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パークハイアット上海 Park Deluxe Twin Room | |
Park Hyatt Shanghai | 2009.11.04(水) |
Shanghai, China | 喜-4 |
ARCHIVES ・ 1992 |
天空に囚われて 高層ビルが林立する上海浦東地区で、今のところ最も高い建物が上海フィナンシャルセンターであり、パークハイアット上海はこの世界的に有名なビルに入っている。このビルが完成するまでは、グランドハイアット上海がある隣りの金茂タワーが、上海一の高さを誇っていた。この時点でパークハイアット上海は世界で最も地上から高い場所にあるホテルであり、香港にザ・リッツ・カールトンが開業するまで、その座は変わらない。 外観は栓抜きとも揶揄されるユニークなフォルム。仏塔から着想を得た複雑かつ派手な金茂タワーに比べると滑らかに見えるが、実際にはこちらも単純な構造ではない。ホテルより下にはオフィス、最上部には上海観光の目玉となっている展望室がある。ビル内に入るにはセキュリティチェックを通る必要があり、ホテル入館の際は犬によるチェックもある。空港のように手荷物をいちいち機械に通す面倒も避けられない。 セキュリティの手間は仕方ないにしても、エレベータ故障の災難には辟易した。地上から87階のロビーまで通じているエレベータは4基。そのうち3基が故障し、残る1基だけがピストン運転をしていた。その影響で91階と92階にあるレストランは休業。従ってエレベータを使うのは宿泊客だけだというのに、長い時には10分以上待たなければならなかった。 やっとのことでロビー階へと到達した際、スタッフから労いや詫びでもあれば救われるが、極めて無愛想な態度に接すると、やるせなくもなる。これまで国内外でさまざまな無愛想を見て来たが、ここはダントツ筋金入り。上から目線もここまで来ると挑発行為だ。なのに憎めないのは、仕事ぶりがミスだらけだからか。それに、こちらがちょっと強気に出ると、たちまちしぼむところも可愛い。 内装はシンプルモダンだが、さりげなくエレガンスが薫る。ビル建築としての施工も非常に丁寧で、隅々までトップクオリティの出来栄えを感じさせる。どのフロアも天井が高く、窓一面にガラス窓が広がり、空中回廊のようだ。チェックインはロビーラウンジ前のカウンターで立ったまま。インルームチェックインが標準だと思っていたので、いい気はしなかった。 ロビー階にはティーラウンジとオールデイダイニングがある。ラウンジの窓からは金茂タワーのてっぺんを同じ目線に眺める。オールデイダイニングでは毎日の朝食がブッフェスタイルで提供されるが、品揃え、品質ともによかった。 87階ロビーとミーティングルームが並ぶ86階はユニークな形状の階段で連絡している。このホテルではすべてがアート作品であり、そのメンテナンスにも努力が注がれている。 ロビー階にはビジネスセンターの併設された小さなショップがあり、ホテルオリジナル商品から、上海のハイセンスなアイテムまで、趣味のいい品揃えをしている。ここを担当しているのは、妊娠中のスタッフ。かなり腹が大きくなっており、本来は別のセクションに勤務していたものを、体をいたわって一時的に楽な業務に就かせているものと見受けた。 あれこれと買い物をして、帰り際に「おめでとう」と言いながら視線を少し落とすと、はにかんだ笑顔を返してくれた。パークハイアット上海で初めて見る人間らしさだった。ひょっとすると、働いている人間は彼女だけで、あとは全員ロボットかも。いやいや、ロボットが接客をしているホテルは宇宙広しといえどもニューオータニだけのはずだ。 さて、客室はというと、79階から85階までと、88階にある。うち、88階は高級スイートのフロア。最高級スイートの部屋番号は、ずばり8888である。エレベータホールもひとつのアート空間だ。 客室階廊下は、シックな邸宅風。エレベータトラブルにより、宿泊予約も打ち切られているので、部屋もあまり埋まっていない様子。全館に静けさが漂い、引き締まった空気がまた心地よい。 85階には客室のほかスパもある。客室用エレベータのボタンは10層分だけ。この少ないフロアにすべての客室を配置できるのは、ビルの断面積が相当に広いからである。 88階の廊下は、他の階とは異なっており、ライブラリーを兼ねている。美術館に併設された図書館といった趣きだ。各廊下に掛かるアートもスケール感のある大きさで、照明効果も加わり、インパクトが強い。滞在中は、度々館内の散策を楽しんだが、ロビー階以外では、一度も客と顔を合わせることがなかった。