ザ・ペニンシュラ東京 Deluxe Suite |
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The Peninsula Tokyo |
2008.01.04(金)
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東京都千代田区 |
哀-4
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傲慢なほどの一流気取り | 2007年9月、香港の名門ホテル、ペニンシュラが東京にオープンした。2005年にはマンダリンオリエンタルが一足先にオープンしており、2009年にシャングリラが開業すれば、アジアの歴史あるラグジュアリーホテルが東京に顔を揃えることになる。アジア勢は、いずれも東京駅周辺に腰を据えた。東京の心臓部ともいえるオフィス街に隣接する洗練された再開発区域は、アクセス、環境、イメージ、どれを取っても最高級ホテルとして申し分のない立地条件だ。
近頃オープンした外資系ホテルのほとんどが高層複合ビルの一部を成しているのに対し、ペニンシュラ東京は敷地に建つ24階建ての一棟すべてがホテルであることを特徴としている。だが、周囲を建物に囲まれた環境では眺望の優れた客室はごく一部に限られ、多くの部屋から見えるのは驚くほど近くに迫る隣のビルだ。その点、超高層ビルの高層階を占めるホテルならば、どんなに条件の悪い部屋でも、これほど眺めにガッカリすることはないだろう。ここは、眺めの悪い部屋に当たっても、隅々までペニンシュラであるということに価値を感じる人にこそ相応しい。 この日、ホテルに到着したのは14時半過ぎだった。狭い車寄せでは次々にやってくる車をさばききれず、いささか混乱している様子。敷地内に入れない車が表通りに渋滞していた。それでも、従業員たちは笑顔を絶やさず、優雅に振舞おうと努力している。だが、開業から4ヶ月が経ち、そろそろオペレーションにも慣れてきた頃だろうに、彼らの振る舞いから感じ取れるのは、優雅さよりも要領の悪さだった。エントランスで荷物を預ける際にも、タグにただ荷物の内容を記入するだけなのに、妙にモタモタとしており、本当に大丈夫かと不安になった。 入口は中央の回転扉のみ。両脇にスイングドアがあるが、閉鎖されている。それは、ロビーラウンジの座席に、扉が開閉する度に冬の冷たい風が当たるからだと思われる。香港の気候ならまだしも、ここは東京だ。扉から外気が入るような設計も、その風が当たる場所にラウンジの席を設けるのも、頭がどうかしている。しかも狭い敷地で香港の壮麗な空間を再現するなど所詮不可能。香港をご存知の方ならよくお分かりだと思うが、窮屈なロビーラウンジも、脇にちょこっと設けられた高級宝飾品のブティックも、まるで寸足らずのレプリカを見るような哀れさが漂う。それなら、いっそのことこの狭い空間に合ったレイアウトを考えた方がよかったのではないか。このロビーを見る度に、そんな思いにさせられるのである。 フロントカウンターはロビーの奥にあり、300室以上の客室を擁するホテルとしてはとてもこぢんまりとしている。チェックインタイムより少し早めだったので、すぐに手続きをすることができた。だが、ここでも入口と同様に、優雅というより鈍くささが際立つ。ふと後ろを振り向くと、チェックインを待つ人の行列がロビーの方まで続いているではないか。ちんたらと気取ってないで、さっさとしてもらいたいものだ。 手続きは済んだが、部屋の最終チェックが残っているので、案内まで少し待つように言われた。こうした状況は日常茶飯事らしく、部屋への案内待ちをさせられる客のために、待合ラウンジが用意されていた。それは、5階にある小宴会場だった。通常、宴会場へは低層階用のエレベータでアクセスするが、今回は客室専用のエレベータで案内された。客室専用エレベータは4基。エレベータホールはフロントカウンターの奥にあるので、宿泊客以外が立ち入りにくい構造だ。 5階の臨時ラウンジには、セルフサービスのソフトドリンクと雑誌が用意されているが、最終チェックを待つだけなので長居はいないだろうと思い、宴会場用のイスにただ座って待った。後からも次々に客が来たが、その客たちは10分と待つことなく、客室へと案内されていった。いったい何組の客をここで見送ったことだろう。というか、いったい何時まで待たされるのだろう。もう30分以上が経過してる。その間にも、ここへ案内して来た係が何度となく出入りしており、その度に顔が合うのだが、特に声を掛けられるでもなかった。 しびれを切らし、こちらからどうなっているのか尋ねてみた。「まだご案内がありませんか?」との返事だった。案内があったのなら、こんなところにいるはずないではないか。調べるように頼んだが、その結果が伝えられるまで更に30分を要した。そして、やっと部屋の用意が整ったと言って、何事もなかったように、フツウに部屋まで案内した。