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インターコンチネンタル上海浦西 Club InterContinental Room | |
InterContinental Shanghai Puxi | 2010.10.11(月) |
Shanghai, China | 哀-3 |
ARCHIVES ・ 1992 |
ハズレのコーナールーム 雨の上海。今年も芸術祭に招かれて上海を訪れたが、まだ万博の会期中とあってホテルはどこも混雑しており、事務局が用意してくれたのは、比較的新しいインターコンチネンタル浦西だった。市中心部とはいえ、ヒルトンやポートマンがあるエリアとは趣きが異なり、東京でいえば池袋的な混然とした賑わいを見せる街並みにある。郊外列車や長距離列車が発着する上海駅にほど近く、駅周辺は地方からの人々も多いため、何かと気ぜわしい。 チェックインは、事情があって少々面倒だった。自分の部屋がクラブルームの予約になっていることは知っていたが、同行する家族たちの部屋は旅行会社手配のため、レギュラールーム。ホテルは2棟に完全に分かれており、クラブルームとレギュラールームでは棟が違うため、チェックインの場所も違う。 じゃあまたあとでと、年寄りを残して別行動をするわけにもいかず、とりあえずメイン棟の玄関に車を着けてもらい、すべての荷物を下ろしてから、ドライバーを解放した。メイン棟のロビーは広く、スケール感と躍動感のある装飾が目を引く。 正面には銀に塗られた岩のオブジェがそそり立つ池があり、錦鯉たちがのんびり泳いでいる。腹がいっぱいなのか、人に慣れ切ったのか、人が寄っていっても見向きもしない。中国のホテルでは、鯉まで無愛想なのか。いやいや、きっと恥ずかしがりやなだけで、根は純粋なはずだ。 高い天井にはリボンの軌跡のようなファイバーアートが下がっており、正面玄関からロビー全体にまで駆け巡っている。壁に沿って中国風の装飾があり、自由に座れるソファが多数置かれている。 フロントカウンターはロビーの目立つ位置にある。柱を挟んで2か所に分かれており、メンバー用のプライオリティデスクは奥のカウンターだ。このだだっ広いロビーに、スタッフはフロント係ひとりだけとは、なんだか妙な感じだった。 結局、ここで全室分のチェックインが可能ということがわかり、まとめ手続きをした。クラブルームの空きを訪ねると、全室分を変更するゆとりがあるとのことで、1泊460元の追加料金でクラブルームに変更。その手続きに時間を要するらしく、しばらくロビーのソファで待つように言われた。 広いロビーが静寂に包まれているのは、なんとも幻想的。独特の内装とあいまって、まるで竜宮城にでも来た気分だった。あちこちにモダンなフラワーアレンジメントが置かれていたり、上海万博をアピールするコーナーがあったり、待つ間に空間の雰囲気を楽しんだ。 どうしても天井のファイバーアートに目を奪われるが、それ以外にも興味深いデザインはたくさんある。特に照明器具はどれもユニークだった。最近あちこちで見かけるようになった泡みたいな照明もあるが、ここのはかなり大きい。 手続きが済むと、どこからかベルボーイが呼ばれ、部屋まで案内してくれることに。だが、複数室分の大荷物はひとりではとても運びきれない。どうするのかと思いきや、持てない分は自分で持てと言う感じ。これじゃチップはナシだ。 メイン棟のフロントから、正面玄関を横切って、広いロビーラウンジの脇をずんずん進んだら、今度は一度外へ出ろとのこと。雨も降っているのに、年寄りにはキツイだろうと躊躇したが、当の年寄りは気にせずスタスタとベルボーイの後を追っている。 外に出たら、そのまま車道を歩かされた。屋根はなく雨が打ち付ける。しかも、路面が石組み風でデコボコしており、スーツケースを転がしにくいことといったら。やれやれとため息が出そうだが、到着早々珍道中の思い出ができたと思うと、笑いが込み上げてきた。 クラブ棟は、メイン棟に比べると小ぶりだ。不思議なのは、なぜ館内で往来できないのかという点。まだ工事が終わっていないのかもしれないが、ここまで完全に分かれていると、同じホテルという感じがしない。片やクラウンプラザで、もう一方がインターコンチネンタルだというなら分かるのだが。それとも、ここはクラブインターコンチネンタルという名の独立したホテルなのか。 クラブ棟の内装もメイン棟と共通のテイストだが、よりエレガントで重厚感が加わったイメージで、レジデンス風の落ち着きもある。ロビー空間も狭く、それこそまさにレジデンスのエントランスホールだ。天井を見上げると、メイン棟と同じようにファイバーアート照明があり、そこだけわずかに吹き抜けになっている。 クラブラウンジは1階と2階にあり、1階はソファをゆったりと配したリビング風で、係は常駐せず、解放された空間として自由に使える。滞在中の面会や、ちょっとした気分転換に便利そうだ。 2階のラウンジでは朝食からナイトキャップまで、係によるフード&ビバレッジサービスがある。朝は卵料理や麺類を調理してくれるコーナーもある。