東京第一ホテル モンタナリゾート岩沼 Twin Room |
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Montana Resort |
2008.10.07(火)
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宮城県岩沼市 |
怒-3
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団体客の品性 | 車で仙台岩沼線を南下すると、のどかな風景の中にグリーンピア岩沼のアーチ看板が見えてきた。目指すモンタナリゾートはこのグリーンピアの中にある。かつては第3セクターにより運営されていたが、平成15年に岩沼市がグリーンピア岩沼を買い上げ、そのうちホテルは阪急阪神第一ホテルグループ運営を委託している。
アーチ看板を抜けると、名物「パキスタンカレー」の旗看板が多数ひらめいており、その脇にある建物がホテルのように見えた。リゾートといいながら、意外と殺風景な場所にあるものだと落胆していたら、運転手からその建物はホテルではなく学校だと知らされた。リゾートはそこからまだ1.3キロも先にあるという。 かつては機能していたのかもしれない管理小屋付きのゲートをスルーして、両脇に木々が生い茂る坂道をぐんぐん上がっていく。植生は違うが、雰囲気は沖縄のアッタテラスに向かう道のりに似ている。グリーンピアが無駄の象徴と揶揄される意味をイヤでも痛感するアプローチだ。 突然視界が開けると、そこには広大な駐車場があり、プールや体育館のある運動棟、テニスコートなどが点在するのが見える。だが、人の姿はほとんどなく、一見、廃墟のようだった。それもそのはず、この日はスポーツ棟が休業日で、とりわけ人が少ないのだった。 ホテルには広い車寄せがあり、ちゃんとしたエントランスが構えられている。そこには液晶のウェルカムボードがあって、チェックインするすべてのグループの名前が表示される。ロビーは広く、吹き抜け構造だが、あるものはフロントと売店のみ。正面にはゆったりとしたロビーラウンジもあり、一応メニューが出ているが、係は不在で、事実上開店休業状態だ。 フロントにはギャル風の係が立っていた。一見して、こりゃ、ろくなサービスは受けられないだろうと思ったが、意外にも彼女のサービスは丁寧で心がこもっていた。自然な笑顔を浮かべながら、館内設備の利用法やレストランの場所について親切に説明してくれただけでなく、この日は大浴場がメンテナンス中で18時までは利用できないということも、こちらが恐縮するくらい深く詫びられた。見た目で判断してはならぬと反省した次第である。 客室は1階から3階までの主棟に、2階建てのウィングが張り出した構造になっている。部屋番号に「13」はあるが、「4」や「9」の付く番号はスキップされており、「14」や「19」もない。今回用意されたのは主棟の2階にあるツインルーム。主棟の1階はすべて和室で、3階には和洋室タイプの特別室もある。 ツインルームは広さが約30平米。240センチの低い天井には何の装飾もなく、また、室内のどこを見ても瀟洒な雰囲気を感じることのないインテリアだ。濃い橙色のカーペットだけは比較的新しいようだが、それ以外は開業当初からのものだと見受けられる。 2台並ぶベッドを最初に見た時は、ずいぶんと長さのあるベッドだと思ったのだが、しみじみ見ると98×195センチサイズで、単に幅が狭いことで長く見えただけであった。寝具はカバーと一体になったタイプで、マットレスも随分と沈み込んでいる。ナイトランプがもろに蛍光灯色なのが、それがムードを壊しているようにも感じられた。 デスクには茶菓子とお茶が用意されているのはリゾートらしい。20インチのブラウン管テレビの下には、ゴツい金庫が置いてある。冷蔵庫も、昔の旅館でよく見掛けた大きなものだ。窓際にはソファベッド、アームチェア、丸テーブルが設置されており、特にファブリックが傷んだソファベッドには布を掛けて対処している。 そして、窓の外にはバルコニーがあって、森林浴気分で新鮮な空気を味わえるようになっている。いつまでも眺めていたいような景観ではないが、雨が降ればしっとりと、日が差せばさわやかに、そして時には霧に包まれ、窓辺に立つ度に違った表情を見せてくれる。 客室内のバスルームは120×160のユニットで、まったく魅力のないもの。カランはベイシンとバスタブ共用で、洗浄機能付き便座もない。アメニティもビジネスホテル以下の最低限の品揃えである。その分、大浴場はゆったりとしており、利用の際は客室からタオルを持参する。 大浴場は宿泊客だけでなく、日帰り入浴施設として近隣の人々にも愛用されている。大浴場入り口では靴を脱ぐことになっているが、その表示がわかりにくく、勝手を知らない人は脱衣場まで靴のまま進んでしまうようだ。脱衣場は換気が悪いのか、いつも蒸して臭かった。