ホテル鹿島の森 Royal Suite |
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Hotel Kajima no Mori |
2008.12.13(土)
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長野県北佐久郡 |
楽-4
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思索するリゾート | 降り立った軽井沢駅の空気はひんやりと肌に染みるが、思わず深呼吸ををしたくなる清らかさが感じられた。アウトレットには目をくれず、駅前の「茜屋」で一杯のコーヒーを飲み、そのままタクシーに乗り込んで鹿島の森を目指した。駅の反対側はアウトレットを中心に、冬でも大いに賑わっているが、こちら側には以前からの落ち着いた佇まいが感じられる。どちらをもって軽井沢なのか、それは世代や目的によって違うだろうが、道端の店や木々たちにも、旧来の軽井沢こそ軽井沢らしいと思わせる説得力が漂っている。
ホテルにはチェックインタイムより30分ほど早く到着した。待たされることを覚悟していたが、意外にもすんなりと部屋へ案内されることになった。フロントはクロークのようにこぢんまりとしており、係の落ち着いた振る舞いが印象的。不要な朗らかさはなく、サービス人に徹している。 ロビーにはソファを配したコーナーがあり、その傍らではご婦人好みの雑貨類を扱っている。ホテルは2階建てで、1階にはレストラン、客室は1階と2階にあって、ガーデン側と裏側の両方に配置されている。現在はエレベータも設置されているが、客用としては不自然なバックヤードのような場所にあるので、もしかすると業務用を改装して開放したのかもしれない。 普通ならガーデンのある1階にバルコニーと大きな窓が配されることが多いが、ここではその逆で2階にバルコニーがあり、1階は窓も小さい。従って、2階の方がよりグレードが高いことになっている。 今回利用したのは、2階に4室あるスイートのひとつ。4室とも仕様は共通しており、いずれもレギュラールーム2室分にあたる62平米の面積がある。入口を入ると広めのホワイエがあり、そこにはコート掛用クローゼットとゲスト用トイレ、ミニキッチン室が備わっている。 続くリビングルームには、ソファセット、オットマン付きアームチェア、収納付デスクユニット、37インチ液晶テレビ(地上アナログ、衛星デジタル、DVDプレイヤー付き)を備えているが、余計なものは一切置かず、すっきりとしている。壁は石膏ボードの部分とコンクリートの部分があるが、白一色でまとめ上げており、内装のテイストもどちらかというと男性的で堅実。客をわくわくさせるのではなく、穏やかに感性を研ぎ澄まさせてくれるような雰囲気だ。 リビングとベッドルームとの間はワイドなスライドドアで仕切られているが、完全に戸袋に収納されるので、開け放てばワンルーム的に広々使うことができる。ベッドは120センチ幅が2台。デュベに加え毛布もセットされているので、ずっしりと重いが、とても暖かい。ベッド前にはデスク兼ドレッサーがあり、20インチの液晶テレビが載る。メインのクローゼットもベッド前にあり、バスローブはここに用意されている。 バスルームはベイシンを配した186×173センチのコーナーと、バスタブとトイレを配した165×193センチのスペースに分かれている。ベイシンはダブルで、天端には大理石が使われた。アメニティも豊富に揃っている。バスタブは肘掛のあるタイプで、周囲を大理石を縁取っているが、バスルーム内はタイル張りになっている。バスタブのすぐ脇にトイレがあるというレイアウトは、好まない人も多いだろう。室内の清掃はよく行き届いているという印象だったが、バスタブの内側に限ってはひどく汚れていて残念だった。 また、この部屋はしばらく稼動していなかったのか、到着した時に暖房を最強にしたにもかかわらず、夜になるまでずっと寒くて上着を脱げなかった。しかし、一度部屋が暖まってからは、もう冷えることはなかった。 さて、このホテルでは、何をして過ごそうか。軽井沢観光は、今更する必要はない。この周辺にも、特に出向いてみる価値のある場所も思い当たらない。館内にはラウンジとレストランがあるだけで、特別な施設はなく、ただひたすら心を日常から解き放つことに専念するのが、一番価値ある過ごし方なのだろう。 とりあえず、館内を一回り見物し、それから庭に出てみた。庭にも特に何があるわけではなく、木々が時折風に揺れるだけである。庭の一角から斜面に設えられた階段を下りていくと、せせらぎがある。そこにはクレソンが栽培されており、きっとレストランでもそれを使うのだろう。このせせらぎは、すぐこの先から湧き出ており、下流に進むと紅葉で名高い雲場池に注ぎ込む。たまにイノシシが出没するらしく、ホテルの庭へ戻る階段の途中に、扉と看板を設けて注意を促していた。 夕食は館内にある「コンチネンタルルーム」を利用した。閑散期と不景気が重なっているためか、ディナーメニューは大幅にプライスダウンされており、ある意味チャンスである。にもかかわらず、土曜日だというのに、たった4組しか客がなかった。一方で、レストランの半分を仕切ってパーティーが行われていた。ビンゴなどで派手に盛り上がっており、司会者がマイク片手に白熱しているのが目に見えるようだった。ややムードを壊している感もあるが、窓から見える庭のクリスマスツリーや電飾にとっては、少し賑やかさが加わった方が季節感が出ていいのかもしれない。 注文したのは、最も手頃な5,775円のコース。虹鱒の燻製、白菜のポタージュ、ポークソテー、洋梨シブーストとクレームブリュレに、コーヒーが付く。斬新なアイデアはなくても、オーセンティックで丁寧な料理は、この環境と相まって忘れがたい印象を残してくれる。コーヒーはデミタスカップで提供されるが、タイミングよくおかわりを勧めてくれた。その他のサービスも礼儀正しく、心地よいものだった。 夜明け前から雪が舞い始めた。そして、午前中一杯を掛けて、庭を白銀の世界に染め上げた。風もなく、静かに降り積もる雪は、実に清らかだった。だが、朝食の時間になると、子供たちが庭に繰り出してはしゃぎだした。子供たちの無邪気な笑い声は結構だが、それにあれこれ指示を飛ばす母親の声が騒々しかった。 チェックアウト後は友人に会うため、上田に向かった。トンネルを抜けると雪国でなかった。上田は快晴。雪は軽井沢だけだったようだ。 |
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ホテル鹿島の森(公式サイト) | |
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