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ウォルドルフ・アストリア上海オン・ザ・バンド King Waldorf Suite | |
Waldorf Astoria Shanghai on the Bund | 2010.12.30(木) |
Shanghai, China | 喜-5 |
ARCHIVES ・ 1992 |
上海ラグジュアリー ニューヨークの名門ホテルの名を冠したヒルトングループの最高峰ブランドが上海に上陸した。ウォルフドルフ・アストリアは、スターウッドにとってのセントレジスに似ており、贅を極めたラグジュアリーホテルとして世界に展開しつつある。この上海が、米国外では初の新規ホテルであると同時に、アジアで初めてのウォルドルフ・アストリアだ。 立地は非常に魅力的。住所は外灘二号。上海きっての観光スポットであり、世界的に名高い上海のバンドに面している。目の前が黄浦江で、対岸には浦東の高層ビル群を望み、新しく整備された遊歩道には人通りが絶えることがない。バンドには歴史的建造物が建ち並んでいるが、ウォルドルフ・アストリアもその中のひとつ。 1910年に上海クラブとして建てられた壮麗な建物をリニューアルしたヘリテイジビルディングには、黄浦江を望むボールルーム、ファインダイニング、バーラウンジと20室のスイートがあり、夜になると白くライトアップされた外観がひときわ美しく浮かび上がる。 クラシカルなエントランスには常時ドアマンが立ち、訪れる人を恭しく迎え入れている。中から出ようとする時も、人影を察知して、タイミングよく扉を開けてくれる。入口脇にはホテルショップとフローリストがあるが、なんと以前はケンタッキーだったというから驚きだ。 ドアマンが開いた扉を抜けて、階段を上がると旧館ロビーがある。3層吹き抜けで、天井にはアーチ状のトップライトがあり、2階にはバルコニーのような回廊が取り囲む。きらびやかなシャンデリアが3基下がっており、全体を包む豪奢な雰囲気は思わず息をのむ美しさだ。 到着した日はクリスマスツリーが飾られていたが、大晦日のパーティーが終わると、すぐに若い男性たちが模様替えに取り掛かり、花係によって大きなフラワーアレンジメントに入れ替えられた。1階の床は100年前の大理石。段通を敷いた上に置かれたソファもクラシカルなデザイン。ここに座って何時間でも過ごせそうな心地よさである。 2階はボールルームのフロア。円柱の支えやアーチ状の天井などの建築美も楽しめる。大宴会場の他に小宴会場やライブラリー風のファンクションルーム、ロフト風のラウンジスペースなども備えている。 カメラを持って館内を歩いていると、スタッフがにこやかに声を掛けて来て、館内あちこちにある自慢の場所や、撮影スポットなどを教えてくれるという親切ぶり。同じバンドの並びにペニンシュラがあって、そこではさりげなく写真を撮ろうとするだけでスタッフに咎められるのだが、どうしてこうも対応が違うのだろうかと驚かされる。 また、日本人だとわかったとたんに、日本語を話せるスタッフを呼んでくれるなど、スタッフはとことん親切だ。無愛想なスタッフは見当たらず、全員がのびのびと自然な笑顔でサービスしているというのも、ここ上海では奇跡的な光景ではないだろうか。 さて、ここまで紹介してきたのは、旧館ヘリテイジビルディングの様子だが、メインエントランスやフロントカウンターは、新館ニュータワーの方にあり、送迎のホテルカーも新館車寄せに発着する。 正面玄関は裏通りに面しているが、裏通りから直接車寄せに入ることはできず、隣りのビルを回り込むようにして、進入路を入ってこなければならない。まだこれを知らないタクシードライバーがほとんどなので、タクシーの場合は旧館玄関に着けられることが多い。 ニュータワーは新築で、24階建て。華やかな旧館に比べると、いたってシンプルなビルに見える。新館周辺はまだ工事個所が多く、暫定的な部分があるようだ。 メインエントランスにはガラスの回転ドアが取り付けられている。除風室がないので、扉が開く度に館内に風と埃が舞いこむ。そのため、スタッフが一日に何度も掃除をして、真新しい大理石の床を常に光らせている。 床よりも気がかりなのはエントランスホールのシャンデリアだ。クリスタルのバーを組み合わせた立派なシャンデリアが下がっているのだが、風が強い日はドアが開く度にシャンデリアが風に揺さぶられ、カランコロンとウィンドチャイムのように音を立てる。それも穏やかな音ではなく、ウィンドチャイムをひっくり返した時のような派手は響きだ。そのうち部品が落下するのではないかとヒヤヒヤする。 