姜建華二胡コンサート in 酒田

新庄では夜明け前に目覚め、明るくなるのを待ってから、川沿いをランニングしました。濃い靄が掛かり幻想的な川面には、無数の水鳥たちが戯れており、私が駆け抜けると、公園の鳩のように一斉に飛び立つ様子がまた幻想的でした。写真は朝食後にだいぶ靄が晴れてから撮ったものです。

今日のスペシャル体験は、ローカル線の旅。一日で三時間もの間、鈍行列車に揺られての移動となりました。まずは新庄駅から陸羽西線に乗り込み、酒田へと向かいます。

単線の非電化路線は、ただそれだけで都会人には珍しく映りますが、加えて沿線ののどかな風景もまた大きな魅力です。道中に険しい起伏はありませんが、野山を縫って走る気動車は、旅の実感を味わわせてくれます。ここからは「線路は続くよどこまでも」を歌いながらご覧ください。

やがて最上川に架かる鉄橋を渡り、ほどなくして最上川に寄り添うにして並走。しばらく絶景ポイントが続くので、数少ない乗客は川側の座席に移動して車窓を楽しんでいました。

この陸羽西線の愛称は「奥の細道最上川ライン」。なるほどと納得の風景です。

私は最後部に張り付いたり、窓にカメラをぴったりと寄せて撮影したり、にわか鉄ちゃん気分。余目が近づく頃から名峰鳥海山が雄姿を現しました。先月はちょうど反対側の羽後町から鳥海山を眺めていたことを懐かしく思い出します。初めて訪れる街、酒田はもうすぐです。

ピアニストの安宅さん、長時間のご乗車、お疲れさまでした。

酒田駅からはタクシーでホールへ直行。市民会館と聞いていたので、昭和のボロいホールを想像していたのですが、最新鋭の立派な造りにビックリ。映画「おくりびと」にもこのホールが登場し、もっくんがオケでチェロを演奏していたそうです。

ホール内も立派。ステージからの眺めも壮観ですので、今日は一層気分よく演奏できそうです。

今日だけはステージが2回あります。1回目は酒田市内の小学生を招待しての「学校コンサート」。開場から開演までは子どもらしい賑やかさでしたが、いざ開演すると、とても行儀よく演奏を聞いていました。

こちらは本番でソロを演奏中の姜建華さん。私がカメラを向けるとすぐに気付いてカメラ目線に。実によく周囲を見てることがわかりますね。

さて、学校コンサートのプログラムですが、それ用に組まれたものなので、また新たに段取りを頭に入れるのに苦労しました。一日に2回、同じメンバーで違う内容のプログラムをするのは、ちょっと混乱しそうでしたが、1回目は無事に終わりました。

夜の本公演までには数時間の空きがあったので、酒田出身の方に「酒田に行ったらぜひ」と勧められていた「日和山公園」に出掛けたかったのですが、急な宿題を仰せつかり、終始楽屋で作業していました。

そうこうするうちに本公演の開演が迫り、慌てて支度。落ち着く間もなくステージへ。2曲を終えて、姜建華さんの独奏を紹介し、私は一度袖に下がりました。

独奏が終わり、郭敏さんがステージに登場。次は姜建華さんと郭敏さんのアンサンブル「競馬」だな、と思っていたら、「二泉映月」が始まりました。

あ、これ、私も弾くんじゃない?って、今更出ていくわけにもいかないし・・・
姜建華さんにあとで聞いたら、「神田さん、こないなあ・・・」と思いながらも、仕方なく演奏をスタートしたのだそうです。

独奏の後に「競馬」なのは、昼の部の方でした。失敗・・・
ところが、私はエレクトーンの入らない「二泉映月」を聞きながら、今回はむしろこれでよかったのだと感じました。

姜建華二胡コンサートは、アップテンポの賑やかな曲からスタートするので、大抵の場合は最初からお客様もワクワク感に包まれて楽しく進んでいくのですが、今日に限ってはとてもしっとりとした空気。本当に音楽をじっくり聞いているという感じで、「クラシックコンサート」の雰囲気でした。

これだけ集中して聞いて下さるのなら、姜建華さんの真骨頂とも言うべきこの曲を、できるだけしみじみと味わって頂くのもいいと思ったわけです。怪我の功名。私が出番をすっぽかしたことの言い訳ではありませんよ。

ここまでは格調高く、落ち着いた雰囲気で進行し、後半は次第にテンションが上がるようにコントロールしました。その成果はあったと思います。そして、ホールがいいと、演奏の気分も大きく違いました。全員がそれを実感しながら、またワンランクアップした演奏をお届けできた酒田公演でした。

終演後、本来は酒田市内に泊まることになっていましたが、急遽予定が変更になり、今夜のうちに秋田市内へと移動することに。酒田駅から鈍行電車に乗り込んで、2時間弱。秋田のホテルでは美しい金魚が迎えてくれました。庄内振袖金魚って言うそうです。

ステージは楽しいですけれど、移動が大変です。東北は広い!それが実感です。