和洋折衷の個性派ホテル
2007.03.19(月)
ホテル東京 Standard Room
Hotel Tokyo
楽-3

エントランスへのアプローチ また東京から歴史あるホテルがひとつ姿を消すことになった。1964年に開業したホテル東京は、ホテルでありながら和風旅館の趣きをも併せ持った、和洋折衷スタイルの個性的な宿。往時を述懐すれば、まだ東京でも外国人の姿を見ることがさほど多くなかった頃に、パンナムのエアクルーが定宿として利用していたため、この界隈でもホテル東京は、特別な空間として華やいでいた。しかし、時代は変わり、2007年3月末で43年の歴史にピリオドを打つことになった。

場所は、京浜急行・都営地下鉄浅草線の泉岳寺駅からすぐ。目の前には、江戸時代、江戸の南の入口であった「高輪大木戸跡」、すぐ近くには赤穂浪士と関わり深い泉岳寺があり、商店などは少ない地域に建っている。交通量の多い国道15号線に面しているが、道路沿いには宴会場などを配し、客室は奥の棟に設けられているので、それほど騒音は気にならない。正面玄関は、瓦屋根の門をくぐって、石畳を進んだところにある。玄関前に配された竹や灯篭が料亭旅館のような趣きを醸し、瓦と白黒のラインを使った外観は城を思わせる。門から玄関までのわずかな時間に、気分はすっかり旅人だ。遠くへ来たような錯覚さえよぎるが、ここは確かに東京である。

館内に足を踏み入れると、また雰囲気が一変する。大理石、真鍮、ミラー、シャンデリアなどなど、バブル期に流行ったようなやや時代遅れのインテリアだが、そこは洋風ホテルスタイルの造りだ。小ぢんまりとしたスペースに、ティーラウンジやレストランなども配されており、その一角にフロントデスクがある。そのサービスは家庭的だ。建物は5階建てだが、客室は3階と4階に位置している。全館でわずか24室。内、18室が和洋室になっており、1室5名まで利用できるので、家族連れなどに好評らしい。

1台しかないエレベータで客室階に上がると、ロビーとは打って変わって廊下は再び和風テイストだ。今回予約したのはヒノキ風呂付き和洋室。どのような部屋なのか、興味津々だった。フロア平面図によると、客室はほぼ「ロ」の字状に配置されており、一部客室は内側向きだ。部屋ごとに広さが微妙に異なるらしく、今回の予約も「31平米から40平米」と結構な開きがあったが、アサインされたのは南向きの、やや広めの部屋だった。

部屋に入ると、いきなり洗面所がある。あえて「ベイシン」とは言わず、「洗面所」と呼びたくなるような感じ。そして、部屋はほぼ正方形に近い形で、窓に向かって左側にツインベッド、右側に4畳半の畳コーナーがある。畳コーナーには机と座卓、テレビ台が置かれ、押入れには更に2名分の寝具が収められている。窓際には木製のイス・テーブルセット、ドレッサーがあり、ベッドボードを含めて、修道院に似合いそうなデザインだ。テレビ台やゴミ箱も木製で、いい感じに古くなっている。そして、ユニークなのは冷蔵庫のある板の間。今では塞がれてしまっているが、低い部分に蛇口があるのが面白い。

さて、この部屋の目玉でもあるヒノキ風呂はどんな感じだろうか。楽しみにしながら扉を開けると、想像よりずっと狭くてビックリ。確かにヒノキの浴槽はあるが、70×90センチと非常に小さく、膝を抱えて入らなくてはならない。洗い場の面積を足しても、1.5平米に満たないので、誰かと一緒にマッタリ入浴というのは難しそうだ。トイレは完全に独立しているが、設備は古いままで、便座に洗浄機能は備わっていなかった。朝食は1階のレストランにて和定食2,079円を。都心のホテルで朝からマグロの山かけというのは珍しいと思った。

ホテル東京への宿泊は、今回が最初で最後となってしまったが、数年後には別の場所に移転して営業するという計画もあるらしい。新天地でもユニーク路線を突っ走ってほしいものだ。

 

ベッドは110×190センチ 窓のそばにはドレッサーとシッティングスペース シッティングスペースの奥には板の間

4畳半の畳コーナー 年季の入った家具 珍しい場所に蛇口がある

入口脇の洗面台 バスルーム 小さなヒノキの浴槽

外観 レストラン店内 和朝食

 
ホテル東京


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