しかし、ここまで放って置かれて、こちらは怒り心頭である。 部屋に案内された時点で、待たされた理由を尋ねたが、対応した係はわからないと答えた。ではわかる人をただちに呼ぶように告げると、責任者を名乗る女性がやって来た。彼女の言い訳は、最初に予定していた客室の電動カーテンに不備が見つかったため、アサインをし直したことで時間を要したというものだった。 であれば、なぜ不備が発覚した時点で状況をインフォメーションしないのか。また、待たせているという自覚がありながら、なぜ何の事情も知らない係に通常通りの案内をさせたのか。そして肝心なのは、客の時間を何だと思っているのか。残念でならないのは、この段に至るまでにホテルとして出来る策は幾つもあったのに、ただひとつとしてそれを講じなかったことだ。彼女は一連の非を認めて詫びの言葉を口にしたが、その態度からは反省よりも名門ホテルの誇りの方が強く感じられた。このホテルにプライドがあるのなら、このような高価なホテルに泊まる客の時間もまた高価であると肝に銘じるべきである。 係が引き取った後の客室は、快適なプライベート空間だ。今回利用したのは116平米のデラックススイート。特別スイートのあるフロアを除く各フロアの先端部に2室ずつあって、ゆとりあるレイアウトだけでなく、大きなコーナーウィンドウから皇居や日比谷公園を望む景観もまた魅力だ。だが、せっかくの正面向きでも、階層によって眺めには大きな差があるので、できれば13階以上の高層階を希望するといい。 ホワイエには、エクストラのトイレとクローゼットの他、隣室へのコネクトドアがあるが、奥まった位置にあるにもかかわらず、この扉から洩れ聞こえる隣室の音がかなり気になる。リビングは入口からまっすぐに進んだ先にあって、4人用のダイニングセット、ソファセット、壁に向かったライティングデスクが、ゆったりと配置してある。テレビは42インチのプラズマで、DVDやサラウンドシステムを備える。ミニバーには様々なアイテムが用意され、冷蔵庫にもぎっしりと飲み物が詰まっている他、無料で使えるエスプレッソマシンやローズウォーターもある。それらは壁にすっぽりと収納されて扉で覆えるので、部屋の美観を損なうこともない。カップや茶器も室内の質感に相応しいものが用意されている。 デスクは漆のような落ち着いた風合いの塗装が施されており、手をかざすと光る電話機や、ホテル内外で使用可能な携帯電話などと共に、伝統的なデザインとテクノロジーとの混在が印象的。コントロールパネルでは、室内温度はもちろん、湿度、外気温、風向、風速、紫外線量をも表示する。また照明のコントロール性もシンプルにして効果的。最大光量の他、2種類のムードモードがあって、ワンタッチで調整できるのがいい。リビングの天井高は250〜290センチで、間接照明のある凝った意匠だ。窓は足元から横幅一杯に取られており、昼夜を問わず素晴らしい眺めを楽しめる他、リビングの片隅にはクラシカルなデザインの望遠鏡も設置され、インテリアに趣きを添えている。 ベッドルームとバスルームはドレッシングルームの奥にレイアウトされている。ドレッシングルームだけでもビジネスホテルのシングルルームほどの広さがあり、2箇所の扉付きクローゼットと、ワイドなバゲージ台、ドレッサーを配置。金庫は一見分かりにくいような位置に隠されており、中にはジュエリー用のトレーも備えている。姿見は250センチの高さがある三面鏡だ。 バスルームもまた魅力的に造られている。床から天井までのフレンチドアを押し開くと、正面にバスタブと窓のある約12平米の空間が広がる。深くて大きなベイシンは左右に2面。トイレは独立しており、シャワーブースには大理石の腰掛とレインシャワーを設けた。全体に天然石をふんだんに使いながらも、鏡面を多用することでモダンな雰囲気に仕上がっている。 バスタブは180センチの長さがあり、見やすい位置に15インチの液晶テレビを設置。バスタブには天然石の吐水口から湯がやわらかく注がれるのもユニークだ。バスタブ脇のパネルでは、テレビやハンズフリー電話のリモートコントロールの他、ライティングのコントロールも可能。中でも「SPA」モードは、ボタンひとつで照明が落ち、気分を落ち着かせるBGMが流れ、自動的にプライバシーボタン(ドントディスターブ)が点灯する便利なボタンだ。 アメニティは甘く官能的な香りのDAVI。肌触りのいいタオルは3サイズが4枚ずつ用意される。やや気になったのは、天井の木目部分に残っている多数の手跡だ。おそらく施工時に残されたものだと思われるが、かなり目立つので客室係も気が付いてしかるべきである。 ベッドルームは他のセクションと比較するとコンパクトな印象だが、むしろ落ち着きがあっていい。ベッドはふんわりとやわらかく、軽やかなデュベや頭を包み込む枕を揃えている。ベッドルームにも42インチプラズマテレビとフルアイテムのミニバーがあり、窓際にデスクを設けた。