札幌エクセルホテル東急 Exclusive Twin Room |
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Sapporo Excel Hotel Tokyu |
2009.05.22(金)
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札幌市中央区 |
楽-2
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オリンピックイヤー | 偶然か計画的なのかは不明だが、新規のエクセルホテル東急は、すべてオリンピックイヤーに開業している。ここで言う新規とは、当初からエクセルホテル東急として計画されたホテルのことで、そうでないものには、赤坂や横浜など、元東急ホテルなどからリブランドしたものが5軒(2010年3月現在)ある。
最初のエクセルホテル東急は富山で、その直後に博多が開業しており、ともに1992年のオープン。それから4年後に札幌、更に4年後に渋谷、また更に4年後に羽田と、必ずオリンピックのある年に開業していた。だが、2008年の北京五輪の年には、新規開業はなかった。さて、次の2012年はどうであろうか。 それはさておき、初期のエクセルホテル東急は、ビジネスホテルとしては破格の贅を尽くし、シティホテルに極めて近いクオリティを売りにしていた。ロビーは広く、大理石をふんだんに使った吹き抜けが印象的である。客室もシングルで20平米、ツインで30平米以上を標準とし、ゆとりある空間と充実したアメニティを誇っていた。複数のレストランを設け、コミュニティホテルとしての役割も果たすなど、新時代のホテルのありかたを示していた。 札幌もその血統を受け継いで立派な建物が完成し、客室はツインで40平米と、国際的な水準をクリアするほどであった。だが、続いて開業した渋谷は、好立地ながらサービスでこけ、客室のクオリティも付近の同価格帯ホテルと比較すると見劣りした。羽田に至っては、少しも面白くない客室をこしらえ、あえて泊まる価値は全くなく、必要に迫られている人にでさえ、二度目にはもう少しリーズナブルなホテルを近隣に探し求める程度の評価しか得られていない。 エクセルホテルが首都圏に弱かったのか、そもそも勢いのピークが札幌あたりまでだったのか。おそらく両方なのであろうが、いずれにしても札幌までのエクセルホテル東急の方が、より好感を持てたように思われる。 札幌エクセルホテル東急は、中島公園に近く、すすきの繁華街の南端に接するように建っている。通常なら札幌駅からタクシーで10分足らすのはずか、この日は20分以上を要した。5月にしては冷たい雨が降る夜、駅からホテルまでにある全ての信号が赤だった。誠に運が悪いとしか言いようがない。 予想通り、車寄せに係はいなかったが、時間も運賃も普段の二倍費やした不運な客に同情したのか、運転手が荷物を正面玄関の中まで運んでくれた。運転手に丁寧に礼を述べて荷を受け取り、特別階ゲストの専用カウンターに向かった。 専用カウンターに係は不在だったが、離れたところからすぐにやってきて、「いらっしゃいませ。雨の中、お疲れさまでした」とにこやかに言った。レジストレーションカードにサインを済ませると、ルームキーとともに冷えたミネラルウォーターが手渡された。この時間、ロビーに客の姿はまばらだが、石張りの空間にいくつか並んだソファには、団体観光客とおぼしきラフなスタイルの男性が、数人ぐったりと座り込んでいた。早朝からの観光で疲労困憊なのだろうか。それとも、これからすすきのでのお楽しみに備えて体力を温存しているのだろうか。 それにしても、幾種類もの大理石を用いたロビーの装飾は、なかなか見ごたえがある立派さだ。中央にある大きな柱も、いい意味での存在感を放っている。床の一部はモザイクになっており、ロビーの片隅には芸術的な石のオブジェと噴水が設けられているのだが、わざわざそれを旭山動物園の宣伝で隠してしまっているのは残念でならなかった。 エレベータは4基あり、エレベータホールには色鮮やかなガラスのシャンデリアが下がってる。今回の客室は、この4月に改装して完成したばかりのプレミアムフロアにあるエクスクルーシヴツイン。プレミアムフロアは19階と20階だが、そのうち20階にある部屋がアサインされ、部屋は照明を落としたシックな内装のエレベータホールからほど近かった。 