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ホテル京セラ Deluxe Twin Room |
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Hotel Kyocera | 2010.11.29(月) |
鹿児島県霧島市 | 怒-1 |
ARCHIVES ・ 1992 |
不自然な模様替え ホテル京セラは、鹿児島空港からもアクセスしやすい霧島市隼人町にあり、その名の通り、京セラが手掛けているホテルである。開業は1995年。巨大アトリウムを持つ黒川紀章によるユニークな建物は一度見れば忘れられない。2001年にアネックスをオープンし、客室数は328になった。 この日は、多くの荷物とともに一行で到着した。ちょうど夕暮れ時で、早く部屋に落ち着いて、食事をどうするか考えたいところだった。 このホテルにはベルアテンダントがいるが、到着時のサポートはスムーズとは言えなかった。カートを用意するよう頼んでも反応が鈍く、車から荷物を下ろすのも客任せで、玄関に突っ立って眺めているだけ。ならば、最初からベルなどいない方がマシである。 このテンポ感の違いはフロントに行ってからも続き、ここでは世界にあまたあるホテルに通ずる常識よりも、京セラのセオリーが優先されているように感じた。経営の手本のように言われている京セラだが、ホテルに関してはこの程度かというのが率直な感想だ。 案内された部屋はスタンダードツインルーム。予約はシングルで取られていたが、何泊もするのに狭いのは不便だと考え、自腹で追加料金を払い、ツインに変更した。面積は約30平米。横幅が広く、ゆとりのある間取りである。ホワイエから居室の間に内扉もあり、落ち着けそうだ。 内装はナチュラルな木目にブルーグレーのファブリックと、90年代らしいテイスト。家具のデザインにはリゾートの趣きも感じられる。天井の間接照明により部屋全体が明るいが、蛍光灯色がなんとも安っぽいのが残念。 バスルームも広く取られている。シンプルだが清潔感にも申し分なさそうだ。ドライヤーは壁に備え付け。全体にオフホワイトが基調になっている。バスタブも大型だ。シャンプー類は大型ディスペンサーボトルに入っている。 だが、この部屋には決定的な違和感があった。それはベッドの配置である。2台のベッドが左右に広く分けて配置され、2台のナイトテーブルが中央に並べてある。どう見ても不自然ではないか。 額の位置やベッドボードの形状から推察して、この2台のベッドはハリウッドツインとして中央に寄せるのが妥当だろう。このような乱れたバランス感の中で過ごすことは耐え難く、自ら配置を戻すことにした。 ハリウッドツインにして、ナイトテーブルを両脇に分散したら、すっかりバランスがよくなった。これで落ち着ける。と思ったら、ひどい汚れを発見してしまった。寄せ合っていたナイトテーブルの側面は、ビールやコーラをこぼしたまま放置され、虫や埃を巻き込んでミイラのように固まっているし、カーペットもひどく汚い。 フロントに苦情を言い、新しい部屋を用意するよう頼むと、改めてデラックスツインに案内された。その際、スタンダードとデラックスの差額を要求されたが、この場合、それを支払う気にはなれず、マネジャーと交渉することになった。 ホテルが言うには、部屋が汚れていたにしても、それは勝手に配置を変えたことで見つかったものだから、ホテルに落ち度はないとのこと。 確かに配置を変えたが、元来あるべき状態を乱したのではなく、戻したに過ぎず、勝手に配置を変えてバランスを崩したのは、むしろセンスに欠けるホテルの方である。それに、いかなる経緯で見つかったにせよ、本来汚れていてはならないところが汚れていたのだから、言い訳は通用しない。 清掃不行き届きを棚に上げ、料金にだけ着眼して差額を請求する。それが世に言う優れた経営なのだろうか。そんな考えなら、ホテルを営む資格などない。マネジャーと交渉した結果、追加料金は不要となったが、なんとなくスッキリとしなかった。 しかし、長く滞在している間に、スタッフたちの気心も知れて来て、徐々に親しみが湧くようになった。ひとりひとりを人として見れば、実に魅力的な人ばかり。 なのにその持ち味を発揮できないのは、京セラの傘下にあることにより、競争や危機感と無縁で、積極性がむしろ邪魔になるような雰囲気があるからではないかと推察する。ある意味、サラリーマンの枠に閉じ込められているという感じだろうか。せっかくサービス業に就いたのなら、思い切りサービスしてみればいいのに。そう考えると、気の毒にすらなってきた。 さて、デラックスツインの面積は約40平米。スタンダードよりもさらに横広になり、窓は2面に増える。