リビングの開放感とは対照的な雰囲気は、ダイアリーを書きながらナイトキャップを傾けるのにピッタリだ。 ルームサービスはもちろん24時間営業しているが、単にワゴンで運んでくるだけでなく、希望すればすべての客室に備わっているダイニングテーブルにセッティングしてくれるし、食事後の片付けも迅速だ。軽食も充実しており、味もいい。 このように、客室内は非常に快適である。モダンだが無機質とは程遠く、上品に装飾が施されており、室内に存在するものはすべてがインテリアの一部としてマッチするよう厳選されている。だが、一方で不便な部分もあった。一番困ったのは空調である。調節がしにくく、ちょっと温度を上げれば急に暑くなるし、逆に少し下げれば凍えそうになる。また、すべてのコントローラとテレビ操作は英語表記のみで、操作マニュアルすら用意していない。これでは英語がわかるわからないの問題ではなく、日本国内で商売をする姿勢そのものを疑われるだろう。こうした勉強不足が、利用客の目に傲慢さとして映ることも、十分想定した方がいい。 滞在中はほとんどの時間を室内で過ごしたので、レストランを利用したのは「Peter」のランチだけだった。予約をしようとコンシェルジュに電話したら、単純に電話をレストランに回された。あえてコンシェルジュに頼むのは、どんな客であるのかという情報を店側が把握できるようにするためである。また、コンシェルジュはハウスゲストがいつ何処で食事をしているのかを把握することもできる。そして何より、到着時に不手際があったのでサービスに留意するようレストランに伝達するべきであった。なのに電話をつなぐだけとは、まったく期待はずれだ。 「Peter」は伝説にもなっている香港の総支配人の名前。ロビー階から専用の直通エレベータで24階へ行き、バーを横目にメタリックなアプローチを抜けてダイニングホールに至る。ガラスやピアノフィニッシュの塗装など、光沢のある内装に、藤色がよくマッチしている。テーブルの形状やレイアウトもユニークで、どこか近未来的だ。 サービスに当たる若い男性たちは、みなシャツ姿。体型で採用しているのかと思うほど、全員細身で似た雰囲気を持っている。そこから想像される通りのカジュアルなサービスだが、よく行き届いていた。ランチはプリフィクスで、3品だと4,500円、4品で6,500円。コーヒーは別料金で700円。料理も洗練されており、値段の価値は十分に感じられた。 滞在中、SPA内にあるジムとプールは自由に利用することができるが、これが結構面倒だった。5階にあるSPAのレセプションに立ち寄り、いちいち問診表のようなものに記入してチェックインする必要がある。係の対応は丁寧だが、ホスピタリティが感じられず、できることならこのレセプションをスルーしたいところ。 ジムは狭いものの、インストラクターが常駐し、求めれば適切にアドバイスしてくれる。プールは外光が入り、のんびりとまどろむにも適している。プールサイドには心地のよいベッドが並び、係がタオルを敷いてくれる。プールサイドのジャクージは41度に設定されており、けっこう熱め。ロッカールームにはシャワーブースが2室あり、ESPAブランドのアメニティが用意されている。 ホテル滞在の全体的な印象としては、概ね満足だった。これほど居心地のよい客室には、なかなか出会うことがない。だが、サービスには不満というより不信感が残った。出発時、支払いをしている最中に、初日に挨拶に来たのとは別の責任者が出てきて、到着時の不手際を詫びたが、その言葉にも態度にもまごころを感じることはなかった。 支払いを済ませると、今度は会計明細に署名をしろと言われた。署名欄の下には、出発後に加算すべきものが出てきた場合にはその支払いを保証するという文言が記されている。そんなものに署名をしたら安心して出発できない。第一、個人で予約をし、会計もきちんと済ませている客に、そのような署名を求めるなど、聞いたことがない。どういうつもりかと聞いても、会社の方針だと突っぱね、しまいには以前働いていたホテルでも同じようにしていたと大嘘まで飛び出す始末。 別の責任者を呼ぶように言うと、初日の女性が出てきた。出勤しているのなら、最初から出てくるべきではないのか。やっぱり、反省などしていない証拠だ。それでいて、自分達は名門気取りをしたくないし、していないと強調していた。ビバリーヒルズあたりの高飛車なサービスと比べれば、自分達はフレンドリーですなどと言っても、日本の水準には遠く及ばないのに。そして「またぜひお越し下さい。お待ちしております」と見送られた。実に商売熱心であるところは、さすが香港の会社。言われなくともきっとまた来るだろう。快適な部屋に会いに。でも、また会いたい人はここにはいない。 |
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ザ・ペニンシュラ東京(公式サイト) | |
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