1階にはテナントのカフェがあり、ホテルエントランスよりもカフェの方が目立っているので、意識していないと通り過ぎてしまうかもしれない。エントランスは小さく、フロントロビーもそれほど広くないが、全体に大理石を使い、一部分を吹き抜けにしてシャンデリアを配すなど、限られた空間の中でホテルらしい華やぎを演出する工夫が感じられる。

チェックインしたのは午後10時。繁華街にはまだ人が多いが、ホテル内はひっそりとしていた。最初に用意された客室は表通りに面したツインルームだった。建物の隅にある部屋だったので、他の部屋よりもわずかに横幅が広く、心持ちゆとりがあるようだ。しかし、ちょうどホテルの目の前で夜間の道路工事が始まり、重機やドリルを使った激しい騒音が室内まで響いていたので、フロントに申し出て部屋を替えてもらった。

ところが、裏側の部屋は喫煙室しか空きがないとのこと。タバコ臭いのもイヤだけれど、夜通し騒音に悩まされるよりはマシと、苦渋の決断をして喫煙室に移った。そこは裏側だったので、静けさは申し分ない。タバコの臭いも、廊下では強烈だったが、室内はそれほどでもなかった。今度はコーナールームではないので、横幅が先ほどより狭いが、クローゼットとデスクの大きさが違う以外、設備やレイアウトはほぼ同じである。

いずれも面積は20平米程度とコンパクトで、天井高が240センチと低いため圧迫感は否めない。更に、窓が小さく、裏側には眺めもないので、やや気が滅入る雰囲気だ。ベッドは110センチ幅が2台並び、棒状の枕とスローケットを添えてモダンなテイストを演出している。ワッフル地のデュベカバーは都度替えしないようだが、清潔感に不足はなかった。ただ、中の寝具が化学繊維系の軽いものなので、つるつると滑りやすく、就寝中にずれてくるのが気になった。

家具は古いものを使っているが、しっかりした品物なので不具合はなく、新調されたファブリックとの違和感もない。デスクユニットには、脇に小さい液晶テレビが載り、ちょうど作業スペースのところにポットや茶器が置かれている。邪魔だと思ってどかそうにも場所がないので困った。デスクランプも家具に固定されているので動かしようがない。

その割に、デスクサイドには十分な空きスペースがあることにバランスの悪さを感じないでもないが、これは3人利用時のベッドスペースなのかもしれない。デスクの下には冷蔵庫があり、数種類のドリンクが備わっている。LANはフロントで接続キットを借り、テレビのラインから取る方式だ。

バスルームは140×180センチサイズのユニット。特に面白みもなく、ミラーも小さいので狭く感じる。そしてバスルーム内がカビだらけなのには困惑した。タオルは大小2枚ずつが用意されており、追加希望の場合はフロントまで連絡するように案内書きがある。アメニティは壁掛けディスペンサー式で、その他の用意も必要最低限であった。

朝食は1階のカフェで簡単なものが無料で振舞われる。朝食チケットに800円追加すると最上階のレストラン「オーク」でのブッフェを利用できる。「オーク」のブッフェは通常料金が1,500円とあるので、1階カフェの朝食は差し引き700円相当ということになろう。

「オーク」のブッフェは、アイテムこそ少なめだが、素材を厳選しており、個性的な品揃えであった。トーストの厚切りパン、めかぶなっとう、「育み卵」というブラント卵、スクイーズされたミックスフレッシュフルーツジュースに、あやしげな「やせるヨーグルト」なるものも並んでいる。最上階からは多少見晴らしがよく、ホテル前の川を泳ぐ鯉たちも見える。薄暗い部屋で過ごして晴れなかった気分も、この店に来て少しは改善したような感じがした。

フットワークがよく、値段も安いので、観光やビジネスでアクティブに動きたい人には重宝なホテルだろう。