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石巻グランドホテル Single Room |
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Ishinomaki Grand Hotel | 2010.11.03(水) |
宮城県石巻市 | 喜-2 |
ARCHIVES ・ 1992 |
名ホテルマンの面影 初めての街を訪ねる時は、いつでも胸が躍る。都市部の主要駅から目的地までは、出来ることなら列車を使いたい。そうすれば、車窓の風景を楽しみながら、沿線に暮らす人々の表情を垣間見れるからだ。 今回もそう思って、仙台駅から石巻駅まで、タクシーを使わず列車に乗った。だが、仙石線の旅は、理想とはかけ離れていた。第一、時間帯がよくなかった。仙台駅の地下にあるホームで待つこと30分以上。はじめはホームで待つ人影もまばらだったが、次第に人が増え、やがて行列ができた。 それに並びそびれ、列の最後尾から列車に乗り込んだ時にはもう座る場所がないどころか、通勤電車の混雑そのものだった。先頭車両のトイレの前にかろうじて荷物とともに場所を取り、左右に揺られながらも、なんとか車窓が眺められないものかと覗き見るが、結局、夕暮れの松島も、仙北平野も、目にすることがかなわなかった。 連日の通勤に耐えるビジネスパーソンには頭が下がると痛感しつつ、げっそり疲れ果てて降り立った石巻駅だが、陽が落ちてからは思いのほか気温が低く、コートの襟を立て、足早にホテルを目指した。 詳しい場所はわかっていないが、たぶんこちらの方だろうという方向に歩く。駅を離れると、とたんに人が見えなくなり、店らしい店もなく、静かな街並みが続く。本当にこちらでいいのかと不安になったところで、石巻グランドホテルの外観が見えてきた。 ところが、それを見るなり、もっと不安になった。照明が施されているであろうホテルサインに灯りはなく、客室窓もすべて暗い。本当に営業しているのだろうか。 ホテルの車寄せまで来ると、館内に照明が点っているのが見えた。そして、2枚の自動ドアを抜け、大理石を敷きつめたロビーへと進む。もうコートのボタンをはずしても大丈夫だろう。 ロビーは広く、ソファも配され、落ち着いた雰囲気。ところどころにブロンズ像が置かれ、なかなか優雅ではないか。レストランの脇には観葉植物が並び、天井には天の川を思わせる装飾照明が輝いている。 フロントには真面目そうな男性が立っており、抑え気味の調子で、簡潔に手続きが行われた。ルームキーを受け取り、早速客室へ。エレベータは3基あり、フロアボタンには汚れを防ぐためにビニールがかぶせてある。客室階廊下は薄暗く、かなり劣化が進んでいるように見えるが、デザインは90年代のテイストだ。 今回利用したのは、最もスタンダードなシングルルーム。面積は20平米弱だろうか。ビジネスホテルのシングルよりはやや広く、使っている家具はその配置はシティホテルに準じている。カーペットがひどく汚れているのが気になるが、客の使い方にも問題があるのではないだろうか。 窓際にはアームチェアとコーヒーテーブルが置かれているが、その付近に照明がなく、かなり暗い。元はフロアスタンドがあったものと推察する。デスクはカウンター式で、作業にも不足のない天端を持つ。テレビはブラウン管式だ。 ベッドは120センチ幅。片側が壁にぴったりと着いており、足元もあまりスペースはない。カバーと一体になったベージュの柄付き寝具と、非常に薄いマットレスを使っている。 入口付近は比較的明るい。奥行きはないが扉のあるクローゼット、ひきだしを2段備えたバゲージ台がある。ユニークなのは、バスルームの入口の段差を軽減するためか、天然石のステップが設けられていること。これだけでも、ずいぶんと立派な印象が付加される。 バスルームはシンプルなユニットバス。とてもコンパクトで、古びた印象もぬぐえない。シャワーは、湯を出すと首を振ってしまい、勝手にあさっての方向を向くのに困惑した。 朝食はロビー階のレストランにて、和朝食かアメリカンブレックファストをチョイス。ドレッシングがたっぷり掛かったサラダや、ケチャップの掛かったスクランブルエッグが運ばれてきて、どちらの調味料も不要だったので少々困惑したが、スタッフの人数は十分に揃い、サービスが滞ることはなかった。 チェックアウトはスムーズ。担当したのは責任者と思われる男性だった。一朝一夕では完成しない謙虚な物腰に、往年の名ホテルマンの面影を見た気がする。 |
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