川内ホテル Single Room |
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Sendai Hotel |
2008.11.16(日)
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鹿児島県薩摩川内市 |
喜-3
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ロングステイ | 同じホテルでの10日間の滞在。これが、海辺のリゾートや高層階のラグジュアリーホテルならば、想像するだけでも心躍るようであるが、地方の古びたビジネスホテルだとなれば、気が重いという以外に言い表しようがない。しかも狭いシングルルームが予約されているというから、羽田を出発する時には、これは服役だと思って腹をくくるべしと、搭乗アナウンスに重い腰をあげた次第である。
今回のツアーに同行したミュージシャンは皆、細かいことは気にしないタイプ。しかも、宿がどんなでも、おいしい酒が飲めればゴキゲンという、ある種順応性に富んだキャラなので、空港から川内市内に向かう車中でも、「桜島だ!」と歓声をあげては携帯のシャッターを切っていた。その様子を見ていたら、「お気楽」が伝染したのか、「何とかなるさ」という気分になって来た。そして、実際に何とかなったし、それどころか結構楽しい滞在となった。 川内ホテルは薩摩川内駅の至近にあり、ロケーションには申し分ない。例えば、鹿児島市内のホテルで考えてみると、鹿児島中央駅付近に用がある場合、駅から離れたホテルに泊まるより、ここ川内に泊まる方が、新幹線で10分程でアクセスできるので便利かもしれない。そして、鹿児島市内にはない落ち着きがあり、天然温泉も利用できるなど、意外と利点は多い。 ホテルは本館と別館があり、どちらも外観はレンガ風のタイル張り。駅から近いのは比較的新しい別館で、駅前の大きな通りに面してはいるものの、こちらにフロントはなく、チェックインや滞在中の出入りは裏通りに面した本館のメインエントランスを利用する。 ロビーは明るく、ふたつのソファコーナーが設けてあり、それぞれ禁煙と喫煙になっている。ちょっとした生花も飾られ、雰囲気は悪くない。フロントスタッフは素朴な印象で、最初はぶっきら棒にも感じたが、慣れてくると人柄の良さも伝わってきた。予約システムはこの時代でもまだ手書きというのが珍しい。予約の電話が入る度に、手書きの台帳を広げて鉛筆で記入している様子は、懐かしくもある。 チェックインはスムーズとはいかなかった。これはホテルに責任はなく、同行したエージェントの問題だった。予約の伝え方が曖昧だったらしく、9泊であるはずが、途中2泊抜けていたのである。実際、その抜けた日には公演がなく、できれば一度東京に戻ることを希望してあったので、そのように手配したらしい。なのでこの予約漏れは好都合であった。 川内市のホテルは、原子力発電所のメンテナンスのために長期滞在する客で、どこも満室が続いていた。そういう客はキャンセルになることも少ない。さあ、これで一度東京に戻れる、と喜んでいたのも束の間、ホテルの人が融通を利かせて、なんとか9連泊で禁煙シングルを用意してくれた。やはり、10日間のロングステイだ。早くここでのペースに慣れてしまうことにしよう。 用意された客室は別館にあった。本館の裏側扉を一度出て、路地を抜けると別館があり、路地に屋根はあるものの、外気に触れることは避けられない。あるいは、本館の3階から通じている連絡通路を経由すれば、館内からアクセスすることもできる。ただ、エレベータは本館、別館それぞれ1基ずつで狭いため、いずれもよく待たされ、むしろ階段を使った方が早い。 別館は全室がシングルルームで、1フロアに6室が配置されており、いずれも仕様は同じ。一方、本館は複雑で、同じカテゴリーでもレイアウトや広さには大きな差があるようだ。 別館シングルは13.5平米。室内にクローゼットがなく、コート掛けに2本のハンガーが下がっている状態。クローゼットがない分、入口ホワイエは広く、客室での整体を依頼した際には、この場所に簡易ベッドを広げて施術できるほどである。