ラグジュアリーホテルの真髄 |
2007.05.01(火)
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ザ・リッツ・カールトン東京 Club Deluxe Room | |
The Ritz-Carlton Tokyo |
喜-4
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2007年3月30日、東京の新名所・東京ミッドタウンにザ・リッツ・カールトン東京が開業した。ザ・リッツ・カールトンが東京に進出するという話は随分と前から持ち上がっており、皇居に面した半蔵門の東條会館がザ・リッツ・カールトンになる計画もあった。結局、大阪に先を越され、東京はほぼ10年遅れてオープンを果たした。
東京で最も高いビルの47階から53階を占める248の客室。数々の伝説を生んできた卓越したサービス。フォーシーズンズホテル椿山荘東京と同じフランク・ニコルソンの洗練されたインテリア。このホテルの魅力をあげれば切りがないが、東京でナンバーワンになることを前提に誕生したホテルだけに、料金もまたナンバーワンだ。 ザ・リッツ・カールトン東京を支える「紳士・淑女」諸君の意気込みは、泊まる前から十分に伝わって来ていたが、この高額な宿泊料金に値打ちを感じるには、意気込みや理想を掲げるだけでなく、パーフェクトな滞在を実現してもらわなければならない。さあ、平日とはいえ、ゴールデンウィーク中の滞在で、どこまで期待に応えてくれるだろうか。 ミッドタウンの周辺は非常に多くの人々で混雑していたが、ザ・リッツ・カールトンのメインエントランスはそれほどではなかった。広い車寄せの割に小ぢんまりとしたエントランスには、ドアマンが常駐し、人が通る度に扉を開けている。付近には十分な人数の係が配置されているのだが、その多くは若く不慣れであった。荷物の扱いも危なっかしく、それらが目の届かないところに運ばれていくのを見届ける際は、かなりの不安が伴った。 ベルデスクで名前を尋ねられ、確認が取れると、係がクラブラウンジまで案内してくれた。エレベータホールに至るまでには、ダニエル・オストの見事なフラワーアレンジメントがディスプレイされていたが、照明が抑えられており、せっかく美しいバラの色が映えない。また、エントランスとは違い、館内には往来する人が多いが、それでも、ミッドタウン方面からの連絡通路にはホテルの係が立っており、ホテルに入ろうとする人に「どちらにお越しでしょうか」と声を掛けるなどして、人の流れはコントロールされている。もしそれがなければラグジュアリーホテルの雰囲気は崩壊してしまうだろう。 地上階からエレベータに乗り、ロビーのある45階へ。フロントの他、主なレストラン・バーもこの階にあるため、ここも多くの人で賑わっている。2層吹き抜けの天井に、5連の控えめなシャンデリアが下がり、壁面には大きな絵画が飾ってある。だが、その絵画はとてもフランク・ニコルソンがチョイスしたとは思えず、むしろ調和を乱してるように感じられた。そして、フロントカウンター前には、チェックインを待つ人が長蛇の列を作っているが、その光景を見るだけでもゾッとする。 クラブラウンジは最上階53階にある。ロビーからは客室階専用エレベータに乗り換えて上昇。53階エレベータホールにも係が立っており、客をスムーズに誘導している。クラブラウンジはとても広く、大きくゆったりとしたイスやソファが並んでいる。テーブルまで案内され、まず飲み物を勧められた。その後、しばらくしてから別の係が来てチェックインの手続きをした。 だが、予約内容が間違っていた。更によくないことに、「予約係にも確認したが確かにこの内容で承っている」と言い張られた。しかし、予約確認メールに記載されてる内容は、ホテルが主張するものとは異なっている。どこでどう間違ったのか知らないが、勝手に内容を変えられては困る。そんな手違いもあり、部屋が用意されるまでに40分以上の時間を要した。 その間、ラウンジで提供されるアフタヌーンティーを楽しんだ。中央のフードテーブルにはスコーン、サンドイッチ、キッシュ、フルーツカクテル、小菓子が美しくディスプレイされ、ポットでサービスされる紅茶も美味しかった。アイスティもリーフから淹れたものを出してくれる。なかなか居心地のいいラウンジだが、床がベコベコなのが気になった。人が通る度に地震のように揺れ、「とうとう来たか」という不安に襲われる。 やっと用意された客室は、同じ最上階にあるツインルーム。荷物が届いたのは、それから更に1時間後だった。標準客室は52平米ということになっているが、それよりも若干広い感じがする。インテリアはヨーロピアンスタイルのクラシカルなテイストを基本としながらもモダンに仕上げているが、フランク・ニコルソンにしてはアッサリしている印象を受けた。 内装のクオリティは高い。家具やファブリックを始め、隅々に至るまで高級感があり、色彩やデザインを控えめにすることで、それぞれの高い質感が際立つよう工夫されている。東京で最も高い場所にあるホテルルームからの眺めも見事だ。窓の大きさや形状は部屋によって様々だが、このタイプは比較的幅が広く大きい窓を持っている。