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ホテル日航倉敷 Corner Deluxe Double Room | |
Hotel Nikko Kurashiki | 2010.07.08(木) |
岡山県倉敷市 | 哀-2 |
ARCHIVES ・ 1992 |
遺跡のような石造りの館 ホテル日航倉敷は、開業当時のクレリオンホテル倉敷、その後のホテルハイザ倉敷を経て、これで3つ目の名称になるわけだが、日航の名を冠することで、やっと全国的な認知度を手に入れることができたようだ。 クレリオンホテルは、チョイスインターナショナルのハイグレードブランド。かつては東京にも1軒あったが、現在、日本にはない。 だが、ここ倉敷は、クレリオンとしても破格に高級版だ。スモールラグジュアリーホテルをイメージして、リージェント沖縄やホテル西洋銀座に匹敵するようなホテルを作ろうと意気込んだ形跡が、設備のあちこちに今でもうかがえる。しかし、そうであるために必要な気品やサービスは、これまで一瞬たりとも存在したことはないのだろう。 そもそも、倉敷にスモールラグジュアリーホテルの需要があったとは思えない。岡山県を代表する観光スポットである倉敷美観地区に隣接し、駅前には風変わりなテーマパークも建設され、全国からごまんと人が集まると踏んだのかもしれないが、仮に賑わったとしても、この地を訪れる旅人がさほど贅沢を求めないことは容易に想像できる。 結果、立派な建物だけが残り、簡素なサービスによる中級ホテルとして落ち着いたというわけである。まあ、豪華な部屋に廉価で泊まれるというありがたみは確かにあるのだが、せっかくの設備が輝かないという現実は、お得感を打ち消すほど痛々しい。 チェックインの前に、倉敷美観地区をざっと一回りしてみた。薄曇りの天候で、逆に夏の日差しを抑えてくれる効果を発揮し、午前中から人出は盛んなようである。川を行き交う舟も、多くの乗船客を載せてゆっくりと進んでいく。風情たっぷりの光景だ。 川端には見ごたえのある建物が軒を連ね、一軒一軒しみじみ見て歩くのも一興。また、土産物屋を覘いたり、洒落たカフェで一息入れるのもおつなもの。だが、それは後ほどのお楽しみとして、ホテルに戻ってチェックインをしよう。まだ正規の時間よりはだいぶは早いが、どんな対応をするのかも試してみたい。 ホテル外観も大層立派だ。石造りの凝ったデザインは、これがもし都心の一等地にあったとしても、堂々と見えることだろう。むしろ、この場所にはあまり馴染んでいないように感じられる。 カーブを描く表側に比べると、駅方向から眺められる裏側の外観は、主張が穏やか。周囲には他にもいくつかのホテルがあるが、ここが圧倒的な高級感を醸している。 正面玄関には車寄せがあり、道路からエントランスまではテントのような屋根が迫り出している。駐車場はホテル建物の周囲にあって、やや停めにくそうな印象を受けた。 ホテル棟の脇には、蔵造りのレストラン「八間蔵」がある。館内には他にもレストランがあるが、この「八間蔵」の人気が突出しており、平日休日を問わず、いつも混雑している。 ロビーにはブラウンの大理石をふんだんに使い、最上階までの吹き抜けと、それに面した多数の窓から差し込む光とが、聖堂のような大きな空間を形作っている。しかし、そこに漂うのは荘厳さではなく、ややシノワズリー趣味がブレンドされた、華やかなノスタルジーだ。 フロントカウンターかと思って近寄ったところは、キャッシャーとして使われているらしい。大理石造りで重厚感があり、ここもフロントレセプションとして客を迎えるのに相応しいと思うのだが。 では、フロントはというと、正面玄関からすぐのところにあった。よく見なかったものだから、宴会の受付かなにかと見間違えて、通り過ぎていたのである。レセプションデスクとしては小ぶりだし、入口からあまりに近く、唐突に出現する感じだ。 しかし、チェックイン手続きにはすぐに応じてくれた。予約の確認があり、レジストレーションカードを記入。すると、鍵は15時になったら渡すと言い、さあ、どっかに行って来いという感じであしらわれそうになった。 