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セント レジス ホテル 大阪 Grand Deluxe Suite | |
St. Regis Osaka | 2011.07.02(土) |
大阪市中央区 | 怒-1 |
ARCHIVES ・ 1992 |
経験不足 大阪にラグジュアリーホテルがオープンした。日本初のセントレジスに期待を寄せつつも、正直、また?もういらんのちゃう?と思った。 そもそも、大阪には高級ホテルが有り余っているのではないか。ザ・リッツ・カールトン、阪急インターナショナル、リーガロイヤルのプレジデンシャルタワーズ、微妙なところで帝国ホテルとウェスティン。これらの先陣たちの実質的な宿泊料金と空室状況を見る限りでは、供給過剰の感が否めない。 そんな中で、本来のセントレジスが持つ美意識やサービススタイルをどこまで維持できるのか。道は険しいに違いないが、ぜひとも奮起して本領を発揮してもらいたいものだ。 セントレジスは、スターウッドが手掛けるラグジュアリーホテルブランド。その名はニューヨークの名門超高級ホテルに由来し、その伝統的でエレガントなテイストは、今や世界中に広がりつつある。日本では大阪よりも先に東京に開業する予定だったが、森トラストとスターウッドの折り合いがつかず、開業準備途中でコンラッド東京に鞍替えした経緯がある。 セントレジス大阪が入るのは、積水ハウスが手掛ける本町ガーデンシティ。27階建て130メートルの高層ビルで、石造りの風格ある外観が印象的だ。御堂筋沿いで地下鉄本町駅直結の好立地は、ホテルにどれだけ味方してくれるだろうか。 この日はタクシーで到着したが、早速ドアマンの振舞いに疑問を感じた。通常、ドアマンが到着した車のドアに付いたら、まず、その車に乗っている客のアテンドをするものだ。この時のドアマンは、ドアに付いたまではいいが、荷物の手伝いもせず、客を降ろしたばかりのタクシーに乗り込もうとする客を優先した。 そのまま車寄せで突っ立ったまま待ち、やっと手の空いたドアマンに館内へと案内されることに。正面玄関車寄せは、狭いながらも造りの雰囲気はいいが、車の進入方法など、使い勝手はかなり悪いようだ。 正面玄関を入ると、銀の枝にクリスタルの葉が茂るオブジェが出迎える。スポット照明を浴びて眩しく光る木は、神秘的な美しさを湛えている。 1階は、正面玄関の他、簡単なシッティングコーナーとベルデスク、ロビー階までのエレベータホールの他、ブラッスリーがある。ブラッスリー以外は、邸宅風に空間を小さく区切っており、落ち着いた雰囲気だ。ドアマンには、このままレセプションデスクまで案内されるのかと思いきや、ベルデスク脇のイスに座って待つように言われた。 言われた通りに座っていたが、なかなかその次のアクションがない。そうこうしているうちにも、後から来た別の客を案内していくではないか。さらにしばらく待って、やっと声が掛かり、エレベータで12階へと向かった。 12階はビルの上ながらも天井が高い。1階はレジデンスのようだったが、こちらは古城の趣き。1階のコンパクトさが12階のスケール感を助長しているが、実際はそれほど広い空間ではなく、特にうろうろと見て回るところもない。 レセプションデスクは2か所。それぞれイスが添えられ、座って手続きをする。ここまで来たが、後から到着した客が先にチェックインしていたので、後ろで座って更に待つことに。ここで、係から詫びの言葉が一言聞ければ気分も晴れようが、知らん顔されたままではだんだんと腹が立ってくる。 レセプションと同じ12階には、レプリカの暖炉を囲んだシッティングスペース、ルーフトップガーデン、レストラン、バーなどがある。通路の途中にもイスやテーブルが置かれ、座るところは割と多く用意されている。 やっと手続きが済んで、また別の係によって部屋に案内されることになった。さんざん待たせていることを引き継がないので、今度の係からも気の利いた一言が出てこない。アサインされた部屋に着き、係がキーをドアにかざすものの、ロックが解けない。何度やっても同じだ。困惑した係は、しばらくお待ちくださいと言い残して、どこかに行ってしまった。ドアの前に荷物とともに放置されるとは、なんとも情けない気分だ。 次に案内された部屋では、ルームキーは問題なく開いたものの、ベッドを見ると「同じベッドリネンでメイクしました」の札が置いてあった。これはステイ清掃しかしていない部屋なのか、単に札を間違えたのか。係にそれを指摘しても、どうにも反応が鈍くてイライラする。 この場合、仮にリネンは新しく、札だけが間違っていたとしても、すぐに新しい部屋を用意するべきである。起こしてしまったミスは仕方ないが、起きてしまった以上は、ホテルの格式にふさわしい対応を見せてほしいもの。言い訳は新しい部屋でゆっくり聞いてやってもいいが、先にくどくどと言い訳すればホテルの立場はどんどん悪くなるだけだ。 結局、こちらが強く新しい部屋を要求して、しぶしぶ応じたという格好。