正面玄関から、エントランスホールを抜けると、ロビー空間がある。地階から吹き抜けの大階段と豪華なシャンデリアがひときわエレガントだ。大理石は磨き上げられ、人影の少ないロビーにはかすかなアロマが漂っている。 一等地にありながらも、空間配置はゆとりと風格を感じさせるもの。随所に置かれたフラワーアレンジメントは、どれも高価な花ばかりを使っている。全体にクラシカルなテイストだが、古さはなく、むしろモダンだ。 重厚感のある黒い大理石に縁取られたフロントには、木製のどっしりとしたカウンターがある。フロント業務は新館旧館ともにこちらのスタッフが対応する。スタッフの振舞いは、最高級ホテルの気品を保ちながらも、フランクで人間味のあるタッチ。すぐに顔を覚えてくれるので、全員がコンシェルジュという感じの心強さだ。 新館フロントの周囲には、自由に座れるイスやソファが多数置かれている。それらすべてがインテリアとしても効果を発揮しており、訪れる人々に対し、豪華な中にも居心地のよさを印象付けている。 このロビーラウンジのようなスペースも、フリーのシッティングコーナーだ。フロントからもよく見えるので、待ち合わせや簡単な打ち合わせに重宝する。 新館と旧館を結ぶ通路に沿って、ロビーラウンジ「ピーコックアレイ」がある。通路に面しているため、落ち着かないと感じる人もいるだろうが、座ってみると不思議と落ち着きが感じられ、行き交う人を眺める楽しみもある。アフタヌーンティやニューヨークのウォルドルフで有名な軽食も揃っている。 通路の中央は地階からの吹き抜け。下をのぞけば、ダイナミックな「グランドブラッスリー」が見える。店の中心を貫くロングソファと、それに向き合って規則正しく並ぶテーブルやイス、そして大理石モザイクの床や太い柱。それらがゆるやかなオーバルの舞台でポーズをとっているような美しさだ。 新館から旧館に入ると、時を超えて来たものだけが宿すことのできる風格に圧倒される。新館もじゅうぶんに立派でダイナミックだが、旧館の持つ気品の前には若く見えてしまう。 旧館のエレベータは2か所。連絡通路側にある2基に加え、旧館ロビー内には、上海で最古とされる歴史的なエレベータがある。修繕や改装はしているのだろうが、今なお扉は手動で、日中は運転手により運行されている。そのレトロなエレベータを取り囲むように螺旋階段があり、こちらもノスタルジックな雰囲気だ。 旧館客室階廊下は、建物の造り上、ところどころに段差が残っている。また、床がみしみしと音を立てたり、窓のがガタガタしていたりと、昔の木造校舎のよう。見た目はすっかり新しくなっているが、ふとしたところで100年の歴史を感じさせる。 新館と旧館の連絡通路の上はパティオになっている。簡単なガーデン風のコーナーも設えてあり、気候がよければ、アウトドアパーティにぴったりの場所だ。中央部分には、夜になると明かりが灯り、湧き水のように噴水が出てくる。 今回利用したのは、ホテルの名を冠したウォルドルフスイート。その名はまるで最高級スイートのようだが、20室ある旧館スイートのうちでは最も手ごろ、つまり一番安い部屋だ。最も安くても、その室内は非常に豪華で快適。コストパフォーマンスも含めて、夢のような居心地だった。 ウォルドルフスイートはリビング、ベッドルーム、サンルーム、ベッドルームの4室構成。それぞれはコンパクトで、全体でも70平米に満たない広さだが、使ってみて実感したのは「ちょうどいい」というフィット感。これより広ければ広いで、居心地の印象はまったく変わってくるような気がする。 エントランスドアを入ると、狭いながらもコンソールや傘立てのあるホワイエになっており、中国風のスタンドや蘭の鉢植えが出迎える。内装は中国趣味のある西洋の邸宅風だ。 ホワイエから一歩進むとフローリングのリビングルーム。段通の上に置かれた重厚感のあるソファセット、壁の風景画、クリスタルシャンデリア、フレンチドアの窓と飾りのあるドレープなど、ホテルルームの水準を大きく上回る内装だ。 入口脇のキュリオケースには、滞在中に使えるカップ&ソーサーやグラス、エスプレッソマシンなどが用意されており、隣りの暖炉風飾棚には中国人形、写真立てなどのオブジェが飾ってある。チェックインしたばかりなのに、何年も暮らした部屋に久しぶりに戻ったような感覚だ。飾り棚の脇には、メイド呼び鈴の名残りが見られる。 テレビは壁に埋め込まれており、ブルーレイプレイヤーやオーディオも完備。ブルーレイの映画ソフトもいくつか備わっており、テレビを使ったウェブサービスもある。フラワーアレンジメントはリビングの数か所に置かれており、いずれも新鮮な花が使われている。 