JALのホテルのゴールド会員証なるものが過日送られてきたので、それを差し出し、どんな特典があるのか尋ねてみた。係は初めて見るらしく、ずいぶんと戸惑った様子で、どこからかマニュアルを取りだした。 それによると、ルームアップグレード、レストラン割引、アーリーチェックイン、レイトチェックアウトなどの特典があることがわかり、12時前だがすぐにルームキーが渡された。そして、この部屋はアップグレードされているのか聞くと、まだとのことで、新たに部屋を探してアサインしなおしてくれた。 なにごとも積極的にアプローチしなければ、そのままスルーされてしまうことも多い。とにかく言ってみることが肝心だ。 客室へはアトリウム裏手にある2基のシースルーエレベータを利用する。客室は3階から11階にあり、3階には和室、10階は特別階Jフロアになっている。 各階の廊下はアトリウムに面しており、開放的かつ装飾的な手すりが、スリルとエレガンスの両方を演出する。廊下には建物の裏側を向いた40平米の部屋が6室並んでおり、アトリウムを挟んだ両脇に表側を向いた42平米の部屋が2室あるという構造。 今回利用したのは、コーナーにある42平米のデラックスダブルルーム。小さな造りのドアを入ると、まず正面に窓、脇には両開きのクローゼットがある。横に折れて廊下が伸びており、奥に居室があって、途中にバスルームへの扉が設けられている。 居室はコーナーの魅力が存分に感じられる設計。2方向に3面の大きな窓があり、入口や廊下の窓を加えると、5枚もの窓を持った明るく開放感のある客室だ。だが、内装のカラースキームは濃厚。家具もごってりとした印象のものが多い。 居室には独立したデスク、半円形のテレビ台兼キャビネット、カウチソファとガラステーブル、キングベッドと、壁付きのドレッサーがある。古いものと新しいものとの質感に差があり過ぎて、バランスが崩壊しているのが気になるところ。特にカウチソファは、立派なガラステーブルを前に、かなり浮いている。 ベッドはシモンズのマットレスと白いデュベカバー仕上げの寝具により、快適な寝心地が得られる。窓に対して斜めになった配置も面白い。 デスクはどっしりとしたイタリアンモダンなデザインだが、添えられたイスは中国風。家具の色調と、彩度の低いカーペットとは、相性が悪い。 液晶テレビの下には、ユニークな形のミニバーキャビネットがある。冷蔵庫にはビールとミネラルウォーターだけが入っており、スイング式のサイドラックには、派手なティーセットやグラスがある。シャンパンはないのに、シャンパングラスとは気が利いているのか、そうでないのか。ドリップ式のコーヒーは有料だ。 窓からは2方向の眺めが得られるが、どちらも住宅中心の地味なもの。美観地区などの観光スポットは、この部屋からは特に見ることができなかった。 また、室内照明は非常に暗い。窓上とドレッサーにブラケットが付いている他は、ナイトランプとデスクスタンドのみ。特にカウチソファ付近が暗く、本来はフロアスタンドがあったものと思われる。何かの理由で撤去したまま、後釜が補充されることがないという状態なのだろう。 バスルームは、これまた驚くほど立派な造りをしている。全体が総大理石張り。ベイシンは特注の陶器を使っている。ミラー箇所も多く、ベイシン前のミラーは装飾性も高い。ベイシンの奥には、仕切りで隠されたトイレがある。トイレの背面には、タオルヒーターを設置している。 バスタブの脇もミラー張り。これにより空間がより広く感じられる。ミラー下、横一線に設けられた長い手すりも珍しい。 シャワーブースはハンド、固定、ボディの3ウェイ型。ややブース内が狭いが、独特の重厚感に包まれる。だが、やはりメンテナンスが追い付いていない。パテは腐りかけており、せっかくのゴージャスさに影を落としている。 バスアメニティには統一性がないが、必要なものはとりあえず揃っている。タオルは3サイズが2枚ずつに加え、心地よいボディウォッシュクロスが2枚と豊富だ。 泊まるだけではもったいない設備を備えながら、泊まる以外にすることもないというのが、総合的な印象だった。倉敷国際ホテルの方が、雰囲気という点で心地よさを感じさせてくれた。 |
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