音を出すということ |
2007.10.19(金)
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ホテルJALシティ宮崎 Double Room | |
Hotel JAL City Miyazaki |
喜-3
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この日、生まれて初めて養護学校でコンサートをした。会場に楽器を設営し、音響のチェックとリハーサルを念入りに行なった。これはいつも通りである。会場は体育館。今回の公演を実現させてくれた宮崎県教育委員会の担当者も、客席でリハーサルを見守ってくれていた。当初は舞台の上で演奏する予定だったが、皆で意見を出し合って、できるだけ身近で音楽を体験してもらおうと、同じフロアに楽器を下ろすことにした。
開演前に、校長室へ挨拶に行った際、自分の不安を打ち明けた。観客はこの学校の生徒たちである。年齢は様々で小学生から高校生に相当する子供までが通っており、みなどこかに障害を抱えている。障害の重さも生徒によって差があり、接していても障害があるとは気付かない子もいれば、ベッドから一歩も動けない子もいる。果たしてその子たちに、我が演奏は受け入れてもらえるのか。正直自信がなかった。 公演に際し注意することはないかと尋ねると、先生はこう答えた。多くの子供は集中力が持続しないため、過去の例から見て、10分程度で退席せざるを得ない子が続出するかもしれない。また、大きな音に反応して奇声をあげてしまう子がいるかもしれない。 それを聞いて、逆に質問をしたくなった。「先生方は、子供たちに接する時、いつもどんなことを心掛けていらっしゃいますか?」。答えは、ずばり「笑顔ですかね」だった。演奏中はほぼ背中を向けた状態が続くからスマイル作戦は使えないし、音楽を聴き手の心に注ぎ込むには、聴き手にも心を開いてもらわなくてはならない。いよいよ自信がなくなった。それでも開演時間はやって来た。 拍手に迎えられて出て行くと、目の前にはいつもと違った光景がある。ベッドが何台も並び、横たわったままこちらに目を向けている子たち。車椅子に座った子たち。みんな好奇心をもって見てくれている。いつものように演奏を始めた。すぐに背中で感じるものがあった。なんだ、何も心配することなどなかった。彼らほど優秀な観客はいないくらいだ。貪欲に音楽を吸収しているのがよくわかる。そうとわかればこちらも調子付いて、いつしか弾く喜びを全身で表現している自分がいた。 途中、子供たちが参加できるコーナーを設けてあった。「では、この楽器にさわってみたい人!」と投げかけると、あちこちから必死に「さわりたい!」との意思表示が返ってくる。何人かを指名して前に出てもらうのだが、最後のひとりを選ぶ際、飛び切り熱烈なサインを送ってくる車椅子の子がいた。この子はムリかな?平気かな?弾かせてやりたいな!と思いつつ、介護の先生に目を向けると、強く頷いてOKサインを出してくれた。 いよいよその子にとっては初体験となる楽器演奏である。低い車椅子に座ったままで、なかなか鍵盤に手が届かないが、精一杯手を伸ばし、か細い指で、やっと下鍵盤の一音を打鍵することができた。音が出た時の彼女の喜びようと言ったら、何と素晴らしいのだろう。楽器を弾いて、あんなに嬉しそうにする人間を見たことがない。弾く喜びを全身で表現するなどといい気になっていた自分が恥ずかしい。今すぐ彼女に弟子入りすべきではないか。何かを与えるつもりで行ったのに、それよりはるかに大きなものを与えられて帰ってきた。この日のことは生涯忘れられないだろう。 終演後は、その足で東京へ戻ることになっていたが、もう少し宮崎に留まりたかったので、この日はJALシティに泊まることにした。前日のケンジントンと同じ通り沿いにあり、徒歩でも2〜3分の近さ。市街地に用があるなら便利な立地である。JALシティはビジネスホテルの豪華版的ブランドで、エクセルホテル東急あたりと客層が重なる感じだろうか。車寄せはないが、エントランスを入ると大理石造りの明るくて広いロビーになっている。 フロントカウンターは奥にあり、その前には様々なスタイルのイスやソファが並んでおり、インターネットコーナーで作業をしたり、友人とくつろぎながら歓談している人もいる。同じロビーフロアにあるレストランから、ドリンクを運んでもらうことも可能だ。そのレストランはビストロ風で、ディナーが2,200円からだという。 フロントのサービスは、キャビンアテンダント風で、節度のある落ち着きを感じさせる。連日ビジネスホテルに泊まっていたためか、JALシティがとても高級で洗練されて見えるのには参った。エレベータは2基で、しばしば待たされるが、エレベータホールに展示されている椎葉村の風景写真に思いを馳せて待つといい。 今回の部屋はコーナーにある20平米のダブルルーム。建物は「T」字型で、上辺が橘通りに面している格好だ。シングルルームが並ぶ列の一番奥にあるダブルルームなので、奥行きはシングルと同じだが、横幅にゆとりがある。入口付近が無駄に広いのに、クローゼットはシングルと同じ扉なしの狭いものだけ。バゲージ台兼チェストと姿見もこのホワイエ部分に設置している。居室との間にはスリット状の仕切りを設けて変化を付けた。 ベッドは160×200センチサイズ。寝具はカバーと一体になっているタイプで、マットレスはどこのものかわからないが、まあまあだった。冷蔵庫キャビネットの上には21インチのブラウン管テレビが載り、その脇にはデスクを設置。無料のLANを備え、丸いミラーと明るい色のイスがアクセントになっている。全体的にダークブラウンとベージュでコーディネートされた室内は、暖かみと落ち着きがある。窓は小さいが、明るい色のカーテンの上にブラケットが設置されているのが珍しい。湯沸しポットはなく、電磁サーバ。ハーブティとマグカップも用意されている。 バスルームは140×180センチのユニット。それでも昨日までに比べたら天国のような広さと清潔さである。バスタブカランはサーモスタット付きで、シャンプー類はアプリケータ式だが、タオルは3サイズが2枚ずつあった。シングルとの差はわずか3平米で、値段の差は2,500円。違いはベッド幅に、チェストとスリット仕切りがあるかないかだけである。 朝食ブッフェは1階のレストランで1,260円。和洋揃うがあまりバラエティは多くないが、コーヒーは運んでくれる。久しぶりにヨーグルトやトマトジュースにありつけた。もう冷や汁はいいや。大半の客は出張の男性ビジネスマンだが、中には結婚式かなにかで来たらしい中年夫婦の姿もあった。夫のためにブッフェ台からごはんや味噌汁を運ぶ妻。その動作はとても自然だった。場所がホテルに変わっただけで、自宅とかわらぬ営みが見られるのだろう。そこには夫婦の絆のようなものが感じられた。 |
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ホテルJALシティ宮崎 |
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