トーヨーグランドホテル Twin Room
Toyo Grand Hotel
2008.11.30(日)
北海道中標津町
楽-3

薄っすらと雪が積もっている
 
北国の洗礼 那覇を出発して6時間。東京経由で到着した中標津空港は、ターミナルビルに木材を多用しており、まるでログハウスのような雰囲気だった。空港の周囲も落葉松林や酪農地帯で、いかにも北海道らしい景観である。

当初の予定では空港から滞在先のホテルへ直行する予定だったが、今回のエージェントの計らいで、素晴らしい景色が望めるという開陽台をまずは訪ねることとなった。さすがに道はほとんど直線。この地域は景観にも配慮されていると説明されたが、この壮大な眺めの価値を最も損ねているのは電柱と電線である。これが目に入らないように出来たなら、印象は大きく変わることだろう。

開陽台は小高い丘で、頂上には360度の景観を望める展望台がある。駐車場から展望台までは階段が続いており、頂上を目指すにはちょっとした決意が必要だ。何しろ今回も長旅なので荷物を多くしたくなかったし、どのみち外を歩く機会はないだろうと踏んでいたので、防寒準備はまったくしてこなかった。

でもまあ、展望台まで駆け上がれば、ちょうど体が温まっていいかもしれないと思い、ジャケットだけ着て車を降りた。そして、外気を一息吸い込んだとたんに思い切り咳き込んでしまった。まるで気管が瞬間冷凍されたような感覚だった。この時、外気温は氷点下。数時間前までいた沖縄は25度あったので、急激な気候の変化に、一瞬体が戸惑ったらしい。ああ、島流しの次はシベリア送りかと、流刑者の気分とともに、日本の広さを身をもって実感した。

北国の洗礼は気管の瞬間冷凍にとどまらなかった。さきほどまで青空が見えていたのに、開陽台に着いたとたんに雲行きがあやしくなり、展望台にたどり着く頃には激しい吹雪になっていた。360度のパノラマどころか、数メートル先が見えないではないか。しかも、南国で開ききった毛穴に、冷気が容赦なく打ち付ける。これは十分に拷問だ。お願い、もう堪忍してくれ、と心中で叫びながら車に戻った。だが、後に思い出せば、むしろ北海道を強烈に印象付けることになってよかったと思うのだから、人とは勝手なものだ。

次いで向かったトーヨーグランドホテルは、市街地の中心部に位置するシティホテルだった。街のランドマークになっており、宴会や食事、入浴にと、地域の人からも幅広く利用されている様子だ。建物は敷地のやや奥まったところに建っており、その前には駐車場と庭園を配し、ゆとりを感じさせている。庭園には石像や灯篭の他、小さなせせらぎが設えてあり、金魚が放たれているのだが、あまりの寒さに金魚もじっと動かない。

ロビーのデザインはレトロだが、フロアにはゆとりがあり、レザーソファとピンク大理石のテーブルが整然と配置されている。一角にはロビーラウンジと古風な売店が設けられ、その奥の方には今時珍しいナイトラウンジが備わっている。そして、反対側にはレストランがある。フロントはロビー中央にあり、数名の女性スタッフがサービスに当たっていた。

用意された客室は3階にある28平米のデラックスツインルームだった。正面玄関側にシングルを中心とした狭い部屋が並び、デラックスツインが裏側にあるのは、裏側の方が川が望め、眺めがいいということなのだろう。客室階と同じフロアに宴会場もあるので、昼間は賑やかだったが、夜は一転して静けさに包まれた。

室内は一見オーソドックスなレイアウトだが、古いホテルとしては珍しく、トイレが完全に独立している。そしてバスルームは140×180センチのユニットだが、トイレがないことで、ゆとりが感じられる。居室には123×195センチのベッド2台、アームチェアとテーブルのセット、デスクユニット、置き家具のクローゼットがある。家具類はホテル仕様というよりは一般家屋用という趣きで、丈夫で長持ちするようなしっかりとした品物で揃えられている。

全体に最近改装したような部分は見られないが、デスクスタンドだけは新しいデザインだ。室内がかなりタバコ臭かったが、窓を大胆に開放することが出来るので助かった。その窓は2重構造で、2枚のガラスの間にブラインドがはめ込まれている。周囲が静まると、わずかに隙間風の音が聞こえていた。LANもあるにはあるのだが、ケーブルの形状がテレビアンテナと同じなので、パソコンに接続するには変換プラグが必要。また、コンセントも少なく、空いているのはナイトテーブルの1箇所だけだった。

館内には温泉浴場が設けられており、宿泊客は無料で利用できる。雰囲気的には銭湯のような感じで、地域の人々も気軽に利用しているようだった。屋内にはブロアバスやサウナもあり、屋外には屋根付きながら岩風呂もあって、そこは源泉掛け流しらしい。ゆっくり温泉に浸かって部屋に戻った際には、あらかじめポットに用意された冷水がありがたかった。

夕食、朝食ともにロビー階のレストラン「白樺」を利用した。メニューが豊富で、昭和のドライブインとファミレスの中間的なイメージだろうか。ディナーセットも1,200円からと手頃。北海道の味覚が詰まったセットメニューを注文してみたが、見た目はともかく、味は値段以上に満足できるものだった。

朝食は和洋のブッフェ。トーストに塗った北海道バター、ジャガイモのグリル、トマトが美味しかった。ヨーグルトかと思って食べたものは「フルーチェ」みたいな味。他にいかの塩辛なども並んでいる。

朝食を済ませて部屋に戻ると、バスルームの照明器具が破損して床に落下していた。それを黙ったまま出発しては、過失で壊したのかと誤解されてもいけないので、フロントに事と次第を報告してからチェックアウトした。その後、待ち合わせのためラウンジでコーヒーを飲んでいると、そこに総支配人がやってきて、迷惑を掛けたと詫び、怪我はないかと案じてくれた。

何も心配には及ばないし、苦情を言ったわけではなく、単なる報告だと説明したが、ホテルの設備が原因で迷惑を掛けたことには変わりないので、それをお詫びしたかったと、随分と腰が低かった。何があっても知らん顔の総支配人がほとんどなので、わざわざ客に顔を合わせるというだけでも奇特な人だと思った。

今日もいい天気。出発時にせせらぎを見ると、隅の滝からは湯気が上がっていた。今日は金魚も元気に泳いでいる。

 
オーソドックスなツインルーム デスク側 窓側から室内を見る

窓際のシッティングスペース 手前がバスルームで入口脇がトイレ ユニークなメインスイッチ

窓は盛大にオープンできる 川を望む景観 独立したトイレ

バスルーム 崩壊した照明器具 床に落下しているランプシェード

大浴場 岩風呂 ろばた店もある

ロビー ソファが多数置いてある レストラン店内

見た目よりもずっと美味 朝食ブッフェ 朝食

外観 北海道らしい木々 庭園のせせらぎ

 トーヨーグランドホテル(公式サイト)
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