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渋谷グランベルホテル Cozy Suite |
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Granbell Hotel Shibuya | 2010.10.04(月) |
東京都渋谷区 | 楽-3 |
ARCHIVES ・ 1992 |
大きな窓 この界隈には頻繁に出掛けるのだが、グランベルホテルに泊まる機会はなかった。泊まろうと思えば、いつでも泊まれたのに、実際のところは泊まりたくなかったのである。 オープンした頃は、何度か食事に立ち寄った。夜のバーにも顔を出したことがある。これが上海の下町あたりにあれば、なんとなくエキゾチックだと思えるのだろうが、知り尽くした街の中では粗だけが目立ってしまうことを痛感した。 都会的でシックなブティックホテル。まさにその通りのホテルだと思う。スタイリッシュさを前面に出し、渋谷の隠れ家的なニュアンスもある。それなのにいまひとつ魅力を感じないのは、表面的なことを繕うには余念がなくとも、それを隅々まで行き届かせるという心意気が足りないからだ。 ホテルは変形の窮屈な敷地に建っている。先に本館ができ、後から新館を増築した。それぞれの建物は基本的には独立しており、各階に接合部を設けて一体化させている。 余談だが、新館がある場所には、かつて趣きのある古いビルがあった。そこには個性的な飲食店やカフェが入居し、渋谷の裏通りらしいアーティスティックなムードがあった。その頃が懐かしい。 ここ桜丘町は坂の多いところ。加えて道路が狭く、ほとんどの道が一方通行だ。ホテル正面玄関も細い坂の途中にある。狭い道だが、通行量は多い。 一見して、ここがホテルだと気付く人は少ないだろう。正面にはカフェバーがあり、その脇に館内へと通じるユニークな扉がある。扉が閉じている時はまるで壁のように見えるが、隅を押し開くと忍者屋敷のどんでん返しのように回転する。 館内に入るとすぐにフロントカウンターがある。それはとても小さく、レストランのレセプションのよう。背後には白いソファがあるが、その他に待ち合わせやくつろぎのスペースは見当たらなかった。 サービスは想像していたよりもずっとよかった。物腰も上品だし預けた荷物の扱いも丁寧で、シティホテルに近いものを感じさせる。 客室へは、本館、新館ともに、フロント脇にある2基のエレベータを利用する。本館は3階から13階まで、新館は3階から8階までに客室がある。 客室階廊下は、まるで宇宙的なアトラクションの内部のようにダーク。これなら、廊下で人とすれ違っても、顔を悟られずに済むかもしれない。お忍び客が愛用しそうな雰囲気だ。 今回利用したのは、新館8階に4室並ぶメゾネットスイートの中のひとつ、コージースイート。4室の新館スイートは、すべてレイアウトや広さが異なる。 スイート利用のプランを予約したが、どのスイートになるかは、ホテル側に委ねるというもの。他のスイートがどんな造りなのかわからないので、当たりなのかそうでないのかもわからないが、この部屋も悪くはない。 客室ドアを入ると、すぐにリビングスペースがある。L字のソファとユニークな丸テーブル。ソファの背後には間接照明があり、壁を妖しく浮かび上がらせている。ソファは小さく、カラオケボックスの個室のよう。ここにふたりで掛ければ、いやでも親密さが増しそうだ。 ソファ脇のキャビネットには、エスプレッソマシンと十分な種類と数のコーヒーカセット、ミネラルウォーター、カップ&ソーサー、グラスなどが用意されている。また、24時間ルームサービスに対応してるが、内容はフィンガースナックなどが主で、この辺もカラオケボックス的。 カーテンは電動。外には芝が植えてあったのだろうが、今はその残骸により禿山状態。こういうみっともないところがいけないのだ。枯れたならさっさと撤去し、見苦しくないように整えるべき。せっかくソファでねんごろになっても、カーテンを開けたとたんに興ざめ、なんてことにならないようご用心。 また、カーペットが非常に汚い。レストランの厨房出入り口並みだ。とてもじゃないが、素足では歩けない。清掃は完全に落第だ。 階下の面積は14平米。ソファセットとテレビ、そして上階へのらせん階段だけでも窮屈なほど。らせん階段は傾斜がきつく、上がりにくい。まして、重い荷物を上階のクローゼットに運ぶのは容易でなかった。 らせん階段の奥の壁はミラー張りになっているのだが、こちらも埃だらけで汚らしかった。清掃ができないのなら、ふつうの壁にすればいいのに。 上階は斜めのガラス窓がユニークな、ロフト的スペース。約41平米あるので、下階に比べると広いのだが、斜め壁ならではの圧迫感からは逃れられない。階段上の、白い格子ガラスで囲われた箇所はウォークインクローゼット。内部は狭が、窓に面しているため昼間は明るい。 居室には手前からソファ、テレビ台、ベッドという配置。困ったことにライティングデスクはどこにもない。それどころか、テーブルさえないのである。いったい何を考えてデザインしたのか。 ソファは2つ仲良くテレビを見るような向きに並んでいる。テレビの台は大きいのだが、これはテレビが回転できる仕組みになっているため。下にはオーディオが収められている。 唯一、パソコンを広げられそうなのは、ミニバーキャビネットの上。そこにもアナログレコードプレイヤーなどが並んでいるが、それをどければなんとかスペースは確保できる。イスはないので、仕方なく立ったまま作業をした。 ベッドはまずまずの寝心地だった。マットレスはシモンズ。ベッドリネンも悪くない。窓側の壁はかなり切迫しており、ベッドから窓際に立つ時は、頭をぶつけないよう十分な注意が必要だ。 床は全体に艶やかなフローリングで、いい味を醸している。窓も床から天井まであっていい。カーテンはなく、引き戸で完全に遮光される。 ベッドボードの奥はレンガ造り。これが山小屋のような雰囲気を演出する。そこに仕込まれた間接照明も効果的だ。ベッドの脇はバスルームの開口部があり、引き戸で閉じることもできる。 バスルームは広々としており、一見、機能的にも充実している印象があるが、やはりホテルデザインに関しては素人が設計したらしく、詰めが甘い。 バスルーム入口のガラススイングドアは、重たいだけで不便。トイレは入口正面に曇りガラスで仕切られたブース内にあるが、床面までをガラスで覆うべきだった。 バスタブはベッドと平行に設置。ユニークなデザインだが、プラスチックでベコベコ。まるで縁日の金魚すくい用水槽みたいだ。奥にあるシャワーブースには、ハンドシャワーとレインシャワーを備えているのはいいが、ブースが狭い上に、下部から水漏れするので使いにくかった。 バスタブの脇はベッドボード奥と同じ煉瓦造りで、鳥のオブジェが飾っている。これが一番気が利いてると感じた。間接照明もいい。 ベイシンは1面だが、スタイリッシュな天然石を使っている。ミラーも立派で、この周囲が一番雰囲気がいい。ベイシン下にはタオル類が置いてあるが、すべて薄くボロボロだった。バスローブは壁に掛かっている。 バスアメニティはとても充実している。入浴剤や基礎化粧品まで、急な宿泊にも十分対応できる内容だ。 朝食は2階にあるテナントレストラン「にんにん」で提供される。800円だが、内容にその価値はない。明らかにやる気がなく、仕方なく営業しているという感じ。 客層は外国人が多い。そして、このホテルは昼よりも夜の方が圧倒的に似合うと思った。 |
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