この棟への出入りに制限はなく、誰でも入ろうと思えば入れるのだが、ラウンジでルームナンバーや名前のチェックはない。 客室へのエレベータは3基。エレベータホールは華やかなウォールアートと、中国風の重厚なイスとが、モダンチャイナのムードを形成する。各フロアの客室数は少なく、利用したフロアにはわずか8室しかない。それぞれの客室が広いこともあるが、建物の規模そのものが小さいようだ。 今回利用したのは、クラブルームとしては最も狭いタイプ。フロアに8室ある中でも、この一部屋だけ特にコンパクトだ。その狭さを埋めるだけのメリットはあるのだろうか。窓が大きくてたくさんある点は、コーナールームならでは。 内装はモダンな中にもゴージャスさが光っており、中国の新しいホテルでは主流のテイストだ。かつては皇帝専用だった高貴な黄色がアクセントに使われている他は、色彩を控え目にしてシックに仕上げている。 ベッドはキングサイズ。マットレスの寝心地も、スレッドカウントの高いベッドリネンの感触も、極めて心地よい。 ベッドボードには美しい柄が刺繍された布地を使っており、クールに偏りそうなモダンテイストを、やわらかく整える役を果たしている。ベッドとの位置関係がぴったり合っていないのも、あえてのデザインなのだろう。たぶん。 ベッドから窓の間には、ふたり掛けソファ、丸テーブル、照明付き収納棚がある。壁と柱に挟まれたコンパクトな空間だ。イスはこの他、窓際にオットマン付きソファがある。 ワークデスクもなく、ソファと丸テーブルがワークスペースを兼ねている。すべてを同じところで終わらせられるのは、ものぐさには便利かもしれないが、やはり不便。長時間デスクに向かうには、このソファでは疲れてしまう。 テレビはベッド前の壁に埋め込まれている。柱に沿って木製ボードと大理石のカウンターが設置されており、ちょっとした物を置くには便利。だが、室内に引き出しはほとんどなく、見えないように収納するのは難しい。 ミニバーは入口ホワイエに。ティーセットは器も充実しているが、ネスプレッソマシンは、カセットがひとつ20元と有料だ。無料のミネラルウォーターは2本用意されている。 ウォークインクローゼットはミラーの引き戸で仕切られており、石のバゲージ台とハンガーレールを備える。ピンクと白の2色のバスローブもクローゼットの中。シルクのような肌触りだ。 バスルームは石造りで、床から天井までの大きな窓に面している。ベイシンはひとつで、ガラスカバーのペンダントライトが印象的だ。 窓が大きいのはいいのだが、ハーフミラーなので、外が暗い時はほとんど何も見えない。日中は外から丸見えなのでブラインドを下ろしたが、そうすると窓のありがたみは消えてしまう。 バスタブとシャワースペースがひとつになったウェット空間も石造りで、バスタブ脇はミラー張りだ。バスタブはやや小ぶり。給湯が遅い上に、ぬるい湯しか出てこない。しかも、たまに赤水だったり砂混じりだったり、まったくいい印象がない。レインシャワーも弱々しい。ハンドシャワーは棒状で使いにくかった。 バスアメニティはインターコンチネンタル共通のエレミス。細かいアイテムは紙のボックスにひとまとめになっている。タオルは3サイズが3枚ずつで、使い心地はいい。清掃は行き届いているが、滞在中のアメニティ補充はいいかげんだった。 トイレはドアで仕切られ独立しており、新型の洗浄機能付き便座を備えている。 内装はともかくとして、全体的に施工が粗雑。部品がずれたり浮き上がっているのは、ざらに見られる。パテや接着剤の使い方も乱雑で、小学生の工作よりも出来が悪い。新しいホテルだけに、それらがとても目立っている。 ウェルカムフルーツはガラスの器で。赤いナプキンが添えられていたが、この部屋にはどうも彩りや温もりが足りない。 窓からは上海の古い暮らしぶりが目の前に広がっている。家々ばボロボロだけれども、この冷たい部屋よりも、心にしみる生活があるようにも見える。 物売りの台車を引いたおじさんが、子どもたちの前で自転車を停めた。ぎっしりと詰まった品々が何なのかまでは部屋からは見えなかったが、座り込んで熱心に見入る子どもたちの姿に心奪われた。もし、彼らがこのホテルを見上げたら、何を感じるのだろう。 のちに、家族の部屋も覗いてみた。そちらはクラブ棟の標準ルームだが、こちらよりもふたまわりほど広く、使い勝手もいいように見えた。窓際の丸いバスタブ、大型ワークデスク、ロングソファ、機能的なレイアウトなどなど、ずいぶんと魅力的だ。コーナールームはレアではあっても、ハズレ部屋かもしれない。 屋内プールはメイン棟にあり、低層階用エレベータを使ってアクセスする。宿泊客は無料で利用できる。 外にはウッドデッキがあるが、この季節は何も置いていない。夏なら日光浴が楽しめそうだ。 ロッカールームには大きなバスも備わっている。プールもサウナもガラガラ。レストランがどうかは見なかったが、全館ガラガラ。中心部のホテルはどこも活気に溢れているだけに、ここの静けさが妙だった。まだ新しいからなのか、立地条件なのかはよくわからないが、安いうちが泊まり得だ。 |
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