。オープンした年ですから、ぼくは中学生でした。バスケ部の友達がフランス料理を食べてみたいというので、東京から食べに行きました。従業員の皆さんからはどのように見えていたんでしょうね。どう見ても成人しているようには見えなかったはずです。年齢がバレていたら、入れてくれなかったでしょうね。さすがにタバコを吸ったりはしませんでしたが、きちんとワインは注文しました。あまり飲めなかったのを覚えています。

その日はポートピアホテルに宿泊しましたが、レジストレーションカードの年齢欄は空欄にした覚えがあります。翌日はポートピア博覧会を見学してから東京へ戻りました。その時のことは20年近く経った今でもよく覚えています。震災後、このレストランはがらりと変わってしまいました。随分と手頃な値段で料理を出すようになり、全盛期にいたサービス陣もいなくなってしまい、昔を知っている人はガッカリしてしまうかも知れません。改名をした方がよかったのでしょうか。この店にサービス人としてフランスから来ていたベルナールクライス氏が、今はタイユバンロブションで指揮をとっています。当時から動き方がまるで「舞う」という感じでカッコよかったですよ。

Y.K