ベッドは窓に足を向けて置かれ、手前にエリアにはソファセットのあるリビングスペースを配置している。 天井の間接照明もスタンダードと同様だが、室内で過ごす時は消灯しておいた方が落ち着いた雰囲気となる。テレビは2面の窓の間に置かれているが、大型のキャビネットに対しテレビが小さく、こちらもバランスが悪い。 ベッドサイズは122センチ幅でハリウッドツインスタイル。寝具はカバーと一体となったものを使い、マットレスも旧式。空調の温度を上げても寒かったので、両方の寝具を重ねて使用した。 ライティングデスクは、ホワイエからの通路と壁に挟まれた窮屈な窪みに設置されている。デスクというよりドレッサーという感じだが、他にデスクの役を果たすものはないので、デスクワークはここで行うことになる。室内にはまだゆとりがあるのだから、独立型のデスクを設置することもできたと思うが。 リビングスペースには、リゾート風のソファがある。これだけ見ると、ミクロネシアの古びたビーチホテルを思い起こす。 バスルームは広い。車椅子での利用にも気遣った設計で、トイレには補助金具が設置されていたり、バスタブの縁も低くするなどの工夫が見られる。 ベイシンは1面で、ライティングデスク同様、壁に囲まれた窮屈な場所にある。隣はフォーンブースのようなシャワーブース。内部は狭くかなり使いにくい。そして、バスルームは終始凍えるような寒さのままだった。 バスアメニティはスタンダードルームのアイテムに加え、バスローブとアロマエッセのミニボトルシャンプー類が加わる。 デラックスルームは高層階に位置し、いずれの部屋からでも景色がいい。遠くに桜島が見える部屋もあり、噴煙が風になびく様子を眺めることができる。 本館の客室階廊下はすべてアトリウムに面しており、なかなかダイナミックかつスリリングだ。下層階には修学旅行生たちが宿泊しており、手すりによじ登ろうとして先生に叱られたり、興奮して大声を発するのもよく響いていた。 アトリウムに面した廊下は弧を描いており、宇宙船を彷彿とさせる雰囲気もある。先端部分はガラス張りになっている。 アトリウムの下にはガラス製のチャペルがあり、その周囲には水を配し、ロマンチックな雰囲気。フロントロビーは、このチャペルよりひとつ下のフロアにあり、ロビーの天井の上にチャペルが載っている格好だ。 エレベータは3基。いずれもアトリウムを望むシースルータイプだが、運転速度が遅い上に反応が鈍く、いつでも待たされる。いっそ階段を使いたいと何度思ったことか知れない。 アトリウムを下層階から見上げると、また一味違った眺めに感じられる。アトリウムの空間を感じながら食事や喫茶ができれば楽しいだろうが、残念ながらそうした施設はない。 チャペルの内部に自由に入ることはできないが、扉は開放されており、そこから内部の様子を見ることができる。修学旅行の女学生たちが、かわるがわる記念撮影をしているのが印象的だった。 壮大なアトリウムに比べると、ロビーは圧迫感がある。カーブしたフロントカウンター前には多数のソファが規則的に並び、空港ラウンジのような雰囲気だ。 ユニークな外観は、高い建物の少ないこの近辺では、遠くからでも容易に見つけることができ、鹿児島空港を発着する飛行機からもすぐに見つかる。 この時期、外観のガラス部分に設置されたシェードを使って、大きなクリスマスツリーが描かれており、夜には内部からの光により、美しいシルエットが浮かびあがる。 本館の正面玄関には立派なアプローチが設けられている。ちょうど正面玄関の真上に、アネックスへと通じる長い廊下がある。 廊下内部には片側方向のみながら動く歩道が設置されている。このあたりも、なんとなく空港を思わせる雰囲気だ。 そしてユニークなのは、縄文ミュージアムと名付けられた展示コーナー。日本全国に点在する12か所の縄文遺跡に関する資料がわかりやすく展示されている。パネル解説のほか、土器などの実物展示、ジオラマコーナーなどもあり、ちょっとした博物館だ。 その他、温泉浴場を備えるアミューズメントスパ「エデン」や、フィットネス施設と温泉のある「オクシア」など、スケール感のある設備を設けている。今回は利用する機会がなかったが、あまり賑わっているようには見えなかった。 レストランは和洋中が揃い、いずれも本格的。最上階の「サザンクロス」では、オーセンティックなコンチネンタルレストランの雰囲気が楽しめた。こうしたきらびやかでロマンチックなホテルレストランは絶滅寸前で貴重な存在である(残念なことに2012年現在は営業を中止している)。日本料理「京はるか」の会席も印象に残った。 |
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