掃除に1時間掛かるとのことで、知らない人が使ったシーツのままかもしれないベッドのある部屋で、迎えが来るまで待つことになった。 一連のサービスからうかがえるのは、最高級ホテルにおける業務経験の不足だ。単に丁寧だったり愛想がいいだけで務まるほどラグジュアリーホテルの伝説的サービスは簡単ではない。豊富な経験や知識とともに洗練されたセンスが必要なのである。まだまだ素人の域を出ない現状のサービスでは、セントレジスの真価は伝えられないだろう。 それから約1時間の後、やっと部屋に落ち着くことができた。部屋のカテゴリーはグランドデラックススイートだが、入口扉には「Ume Suite」と表示されている。面積は84平米。細長いリビングとコンパクトなベッドルームからなる、スタンダードスイートだ。 ホワイエを抜けるとリビングルームがある。天井高は310センチと高く、窓も大きく取られており、天井のカーテンボックスには間接照明が埋め込まれている。デザインは流行のGAによるもの。あちらもこちらもGAやスーパーポテトばかりでいささか飽きるが、それだけインパクトがあり印象にも残るということだろう。 リビングには窓を背にした超ロングソファが窓を背にしてセットされ、両脇にはサイドテーブル、前には楕円形のローテーブルを添えている。淡い色の一人掛けソファもエレガントだ。ミニバーキャビネットは金色の扉が華やか。シャンパンを含む充実した飲み物、エスプレッソマシンなどを備え、茶器も見栄えするものを使っている。 ソファの向かいにはGAお得意のスライドドア付き飾棚があり、50インチのテレビもここに設けられている。棚は照明付きで、壺などのオブジェが効果的に配置されている。その脇には、二人用のダイニングテーブルセットがあり、ちょっとしたティータイムやルームサービスに便利だ。 リビングの奥はベッドルーム。キングサイズベッドが窓に足を向けて置かれており、ベッドボードの上には印象的なミラー付きアートワークが飾ってある。ベッドボードはレザー張りで、両脇のナイトスタンドは鼈甲色のガラス製。タリフの写真では、ベッドにクッションが添えられているが、実際にはどこにも見当たらなかった。 マットレスの感触やベッドリネンの質は素晴らしいが、メイクの仕方が悪いのか、足元に締めつけられるような窮屈さがある。ナイトテーブルには照明や空調などをコントロールするパネルがあるが、タッチ式で使いにくい。ベッド周辺のコントローラは、寝ぼけていても直感的に使えるものが望ましい。 ベッドと窓の間には、肘掛のないイスがふたつと丸テーブル。テレビは窓脇のキャビネットに載っている。照明は明るさを調節できるが、最も明るくしても少々物足りない程度だ。また、照明スイッチには青いインジケータが付いているのだが、それが夜間に眩しくて目ざわりだった。 ワークデスクはベッドルームの片隅の窪みに設置されている。ドレッサーを兼ねており、これもGAお得意のポップアップミラーが取り付けてある。イスもドレッサーにこそお似合いで、ワークデスクとしては中途半端な印象だ。 バスルームは淡い石と黒い石のコントラストが活きているだけでなく、照明も効果が高い。ベイシンはダブル。下段が照明付きのタオル棚になっており、ふかふかのタオルがくるっとたたんで置いてある。 バスタブはベイシンの背後。バスルームに窓はなく外光は入ってこないが、石に囲まれた空間も悪くない。バスタブ脇にはテレビも備えている。 シャワーブースとトイレはそれぞれ独立している。シャワーブースにはレインシャワーとハンドシャワーの他に、水圧の高いボディシャワーが備わっており、これがなかなか心地よかった。トイレは1か所のみで、エキストラトイレはない。 バスアメニティは漆風のボックスにまとまっている。シャンプー類はSOTHYS。スイート仕様のレザーは5枚刃だ。タオルはエキストララージ3枚、ラージ2枚、フェイスとウォッシュが3枚ずつ。もちろんバスローブも備わっている。 客室全体の質感は高く、モダンとエレガンスがほどよく溶け合っているにもかかわらず、なぜか窮屈な印象がつきまとう。色彩なのか、ホテル全体の凝縮感なのか。はっきりとした理由はわからないが、深さとか奥行きとか、目に見える空間の広さだけではない何かが欠けているのだ。 家具はまだ開業10ヶ月だというのにすでにボロボロ。客層が悪いのか、清掃業者が悪いのか知らないが、先が思いやられる。 このホテルにはプールやサウナがない。インターナショナルラグジュアリーホテルとして、これら設備に欠けるのは残念だ。14階のフィットネスジムは24時間いつでも自由に使える。鏡の効果で広く見えるが、実際はかなりコンパクトだ。機材もさほど多くない。 朝食は素晴らしかった。新鮮なフルーツ、作り立てが配られるスムージー、どれも魅力的なパンなどなど。ブッフェながらも高品質だ。しかしサービスはなんとなくだらしない。客が席を立っている間に、かまわずコーヒーを置いていく。よいホテルは、必ず客が席に着いているタイミングで飲み物をサービスする。 |
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