ドレープとレースはいずれも電動式で、作動音がとても静か。 窓際にはデスクを設置し、対面して座れるようにふたつのイスが置いてある。その脇にはソファがひとつ。クローゼットはふたつあり、それらに挟まれるようにチェストを設置。収納スペースは十分だ。チェストの上に据えたテレビはソニー製の40インチ型。地デジ対応で、DVDプレイヤーも備える。 ベッドは140×200サイズが2台並ぶ。高さは55センチ。マットレス、デュベ、ほんのりいい香りがするベッドリネン、いずれもホテルとしては最高品質で、例えばウェスティンのヘブンリーベッドとは比較にならないほど素晴らしい寝心地だ。照明はスタンドが主になっており、蛍光灯もシーリングもなく、とても落ち着いた雰囲気を作り出している。 ミニバーキャビネットは入口付近に設けている。冷蔵庫の商品は、ソフトドリンク703円のほか、55,440円のレミーマルタン・ルイ13世や、2,310円のスナック類など、かなり高額だ。また、客室備品の茶器は瀬戸の「ながえ」製で、購入を希望すれば50,400円で分けてくれるらしい。 大理石造りのバスルームは約13平米。天井高も240センチ近くあり、ちょっとしたビジネスホテルのシングルルームならすっぽり入ってしまう広さだ。2箇所のベイシンは深さがあって使いやすく、レインシャワー付きのシャワーブース、独立したトイレ、20インチ液晶テレビなど、設備も充実している。アメニティはブルガリ45mlが1本ずつ。タオル類は豊富に用意され、いずれも最高の肌触り。クローゼットに用意されたバスローブやパーソナルスリッパも使い心地がいい。 ベッドもそうだが、直接肌に触れるもののクオリティは極めて高く、それが深く印象に刻まれるのは確かだ。それ以外にも、メモ用紙1枚に至るまで、最高級ホテルに恥じない品質のもののみを使っており、まったく妥協がないのは実に見事である。 46階にはスパ&フィットネスがあり、ラグジュアリーホテルに必要なスパ施設が十分に整えられている。プールやジムは宿泊客なら無料で利用できるが、ロッカーの使用料は1,050円、スパエリアは5,250円の使用料が掛かる。ロッカーを利用しない場合でも、ロッカールームでの着替えとシャワーの利用は可能なので、サッとプールで一泳ぎしたい場合などはそれで十分だ。プールは20メートルで、プールサイドのデッキチェアにはクッションの上にタオルが敷かれている。照明がやわらかく、プールサイドでも十分にくつろげる雰囲気。ジムには最新マシンが揃い、親切で明るいインストラクターが常駐してる。 部屋に戻ると、すでにターンダウンが行なわれていた。丁寧にベッドが整えられ、ナイトテーブルにはチョコレートとVOSSウォーターが添えられる。たまに廊下から音が響くが、壁の遮音性は高く、隣室や屋外の音はほとんど気にならなかった。 夜、ロールスロイスを予約しようと思い、フロントに電話を掛けたのだが、まったくつながらない状態が長いこと続いた。仕方なくフロントまで降りていったが、別段混雑していることもなく、スムーズに用件が済んだ。では、なぜ電話がつながらないのか。尋ねると、交換台がパンクしていたらしい。TVで紹介されたことで1時間に200件以上の問い合わせが殺到したのが原因だという。だが、それはお粗末ではないか。十分に予測がついたはずなのに、ホテルは対応を怠っていたわけだ。客の体調が急変して助けが必要になったり、火災が発生した場合のことを考えると恐ろしい。 夜のロビーラウンジでは、黒人ミュージシャンのライブが行なわれ、その派手な歌声がロビー全体に響き渡っていた。そういえば、友人がこのラウンジで2人でココアを1杯ずつ飲んだら、会計が1万円を越えていてビックリしたと言っていた。ライブ中はミュージックチャージが加算されるので、そういった値段になってしまったのだろうが、今聞こえている演奏は、そのチャージに見合う質とは言いがたい。 それでも、居合わせている客たちはノリノリで喜んでいるのだから構わないが、ミュージックチャージとして支払った金額の内、ミュージシャンに支払われる金額は極めてわずかなはずである。わずかであるがゆえに、まともなミュージシャンは出演しないのが現状なのだ。ついでに言えば、ロビーの何処にいても十分に聞こえる音量なのだから、チャージなど払うだけ損というもの。結局、ここで飲むココアは、実質5,000円以上ということになる。 チェックアウトはクラブラウンジで。ここでもまた相当な時間を要した。明細が出るまで20分、会計が済むまで更に20分。係の振る舞いは丁寧さを貫いているが、これが急いでいる場合ならどうだろうか。きっとまどろっこしくてイライラするだろう。この調子なのだとしたら、よほど時間に余裕のあるヒマ人でないと付き合いきれないのではないだろうか。ラグジュアリーホテルらしさは十分に感じられるが、時間を有効に使いたい人には不向きなホテルだ。 |
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ザ・リッツ・カールトン東京 |
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