朝食時のレストランは賑わっているのだから、客がいないわけではないが、日中は出掛けているのかもしれない。このホテルを楽しむなら、人のいない日中が狙い目のようだ。 今回利用した客室は81階のコーナーにあるデラックスルーム。コーナーと言っても、建物は四角ではなく六角で、この階でコーナーと言える位置にある部屋は8室、うち2方向に窓があるのは4室のデラックスルームのみ。フロア断面は高層階になるほど狭くなるので、低層階の方が廊下から窓までの距離は長いのかもしれないが、詳しいことはわからなかった。 コントラストのある廊下の雰囲気から一転、客室内は白を基調とした明るく透明感のある内装を施している。窓も大きく、たっぷりと日差しが入る。控え目な色調や、つや出し塗装の家具などは、フォーシーズンズホテル丸の内東京のテイストに似たところがあり、上質なレジデンスといった趣きだ。 カーペットや壁紙はアイボリーに近い明るい色。それに対しベッドボードや間仕切りのスリットには黒檀風の深い色調を用いてコントラストをつけている。ベッドはツインタイプ。マットレス、ベッドリネン、デュベともにまったく申しぶんのない心地よさだ。 ベッドの脇に床から天井まで届く大きな家具がふたつ並んでいるのは、片方がコーヒーマシンとティーセットで、もう片方が客室内金庫。大きな家具だがそれだけしか収納されておらず、インテリアのアクセント的な役割が大きいようだ。ベッドサイドには丸いサイドテーブルがあり、毎日新鮮な果物がセットされる。 コーヒーマシンはカセット式。紅茶や中国茶は数種類が用意されており、器もいい感じだ。ミニバーはこの場所でなく、バスルーム入口の脇にあって、各種ソフトドリンク、アルコール、スナックと一緒に、豊富なグラス類を備えている。 ベッドの向かいには白いピアノフィニッシュのボードをはめ、テレビキャビネットとワークスペースを設けている。ボードの中ほどにはスリット状のミラーを取り付けてある。 ベッドの前、部屋の中央にはぽつんとソファが。なぜこの場所にと思ったが、次第に物語を感じさせる配置に見えて来た。座ってみると、驚いたことにこのソファは回転する。 ワークデスクはバウムクーヘンの断片のような形状で、壁から迫り出している。デスクに引き出しはなく、ディレクトリーなどはマガジンボックスに立て掛けて置いている。メモ用紙も洒落ているが、添えられているのは鉛筆だけで、室内のどこにもペンは備えていない。デスクにスタンドライトはなく、天井からのダウンライトと壁のブラケットが照らす。室内照明はハロゲンが主体。スイッチは一括だが、明るさの調節はできる。ベッドサイドのペンダントやスタンドがユニークだ。 大きな窓のそばには、白いカウチソファがある。ふかふかのクッションを背中に寝そべれば、上海を空から眺めるという感覚が味わえる。特に夕暮れは息をのむ美しさだ。 大きな窓はガラスが垂直にはめられているが、ベッド脇の小さな窓は傾斜がついている。そこからは金茂タワーや明珠塔が見え、まるで風景を絵葉書ように切り取ったかのような眺めだ。窓掃除は頻繁に行われているようだが、なにしろ巨大なビルなので、なかなか全体をクリアに保つのは難しいのだろう。今回利用した部屋の窓はひどく汚れており、黒い筋がいくつも付いている。加えて、室内側も手垢だらけ。清掃はもっと熱心におこなう余地がありそうだ。 窓が汚れているにしても、このホテルからの眺めは圧巻だ。200メートル級のビルがミニチュアのように見える。道を走る車はまさに豆粒だ。だが、すでにここより高いビルの建築工事が始まっており、そう遠くない将来に上海一の座を譲ることになる。その新しいビルの高層階にもホテルが入居し、香港のザ・リッツ・カールトンをも抜いて、世界一地上から高いホテルのレコードを大幅に塗り替えるという。 居室がカーペット敷きなのに対し、ホワイエ部分はフローリングだ。ホワイエにはクローゼットがあるだけだが、そこも1室と呼べるほどの広さがあり、ちょっとしたギャラリーやブティックの様相さえ感じる。 間仕切りのスリット前では中国テイストの木製イスが風格を漂わせており、身支度をしながら着る服をどれにするか迷ったり、靴を選んだりする時を待ち構えている。クローゼットは両脇が引き戸になっており、その部分は棚とハンガー掛けに。中央はオープンラックで、革製の引き出し型ボックスがふたつ置いてある。室内に引き出しはこれだけ。あとはオープンなので、このホテルに泊まる時は、この内装での陳列に耐えられない代物を持参してはならないというわけだ。 明るい居室に対して、バスルームは瞑想にも適しそうな雰囲気。じゅうぶんに広く、そして上質だ。ベイシンはダブル。その下の棚にタオル類の入ったボックスがある。タオルには2007年8月の印があり、すでに使い古されて黒ずんでいる。