こういう時にこそ、下調べの効果が発揮される。あらかじめ調べてあったα−１の外観は茶色。都城駅を訪れるのは初めてなので土地勘はないが、おおまかな地理は頭に入れてきた。どうもクライアントが向かっているのは、別のホテルである様子。そして、α−１はそのホテルの建物のちょうど影にあるため、別のホテルによる食でまったく見えなかったのである。「たぶん、あっちの方では・・・」みたいなことを言って進路を変更してもらい、無事にα−１に到着した。

広い駐車場はほぼ満車で、ホテルはとても混雑しているように見えた。宴会場やレストランなどはないのだから、この車は泊まり客のものだろう。ロビーも賑わっていた。ほとんどの人が作業服で、ホテルというより詰め所のようだった。聞けば、約3週間後にオープンするショッピングモールの工事関係者でほぼ満室だという。そんな中、音楽家の一行は珍しく見えたのか、すぐに顔と名前を覚えて親切に接してくれた。

ロビーにはベンチシートが並び、シャンデリアもあり、床は大理石のパターンと、ホテルらしい雰囲気に仕上がっているが、脚立が置きっ放しだったり、何かのダンボール箱が山積みになっていたりと、やや乱雑な印象もあった。立地としては都城駅に近く、十分に徒歩圏内なのだが、車がないと不便に感じるのが不思議。駅前まで出てもあまり飲食店はなく、安心して食事が出来る場所を探すのが大変だった。ホテルには無料で使えるレンタサイクルが用意されているので、それを借りて街の中を散策してみたが、これといって興味を引く店は見つからなかった。

今回利用した客室はスタンダードなシングルルーム。なんと1泊4,400円という激安ぶりは、デカデカと看板が出ているのですぐにわかる。客室階へのエレベータは2基で、いずれもシースルー。よく待たされるし、作業服のおっさんたちと一緒になるが、彼らは意外にも礼儀正しかった。工事仲間だと思われているのかもしれない。エレベータのガラス窓からは都城市街を一望でき、窓の埃っぽさが西部劇みたいで哀愁をそそる。

シングルルームはオーセンティックなレイアウト。ホテル自体は古いようだが、ファブリックは最近新調したと思われる。入口脇に細いオープンクローゼットがある他、コート掛けにもハンガーが用意されているのは、ロングステイの客が多く、要望があったからだろうか。

デスクユニットは窓側に寄せて置かれており、冷蔵庫、液晶テレビ、ティーセットなどが所狭しと並んでいる。卓上も広くはないが、LANは無料だし、しっかりとしたアームチェアが添えられているので、デスクワーク環境としては悪くない。デスクの脇にはバゲージ台があり、並んで、ズボンプレッサーが壁に取り付けられている。電磁サーバーも壁に取り付けられているが、これはなんとなく危なっかしい印象だ。

こうしてスペースを有効利用しようという意欲が感じられるが、せっかくバゲージ台下が空いているのに、ここを活用出来ていないのは残念だった。ベッドは狭いが寝心地はまあまあ。子供部屋に相応しいような柄のスプレッドが面白い。照明はすべてが蛍光灯。せめてナイトランプは白熱灯にして欲しかった。空調はこの時期でも冷房のみ。やけに寒かったので備え付けのミニヒーターを使ったが、とてもそれでは暖かくならなかった。

バスルームはコンパクトなユニット。赤いベイシントップが古めかしさを醸している。シャワーカーテンを含め、割と清潔。カランは弱く、シャワーはやけに水が広がり使いにくかった。タオルはオレンジ色で、大小1枚ずつ用意されている。アメニティも最低限の品揃え。もし広い風呂でリラックスしたければ、駅前にスーパー銭湯「元気湯」がある。

朝食は前売り券が810円で、当日だと860円。リーズナブルな値段にしては、内容は充実。しかもカロリー充実だ。手作りオムレツ、ハンバーグ、地鶏の他、ブロッコリーやトマトスライスが嬉しい。2日目だけフレンチトーストが並んだが、これが美味しかった。まるで開拓者たちの寮に泊めてもらっているような感じで、なかなか面白い滞在だった。