ベッドルームは、天蓋付きキングサイズベッドを中央に据えた、落ち着きのある小部屋だ。マットレスの厚さは14インチと厚く、ベッドの高さは75センチに達する。極めて肌触りのいいベッドリネンを使っており、眠りの質は最高レベル。 ベッド両脇には、ナイトテーブル、スタンドライト、額装をシンメトリーに配置しており、ナイトテーブルにはスパークリングとスティルのガラスボトル入りミネラルウォーターが2本ずつと、大きなガラスケースに入ったチョコレート菓子とクッキーが用意されている。 ベッドの前はちょうど柱になっており、32インチのテレビが掛かっている。テレビの下にはエレガントなコンソール。テレビが掛かる柱の両脇がサンルームへの通路で、扉はない。 サンルームには、ふたり掛けソファセットとライティングデスクがある。10平米ほどの空間だが、3方向4面の窓に囲まれ、とても明るい。デスクには内装にマッチしたイスが対面して置かれ、デスクトップには蘭のアレンジメントやキャンディーボックスがある。ソファの脇にあるピンクのスタンドシェードがかわいらしい。 ソファセットには、毎日新鮮なフルーツが運ばれる。この場所で朝食というのもいい感じ。夕刻には毎晩プレステージシャンパンがボトルでサービスされるなど、とにかく大盤振る舞いだ。 窓がたくさんあるのは大変結構だが、眺めという点では魅力に欠ける。旧館にはバンドに面した素晴らしい眺めの部屋もわずかにあるが、それ以外の部屋は隣りのビルの壁や、隙間から上海の街並みを望む程度。眺めを楽しむなら新館高層階の川側がいいが、この部屋は眺めなどなくても、じゅうぶんに楽しめる。 大理石造りのバスルームも非常に魅力的。両開きフレンチドアで仕切られた空間は、約13平米の広さと、居室と同じく320センチの天井高を持ち、バスルームというよりは、裸で過ごすリビングルームだ。ベイシンはダブルで、ドレッシングルームの家具のように洒落ている。ミラーにはクラシカルな装飾がある一方、テレビが埋め込まれているところは最新ホテルならでは。 バスタブは猫足で、窓に面している。だが、同じカテゴリーのスイートでも、部屋ごとに間取りや広さが異なっており、バスルームに窓がある部屋は少ないそうだ。 バスルーム内にも立派なシャンデリアが下がっている。床は大理石のパターン。タオルラックは、中国風デザインだ。照明は明るさを調節できるようになっている。 シャワーブースとトイレはそれぞれ独立しており、エッチングの入ったガラスのスイングドアで仕切られている。シャワーブースにはハンドとレインのシャワーがある。新館客室のトイレには洗浄機能付き便座を取りつけているそうだが、旧館スイートにはない。その代わり、めずらしい木製のふたを使っている。 バスルーム内には、ドレッサーもある。曲線が美しいデザインのドレッサーには、三面鏡が備わっており、クリスタルのスタンドライトが載っている。丸いスツールも上品だ。 バスアメニティは爽やかなレモンの香り。大型のトリプルミルドソープやグリセリンソープを備え、昔のフォーシーズンズホテルのバスアメニティを思い出す。タオルは3サイズが4枚ずつ用意されており、すべてにWAのロゴが入っている。 バスルームの奥には広いウォークインクローゼットがある。クローゼット内にも廊下へ通じるドアがあるので、ポーターにこちらまで直接荷物を運ばせることもできる。2列のハンガーレール、大型の棚、金庫、バゲージ台などが機能的に配置され、使い勝手のいいクローゼットだ。 それぞれの引き出しには、ホテルロゴの入った紙が敷かれている。布のガーメントケースや、木製のシューキーパーなど、あると嬉しい備品が揃っている。 旧館のゲストサービスは、ルームサービス、ターンダウン、インルームチェックアウトも含め、ほぼすべてを燕尾服のバトラーチームが担当する。彼らは常に廊下を周回しており、ドアから顔を出せば、すぐに急ぎ寄ってくる。まだ不慣れで緊張感も残っており、彼らにとって予想外のことを頼んだり訪ねたりすると、即座には対応できないこともあったが、時間を掛けてでも必ず要望に応えていた。 12月31日の夜は、旧館のボールルームで華やかなパーティが開かれており、見事に着飾った男女がロビーにも溢れ、映画よりも映画のような眺めだった。新年の瞬間はバンドの遊歩道で迎えた。世界中から集まった見知らぬ人と新年のあいさつを交わしながら、浦東の特別ライトアップを眺めていると次第に気分が高揚してくる。すべての夢がかなうような気がしてきた。 |
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