せっかくのホテル全体の印象を引き下げる要素となり残念。 ベイシン脇にはハンガーレールとバゲージ台を備えており、こちらにはルームウェアやアンダーウェアを整理するのに向いてる。ランドリーの袋や伝票もここにある。 バスタブとシャワースペースは一体となっており、ベイシンエリアとはガラスで仕切られている。日本の入浴スタイルをモチーフにしており、洗い場にはイスと桶を用意してある。マット仕上げの石に囲まれた空間の中に、斜めに配した大型バスタブがスポットライトを浴びてひときわ白く輝く。バスタブの縁の一部に設けられたネック&ハンドレストは、見た目のアクセントだけでなく、実用的だ。 給湯は超高水圧。あっというまに満水になり、滝のように溢れて流れ出す。最初は赤水が出たが、すぐに透明な湯へ変わった。 上海の水が薄茶色なのはバスタブに湯を張るとよくわかるのだが、ここの湯は透明に見える。何か特別な浄化装置を備えているのだろうかと感心したが、翌朝になってバスタブの縁を見ると、かすかに青く染まっていた。おそらく着色料を使って調整したのだろう。ブルーレットならぬ、ブルーバスか。 シャワースペースには、桶用の下蛇口、ハンドシャワー、大型レインシャワーがある。ここのレインシャワーは格別に心地よい。高い天井から高水圧で降りそそぐシャワーは、まさに熱帯のスコールだ。 バスアメニティは、それを使いたい場所に置かれていて便利だ。シャワースペースには、シャンプーやソープ、ボディスポンジなどが、曲げわっぱに入って置かれている。 ベイシンには、歯ブラシキットやコットンセットなどが、ブラウンのボックスに包装されて、ぴったりのケースに収まっている。まるでお菓子詰め合わせのよう。 無料のミネラルウォーターはVOSS。バスアメニティのブランドはアロマテラピー&アソシエイツ。ナチュラルハーブの香りが心地よい。 トイレは独立しており、上海ではまだ珍しい自動で開閉するふた付きの洗浄機能付き便座を設置している。ベイシンもユニークだ。 清掃とターンダウンと、一日二回、部屋には無料のお菓子が届けられる。内容は日によって異なるが、重複することもあった。 日中はフルーツタルトやブラウニー、夜はマカロンと、室内のティーセットとともにくつろぎのひとときを。このホテルにはクラブラウンジのようなリビングスペースがない分、ありがたいサービスだ。 客室は非常に快適で、清掃も中国のホテルとしては概ねよく行き届いていた。これほど広く複雑な部屋を、毎日きちんと整えるのは容易でない。また、高層ホテルは客にとっては魅力だが、働く方は大変だ。地上との往来ではエレベータ待ちで時間がロスになるだろうし、長い時間高層階で働くこと自体もストレスになるかもしれない。だからみんな無愛想なのだろうか。 85階にはスパ施設が整っており、プールやジム、サウナなどは無料で使える。ヨガのできるパティオもあるらしいが、それは利用しなかった。1階コートヤードでは毎朝、太極拳が体験できるとも聞いたが、参加するチャンスがなかった。 その代わり、時間が許す時は屋内プールで過ごす時間を楽しんだ。このフロアでも一度も他の客と顔を合わせることはなく、まるで自分の部屋の設備のような感覚で使えたのはラッキーだ。常駐の係がいるものの、こちらが用を頼まない限り干渉してくることはない。必要な時はドリンクやおしぼりなどを持って来てもらうことができる。 プールの枠は石造りで、内側の底面はモザイクタイルと、立派な仕上がりだ。プールとして思えば、さすがに天井が低い感があるが、こればかりは仕方がない。プールサイドはフローリング。プールと並んでジャクージもあるが、あまり温かくはない。 プールサイドにはオリエンタルスタイルのリラクゼーションスペースが設けられている。85階からの眺めと暖かい日光を楽しみながら、静かな時間を過ごせる。ライトアップされる夜の雰囲気もいいが、明るい日中の方がより快適に感じた。 チェックアウト日になって、やっとエレベータが正常に動くようになった。滞在中、エレベータのことでは、何度となく不便を感じたものだ。半ば天空の空間に閉じ込められたようなものだったので、人のいないパークハイアットを満喫できたと思えば、それも悪くなかったかもしれないが。 91階と92階のレストランも間もなく再開。超高層階ながらも、吹き抜けの高い天井と一面の大きな窓を持ち、躍動感溢れる空間だ。ここには東京のニューヨークグリルのように活気と賑わいがよく似合う。前の週に一度食事を振舞われた時は、高い割には美味しくもないと感じた。だが、この雰囲気は一度味わう価値があるようにも思う。 |
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