ベッドは123センチ幅で、寝具はどこかで見たことがあると思ったら、つい先日泊まった都城のアルファーワンと同じだった。リバーシブルなので、自分で表裏を返して気分を変えることもできる。ナイトテーブルはなく、空調コントローラやナイトパネルはベッド上の壁に設けてある。 デスクユニットはコンパクトなサイズで、卓上作業スペースも限られる。LANは無料で、テレビは21型ブラウン管。コンセントは2口のみで、ドライヤーは壁掛け型だ。デスク脇には2つのバゲージ台があり、ひとつは下に空の冷蔵庫が入っている。照明は蛍光灯のシーリングとデスク上のブラケットのみで、ナイトランプや足元ランプもないが、狭いので明るさに不足はない。 バスルームは120×180センチの退屈なユニットだが、シャワーは強力。アメニティはリンスインシャンプー、ボディソープ、歯ブラシ、使い捨てボディタオルのみ。タオルは緑色で大小1枚ずつの用意だ。本館1階には天然温泉の大浴場があり、宿泊客は無料で使える。営業時間は午前6時から夜は11時半まで。ホテルの大浴場というよりは、街の銭湯という方がふさわしく、地元の人々が洗面器にマイアメニティを入れ、気軽に利用している。そんな人々に混ざって湯船に浸かることもまた、まるでこの街の住人になったような気分を味わわせてくれた。 朝食は800円で、別館1階にあるレストランでの和洋ブッフェが用意される。原子力発電所へ向かう人々で朝一番から賑わうが、その波が一段落着くとゆったりした雰囲気となる。料理は家庭的な「おかず」風料理が多いので、和食の方が充実している感じだが、毎日食べても飽きないよう、内容も変えている。ただ、前日に不評で残ったものが翌日に並ぶこともある。係は親切だが、基本的にフルセルフサービスなので、食後の食器返却もしなければならない。 夕食も、このレストランを利用することが多かった。街の洋食屋さんという感じで、ハンバーグやビーフシチューなど、昔のファミレス的なメニューが揃い、値段も手頃。ただ、休業日が多いのが気になった。ホテル周辺にも手頃で魅力的な店は幾つかある。黒豚しゃぶしゃぶ、すし、ビストロなど、バラエティも豊富なので、食に飽きることはなかった。 街を歩いていると、あちこちにカッパをモチーフにしたオブジェが目に飛び込んでくる。現地の人に意味を尋ねてみると、川内は昔からカッパにまつわる伝説が数多く残っているのだという。それ以上に興味深かったのは、結構本気で「カッパはいる!」と確信していることだ。どんな声で鳴くのか、どんなところに出没するのかなど、真顔で説明してくれたのだが、これが結構説得力があって面白かった。 滞在中、毎日山のように頂いてくる花束をどうするか、これが結構大変である。せっかく頂いたものなので、少なくとも1日は部屋で眺めて楽しむが、毎日増えるとなると、いずれはベッドが花に囲まれ、部屋全体が巨大な棺桶みたいになってしまうので、お世話になった方々に差し上げることもある。 今回も、スタッフの他、気に入ったレストランに持参したり、ホテルの女将さんにも差し上げた。女将さんはその花をとても喜んでくれたらしく、お返しを頂戴した。「フルーツはお好きかしら?」「大好きです」「じゃあ、あとでお部屋にお入れしておきますね」と、そんな会話の後、外出して部屋に戻ると、大きなダンボールにメロンやらりんごやら柿やらがたくさん入って置かれていた。何かカットフルーツのようなものを想像していたので、正直ぶったまげた。これまで数々のホテルでウェルカムフルーツをもらったが、これほど大胆なのは初めてだ。 こうして川内での10日間はあっという間に過ぎていった。チェックアウトする頃にはすっかり家族のような気分になっていた。シンプルなシングルルームでの滞在だったが、海辺のリゾートにも負けない思い出が得られた。 |
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川内ホテル(公式サイト) | |
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