ホテル龍泉洞愛山 2010.09.01 YKsonic Web 喜怒哀楽

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観光抜きで訪ねた観光宿

盛岡駅から迎えの車に乗った。市街から小本街道へ入ると、素朴でありながら変化に富んだ自然景観が続く。湖水、草原、森林、そして広い空が風景に合わせて表情を変えていくばかりで、行き交う車も少なく、このまま銀河の果てまで飛んで行けそうなほど爽快だった。

当初ＪＲ岩泉線での旅を計画したが、残念ながら災害により不通となっており、再開のめどは立っていないという。時折道路と交差する路線に、のんびりとした気道車が走る様子を心に描きながら、一日も早い再開を願った。

岩泉の集落に入ると、民家の他、商店も目に入るようになるが、それよりも広い道路や信号の存在が珍しく感じるほど静かな環境である。周囲を山に囲まれ、美しい空気を湛えた杯のような場所だ。

今宵の宿はホテル龍泉洞愛山。小さな観光ホテルだが、岩泉では最大の規模を誇る。狭い軒先には観光バスが停まっており、表示によると、関西方面からの観光客を運んで来たらしい。

フロントロビーはカーペット敷き。土産物屋では近隣に名産品を扱い、それらがロビーにも進出しているので、全体が民芸的に感じられるが、この環境にはむしろ似合っている。フロントカウンター脇では、龍泉洞内の生水を試飲することができ、飲み過ぎ注意の表示が、生々しさを一層のものにしている。

エントランスロビー

チェックインは男性の係によって行われた。笑顔はなく、ややぶっきら棒な感じがなくもないが、地方の素朴な人柄の表れと解釈した方がよさそうだ。

フロントカウンター

フロントを過ぎると奥にはシッティングエリアがある。小さな庭を眺められる場所にソファがセットされ、グランドピアノも置いてあるのだが、ここが喫煙コーナーを兼ねているため、極めてタバコくさいのが残念。このシッティングコーナーの周囲には、宴会場や、宿泊客の食事処となる食堂などがある。

ロビーのシッティングエリア

他に、ロビーラウンジもあり、その付近では無線ＬＡＮが無料で使えるのだが、客室には高速インターネット接続サービスがない。

館内は、若干のリニューアルをしたようだが、基本的にはレトロで素朴な趣き。50室ある部屋は全室和室で、バストイレを備えている。

客室のエントランス

チェックインしたのは18時だったが、すでに寝具の用意がしてあった。食堂の都合で、すぐに食事をするように言われ、荷物を置いて慌しく食堂へ。山海の珍味が並ぶ食事をさっと済ませ、ラウンジでコーヒーを飲んでから、部屋に戻った。その後は、入浴くらいしかすることがなく、退屈だった。

客室は清潔。むしろ、まだ新しいにおいが抜けていない感じだ。特に目を引くところはないが、卓上に用意された「みそくるみ饅頭」が郷土の香りを運んでくれた。

窓際には広縁があり、アームチェアとテーブルの他、洗面台もある。窓は大きいが、夜に眺められるのは、隣の居酒屋を彩る赤看板くらい。

だが、朝になれば街並み越しに宇霊羅山を望む。この山が眺められるだけでも、この宿に泊まった価値があると実感できた。だが、実のところ、夜はまったく眠れなかった。申し分のない静けさと落ち着きがあったのにである。なんというか、「草木も眠る」という感じの深すぎる静寂が、逆に神経を昂ぶらせたのかもしれない。

窓からの眺め

客室バスルームは一見豪華ヒノキ張りのようだが、もちろんシール。洗面台も湯と水の蛇口が離れた古い型のものだ。トイレは別途、個室が設けられている。

バスルーム

館内の大浴場は温泉ではないものの、ふれこみ通り、実によく温まる。夜は24時まで、朝は6時から利用可能だ。

大浴場

朝食は2階のホールで提供された。オーソドックスな和定食だが、三陸若布の柔らかさと磯の香りが忘れられない。

今回の滞在はビジネスに付帯したものだったため、観光は一切できなかった。龍泉洞の神秘的なドラゴンブルーや、三陸の美しい海岸線を、いつかひっそりと旅してみたいものだ。

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ホテル龍泉洞愛山

このホテルに関する過去のレビュー

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