面積は約45平米で、スイートを除いては最も広いタイプである。入口と居室内扉の間には石風床の明るいホワイエがあるが、あまり使い道はなく、単なる通路として考えた方がいい様子。居室は広く、やや横長のワンルーム構造になっている。片側の壁に沿って、収納付きテレビ台とカウンターデスクが設置され、デスク上には客室備え付けのノートパソコンがある。 テレビ台に向かうようにして、はやりの大きなL字型ソファがガラステーブルを囲み、その脇には空気清浄機やコンフォートルームでお馴染みのレザー張りマッサージチェアを据えている。デスクと反対の壁には122センチ幅のベッドが2台並ぶ。 この部屋のベッドにはパナソニックの寝室環境システムが導入されていると、ホテルのサイトでは強調してPRされていたのだが、それは2台あるベッドのうち、片側だけであった。寝室環境システムの操作は、ナイトテーブルのコントロールパネルに組み込まれているが、これが極めて判りにくかった。操作手順を説明した案内書が用意されていたので、それを読みながら進めると正しく作動したが、操作が面倒では安眠どころかかえってストレスになる。 試しに横たわってシステムをスタートしてみると、ヘッドボードのスピーカーから宇宙的な音楽が流れ、足元に埋め込まれたサブウーハーから微振動が伝わって来た。そして徐々に照明が落ちてゆき、消灯されるころには夢の中、という筋書きのようだが、こんなものに頼るほど現代人は自己のコントロール機能を失っているのかと哀れに思うだけで、効果を実感することはなかった。 次いで起き上がり、この部屋からの眺めを確かめようと、1面しかない窓に寄って、レースカーテンを開いた時、思わず息を呑んでたじろいでしまった。窓から生首にのぞき込まれていたわけではない。ただ、窓があまりにも汚れていたのである。これまでさまざまなホテルで何千枚もの窓を見てきたが、これは一、二を争う汚さ。手垢でびっしりと覆われ、下半分が曇りガラスなのかと見紛うほどだった。 タオルを一枚犠牲にして拭いてみると、雲が晴れるようにして雨の札幌が見えてきた。どうも藻岩山の方を向いているらしいが、特にこれといった眺めではなかった。 このように、居室は流行のインテリアと最新機能を織り交ぜてあるが、どうも殺風景な印象が強い。それは、主に電球型蛍光灯を使った照明プランと、壁紙の質によるもののようである。低く、装飾性に乏しい天井もまた何か物足りない。そんな中、ひときわ存在感を放っていたのは、内扉脇に置かれた観葉植物と、ミニバーに置かれた北海道陶芸家作による湯のみだった。 バスルームは、おそらく開業当時と構造は変わっていないと思われる。ベイシンルームの両側に、独立したトイレと、140×180センチサイズの洗い場付きバスを備えており、広々しているのが特徴だ。改装に際して、ファブリックや床材を改め、バスタブ上の照明をハロゲン光に改めている。 大理石製のベイシンにはスツールを添え、下には体脂肪計付き体重計を備えている。バスアメニティも豊富で、シャンプー類はTHANN、基礎化粧品はアロマエッセシリーズ。他にこまごまとしたアイテムを揃え、男性的な内装にあって、ここぞとばかり女性を意識したことがうかがえる。タオルは大小2枚ずつで、バスローブはなかった。 プレミアムフロアに滞在中のゲストは、2階にあるプレミアムラウンジを利用できる。到着時にはすでに閉まっていたので、翌朝に利用してみた。ルームキーで入室。中には肘掛椅子が並び、民放の下世話な朝番組がけたたましく流れているが、係は不在で、一切はセルフサービス。コーヒー、ミネラルウォーター、茶が用意されている他、パソコンが一台、ガイドブックなどがある程度で、ここでゆっくり過ごすという雰囲気ではなかった。 朝は、団体客でごった返していた。多くのグループは9時になるとバスに集合して、次の目的地に出発。すると、館内はとたんに静まり返り、大理石のロビーがギリシャの遺跡のようにも見え、まるで時が止まったかのようだった。 |
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札幌エクセルホテル東急(公式サイト) | |
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