浴室は広く、大きなガラス窓からは庭が見えるが、全体の設備はシンプルだ。遅い時間や早朝は利用客が少なく、貸切気分でのんびりできる。 一休みしてから、敷地内の散策に出かけてみた。すでに日没が近く、あいにく雨も降っていたので、簡単に一回りするにとどめたのだが、実際には見て回るほどのものは何もなく、森林浴をしながら散歩をする以外に過ごしようはなさそうだ。ファミリーで楽しむにもそれらしい設備はなく、やはりここはスポーツ合宿やセミナーなどでグループ利用するのが相応しいのかもしれない。実際、個人で宿泊している客はほとんどいなかった。 そして滞在中、食事に一番不自由した。日中は外出していたのだが、朝食と夕食は館内で食べる以外にない。周辺には飲食店はおろか、コンビニエンスストアすらないのである。館内のレストランは1軒。結局、3泊の滞在中、毎日同じレストランで、毎日同じカレーを食べた。店内には数多くのシャンデリアが下がり、華やかな雰囲気があるはずだが、毎晩客がわずかでしんみりしている。 和牛のパキスタンカレーは1,600円。それなりにボリュームもあり、玉ねぎの甘さと独特のスパイスが絶妙である。他にもコースやアラカルトが用意されているが、この客の入り具合では、状態のいい料理は期待できない。下手をすれば在庫整理に付き合わされることになるだろう。その点、カレーならばレトルトでもそう酷くはない。それどころか実際においしかったので、3日連続でも不満はなかった。 サービスは消極的で陰気。注文を取って料理を出したら、あとは知らん顔。水もくれないし、下げ物もしない。コーヒーを追加するには、厨房まで声を掛けなければならなかった。どう見てもやる気がないという印象だ。これほどヒマでは無理もなかろうと同情するが、3日も通えば多少の愛想くらい見せて欲しいものである。また、レストランの料金は7月から改定されたらしいが、もう10月だというのに、ロビーにはまだ改定前の価格のメニューが掲示されていた。 朝食は客数に応じてブッフェになったり、和定食になったりする。今回はグループ客のいる2泊はブッフェで、1泊は定食だった。定食の内容はブッフェと同様だが、盛り付けられている分だけマシに見えた。 1泊目の夜、ホテル内は凄まじい光景となった。その主役は団体で研修に来ていたJRの若者たち。1階は全室その団体が利用しているらしく、セミナーから開放された彼らは、その反動からか想像を絶する盛り上がりを見せていた。酒盛りをしているらしく、奇声を発したり、暴れたりもしている様子。 これは参ったと思いロビーに避難したら、それ以上の状況が展開していた。ロビーはパブリックスペースである。いくら客が少ないと言っても、客室の延長として占拠することは許されない。だが、彼らは浴衣やパジャマ姿で輪になって座り込み、酒を飲みながらバカ騒ぎをしていた。男子よりも女の方がふしだらであった。さすがにこれにはホテルも黙っていられないようで、支配人自らが部屋へ引き上げるようにと注意して回っていたが、いくつも出来ている円陣は一向に動こうともしなかった。 状況からして、宿泊契約解除や強制退去にも匹敵するところだが、支配人は腰が低い。当然、こちらにも低姿勢だった。2階の部屋ではご迷惑だろうから3階の特別室を用意すると言ってくれたが、かと言ってゆっくり眠れるとは思えなかった。おそらく彼らはロビーで酒盛りをすることに罪悪感がなく、マナーに反するという知識すらないのだろう。 要するに仲間とドンチャン騒ぎの出来る場所が欲しいのだ。ならば、大浴場に付帯する休憩室を開放し、そこで盛り上がってもらえばいいのではと支配人に提案して、実際にそのようになったらロビーは静かになった。だが、部屋での騒ぎは収まりそうもない。 散歩がてら、夜景がきれいだという展望台まで行って見た。ホテルから5分ほど坂を上がったところにあるのだが、そこにも若者の声がこだましている。街の喧騒さえ伝わらない高台から見る光の海は息を呑む美しさだが、度を越した騒ぎは神経を逆なでする。結局、部屋を移ることもしなかったが、幸い水泳用の耳栓を持ち合わせていたので、深夜3時まで続いた階下の騒ぎに耐えることが出来た。 2泊目は団体もなく、今度は寂しいくらいの静けさに包まれた。3泊目に遭遇したグループ客は高校生の野球部の合宿だった。溌剌として勢いのある連中だったが、さすがマナーきちんとわきまえており、見知らぬ客にも礼儀正しいのには感心した。 モンタナと言えば、映画「リバーランズスルーイット」を連想する。手付かずの自然に囲まれた美しい川が印象的だったが、この周辺に沼はあっても川は見当たらない。だが、深い木々には、わずかながらも共通点を見出せる。 |
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東京第一ホテル モンタナリゾート岩沼(公式サイト) | |
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