寝心地よりも立地 |
2007.11.10(土)
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レム日比谷 Single Room | |
REMM Hibiya |
楽-1
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阪急阪神第一ホテルグループが手掛ける新しいブランドのホテルが誕生した。場所は日比谷。帝国ホテル、東京宝塚劇場、日比谷シャンテに囲まれた好立地である。その名からすぐさま想像できるように、ホテルのメインコンセプトは「眠り」だという。
ビジネスホテルの常識を超え、シティホテルに迫るクオリティの客室を提供する、いわゆる「プレビジ」タイプのホテルだが、帝国ホテルやペニンシュラが建ち並ぶ特別な地域に乗り込むだけに、気合いも十分に入っているはずだ。また、第一ホテル東京や第一ホテルアネックスといった同じグループの姉妹ホテルが、徒歩圏内に既存することから、新しい客層をターゲットとしているに違いない。いったい誰に好まれるようなホテルなのか。早速泊まってみた。 エントランスはこぢんまりとしており、一見するとホテルとは気が付かないような雰囲気だ。そこを入るとフロントロビーへと続く階段と、1基のエレベータがある。そのエレベータはロビーフロアとエントランスフロアのみを往復している。2階のフロントロビーには、一面の窓から明るい自然光が差し込み、一角には「Cafe and Meal MUJI」があって、朝食(1,000円)もここで提供している。 フロントカウンター前には、開業祝の胡蝶蘭が多数並ぶ他、床にはミトコンドリアか巨大な昆虫の卵のような不気味なクッションソファが点々と置かれている。チェックインは比較的スムーズだった。レジストレーションカードには署名のみを求められ、宿泊料金は前払いする仕組み。そして、緑茶、紅茶、数種のハーブティの中から、好みのティーバッグを選ばせるサービスがあるが、結構な料金を取るのだから、全種類をあらかじめ部屋に用意してあってもいいくらいだと思った。ここは基本ビジホなので、部屋への案内は当然ない。客室へのエレベータは2基。フロント前にあるので、妙な人が客室階に侵入することも少ないだろう。 今回アサインされたのは17階の客室だった。18階建てなので結構上のフロアだ。フロアのカラースキームは2種類あって、赤白のと白黒のが2フロアごとに繰り返される。上から見ると、18階、17階は赤白、16階と15階は白黒…という具合。そして、基本的に偶数階が禁煙で、奇数階が喫煙になっているが、3階は奇数階ながら禁煙階だ。用意された17階は赤白の喫煙階。禁煙を予約したのになぁと思いながら部屋に入ったが、まだ新しいからか、タバコの臭いは気にならなかった。 客室は1フロアにシングルが14室とツインが2室あって、窓側にシャワーブースのあるタイプは線路側のシングル5室のみである。今回の部屋も窓際シャワーブースタイプだが、ホームページに載っているレイアウト図とは違う配置になっており、こちらの方がよいと思われる部分も少しはあるが、概ねホームページで紹介されている方がよいように思われる。部屋の広さはどちらも約15平米で変わらない。違いの原因はエントランスドアの位置にある。 用意された部屋はエントランスドアとバスルーム入口のドアが互い違いの位置にあるので、バスルームへはベッドを回りこまなければ行かれない。ホームページ上の部屋はエントランスからまっすぐのところにバスルーム入口があるので、ベッドはバス側の壁にピッタリ付けてある。用意された部屋は壁にベッドを寄せられないので、その分、部屋の中央に迫り出して置いてある。ただでさえ狭い居室では、このわずかな迫り出しが、致命的な圧迫感を生じさせている。 エントランスを入るとすぐにマッサージチェアがあるのだが、ベッドの迫り出しのために、置き場所の幅が狭くなっているため、その奥にあるドレッサー兼デスクに行くのに邪魔で仕方がない。そのドレッサー兼デスクも、幅100センチと小さい上に、下部の左半分を冷蔵庫が占めており、デスクに向かった際に足が入るところは幅50センチしかない。天板はガラスで、引き出しはないがスライド式の棚が1段設けられている。添えられたイスも申し訳程度の小ささだ。デスクの上には小さな三面鏡と、無料のミネラルウォーター、ちょっと立派なメモ用紙ホルダーが置いてある。LANは無料だが、便箋や封筒は備わっていない。 デスクと反対側のベッドサイドには金庫が設置されているが、クローゼットはなく、壁にハンガー掛けがあるだけ。ハンガーもアルミのようなヤワな金属製だ。バゲージラックはバスルーム内の窓際というユニークな場所に置かれているが、これまた小さくてビックリだった。マッサージチェアの脇には、小さな丸いテーブルが用意されており、天板上に取っ手があって軽々と持ち上げられるので、好きな場所に移動できるし、断面が「コ」の字状なのでベッドサイドなどにも置けて便利。 ベッドは140センチ幅。オリジナルのマットレスや枕は好印象だが、ベッドリネンはザラザラ。快眠を謳っていながらこれでは片手落ちである。だが、テレビはいい。32型液晶テレビがベッド正面の壁に掛かっており、地デジやBSデジタルに対応している他、ビデオオンデマンド(1,000円)も楽しめる。発光ダイオードの間接照明を埋め込んだベッドボード上には、葉っぱのオブジェがディスプレイされているが、そのオブジェの位置が中央でもなく、ベッドに合っているでもなく、アンバランスな印象があった。間接照明とデスクライト兼ナイトランプは調光が可能だ。 バスルームが窓際にあるため、カーテンはバスルームの手前に掛かっている。カーテンの赤も、部屋の重要なアクセントになっているが、これを閉じると、本当に窮屈になってしまう。また、ロックしてあるとはいえ、ベッドやソファからドアがすぐに近いというのは、どうにも落ち着かなかった。 この部屋の目玉でもあるバスルームは、全体で160×200センチという広さ。居室とは、磨りガラス風に見えるプラスチックのヤワな扉で仕切られている。うっかり寄り掛かったら壊れそうだ。バスタブはなく、80×110センチのシャワーブースのみを設けている。シャワーブースの床から窓台までの高さは75センチなので、やもすると外から丸見えだが、お湯を出せばたちまち窓は曇ってしまうので、ブラインドを下ろすまでもなかった。日中は明るくて雰囲気のいいシャワーブースだが、窓際なだけにとても寒かった。 シャワーはハンドの他にレインもあるが、水流の強さはいまひとつで小雨。丸いイスも置いてあるが、ここに腰掛けてひたすら浴びていたいほど快適なシャワーではない。また、窓台の縁に深さ1センチ程度の窪みがあって、ひとたびシャワーを浴びると、その後はずっと水が溜まったままになるというのは、明らかに設計ミス。 シャンプー類はボトルディスペンサーだが、補充を怠っているのか、中途半端な量がみっともない。ホームページ上の部屋ではベイシンが窓に向いて設置されているが、この部屋では柱がある関係で壁に向いている。このようにレイアウトの面でいくつかの相違点があるが、機能の点で劣ることはなくても、使い勝手はかなり悪くなる。 このホテルに1泊してみて、心地よく目覚められたかといえば、まったくもってそうではなかった。ビジネスホテルを基準に考えれば、高品質だと感じられる部分もあるが、力を込めたはずのコンセプトにさほど説得力はない。これで1万円程度ならばいいが、現状の1万5千円近い料金には尻込みしてしまうというのが本音だ。で、いったい誰に愛されるのか。やはり、最大の魅力は日比谷という立地だろうと思う。この地に眠る(なんて死後の世界みたいだけど)ことに価値を感じる人には悪くないホテルかもしれない。 |
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レム日比谷 |
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