ホテルオークラ札幌 Superior Double Room |
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Hotel Okura Sapporo |
2008.09.09(火)
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札幌市中央区 |
喜-4
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気品とくつろぎの宿 | 全国的な秋晴れとなったこの日、札幌も心地よい小春日和だった。札幌駅からホテルオークラまで歩くとなると、かなりの距離があるのだが、それすら苦にならない陽気に身も心も軽やかだ。札幌は大都会だが、それでも東京と比べると明らかに空気が澄んでおり、空は高いし、遠くまでくっきりと見える。途中、旧道庁や大通公園で道草をくって、約1時間掛けてオークラへと辿り着いた。
正面玄関にはベルガールが立っており、彼女はにこやかに荷物を持ってフロントまで案内してくれた。フロントはいわゆるカウンターではなく、2卓の対面式のデスクが少し離れて並んでいるスタイル。一組ごとに落ち着いてチェックインが行われるが、手続きそのものは無駄がなくスピーディだった。ロビーを見ると、思っていたよりも狭く感じられたが、その割には多くのイスが置いてあり、待ち合わせにも便利な様子である。 ここがオークラと名前が変わってからは初めて訪れたのだが、もう20年以上も前、友人たちと北海道横断旅行をした際、一度泊まったことがある。当時はホテルアルファ札幌だった。なにしろ遠い昔のことで、もちろんデジカメもなかったから、残っているのはいい加減な記憶だけだ。 それによると、ロビーはもっと暗く、ビジネスマンというよりサラリーマンという表現が似合うおじさんたちが多数いる雰囲気で、活気にあふれたもっと大きなホテルだという印象があった。しかし、実際は敷地も広くはないし、小さな雑居ビルに囲まれた小さなホテルだ。おそらく周辺環境はそれほど変わっていないのではないだろうか。大通公園に近いものの、環境の雰囲気はあまりよくない。 チェックインが終わると、入り口にいたベルガールが部屋まで案内してくれた。エレベータは2基で、ロビーのエレベータホールでは、客が近づくとすかさずスタッフがボタンを押してくれる。客室はレギュラーフロアとエグゼクティブフロアに大別され、後者は高層階に位置し充実した客室アメニティを備えるが、専用ラウンジはない。各フロアには広い部屋と狭い部屋が廊下を境に一列に並んでいる。 今回用意された部屋はレギュラーフロアのスーペリアルーム。35平米の面積はひとりで利用するには十分の広さだ。ドアを入ったところはフローリングになっており、奥の居室はカーペット敷き。その境が緩やかなS字型に切り取られており、室内にやさしい印象を与えている。バスルームの入口がドア側の面ではなく、ベッド側に設けられているのも特徴のひとつだ。ベッドとの間にはブラインド風の衝立があり、クローゼットもこの部分に設置した。 居室はオーソドックスなレイアウトだが、それぞれがゆとりを持って配置されているので、広々と感じられるのがいい。インテリアはスカンジナビア風のシンプルさの中に、ドレープやアートワークの濃い暖色をアクセントとして取り入れており、退屈しない。 ベッドは185センチ幅で、マットレスの厚さは5インチ。寝具はカバーと一体になっているタイプで、スローケットを添えている。デスクユニットは横幅があり、デスクの上も広々と使えるし、大きなミラーの下にちょっとした棚が設けられているのが便利だ。デスク上にはハロゲンのダウンライトの他、デスクスタンドもあるので明るさは十分。液晶テレビは20インチと小さめで、その下は3段の引き出しがある。 冷蔵庫には無料のミネラルウォーターの他、ソフトドリンク類が入っており、それらは367円。無料のインスタントコーヒーとカップ&ソーサーも備わっている。窓際にはゆったりと座れるアームチェアがふたつと丸いテーブルがあり、木の皮をシェードにしたスタンドから、やわらかい照明が当たる。窓の外には通りを隔てたビルが迫り、眺めはよくないが、カーテンはヒダがきちんと揃えられており、それも室内に端整な印象を与えている。 ルームサービスは7:00から23:00まで営業しているが、21:00から23:00の間は軽食4種のみとなる。バスルームは163×245センチの広さで、ベイシントップとバスタブの周囲には天然石を用いたが、壁は石柄のパネルを使った。バスタブの長さは150センチ。アメニティはボトルディスペンサー式で、タオルは3サイズが2枚ずつ。入口は客室改装時に引き戸に改めた方がよかったように思う。 朝食は7:00から10:00まで、1階のコンチネンタルレストランで提供される。オープン前にロビーに行って待っていたら、時間より数分早くオープンした。ブッフェにはそれなりにコストを掛けた料理が並び、単に品数で賑やかに見せるのではなく、思わずどれも食べてみたくなるような工夫が感じられる。そして、それらは実際に美味しい。 ブイヨン仕立ての温野菜、みずみずしいサラダ、スチームしたトウキビ、グラタン、野菜スープ、フレンチトースト、かぼちゃの蒸しパン、タピオカココナツ、ミルクプリン、十勝ヨーグルトなど、朝から欲張って食べたくなるような品揃えだ。オムレツもきれいに焼いてくれるし、松ぼっくりみたいなカタチをしたオークラポテトは、まわりがカラッとしていて、中はふわふわ。サービスも行き届き、テーブルに空いた皿が溜まることもない。 チェックアウトも大変丁寧だった。ふたつのデスクがすでにふさがっていたので少々待つことになったが、係からソファを勧められ、程なく順番が来ると「大変長らくお待たせして申し訳ありませんでした」と声が掛かった。手続きの際にも、係の振る舞いや言葉のいたるところから誠実さが感じ取れ、実に好印象だった。ロビーではマネジャー自らが客に言葉を掛け、正面玄関まで見送っている。 ここには最高のベッドもないし、最新のバスルームもないが、ホテルが本来持たなければならないものに満ちている。それが旅人の心をどれだけ和ませるかを知っているのだろう。このような宿で心底くつろげて満足できる人こそを、旅慣れた人と言うのだと思う。 |
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ホテルオークラ札幌(公式サイト) | |
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