ハシゴ
2007.01.09(火)
マンダリン オリエンタル 東京 Premier Deluxe Room
Mandarin Oriental Tokyo
哀-2

ロビー パークハイアットからマンダリンオリエンタルへのハシゴ。この取り合わせには、共通点と相違点が共存している。いずれも東京を代表するラグジュアリーホテであるだけでなく、高いビルの高層部を占めており、ハイフロアならではの見事な眺めが望めるという共通点。そして、パークハイアット東京は、米国発祥のハイアットが運営に当たる東京の外資系ラグジュアリーホテルのパイオニアでもあり、一方のマンダリンオリエンタル東京はアジアで磨かれたマンダリンオリエンタルホテルグループによる、日本で最新のラグジュアリーホテルであるという相違点だ。ホテルはとにかく新しい方がいいのか、それとも、ある程度の時間が経って成熟した方がいいのか、この贅沢なハシゴには、その答えの糸口があるかもしれない。

マンダリンオリエンタルのチェックインはスムーズだった。開業からすぐの時期に泊まった時には、あまりに浅はかなサービス体制に腹が立ちっぱなしだったが、さすがにそうした混乱からは脱し、スタッフのサービスぶりも落ち着きを見せている。だが、その礼儀正しさは、まるで絵に書いたもののようで、その人から滲み出ているものではない。サービスに触れて心地よいと感じたいところだが、よく出来たマニュアルを使っていると感心するのが精一杯だ。部屋まで案内してくれた若い係にも、マンダリンオリエンタルたる風格は見受けられない。要するに、ラグジュアリーホテルに来ているという実感は、どこにもないのである。部屋の扉が開かれた時、遠隔操作でタイミングよくドレープとレースが開いてゆく様子を見たら、それが人的サービスよりもよほど印象的であることに苦笑してしまった。

部屋の清掃はよく行き届いている。その点、トップレベルと言っても過言ではない。今回利用したプレミアデラックスルームは50平米の面積があり、このホテルで最も標準的な広さを持つ、東側高層階の客室である。入口付近はフローリング床で、居室はカーペット敷きになっている。一方の壁は、クローゼット脇からデスクの隅までが一直線のロングカウンター風で、ドレッシングコーナー、ミニバー、引き出し収納、テレビ台を兼ねている。テレビは大型で、地上デジタルや各種衛星チャンネルに対応している他、無料で視聴できるコンテンツも多数用意されてるが、そのインフォメーションが不足していてわかりにくい。

デスクは壁から張り出して、対面して座れるようにイスを置いてある。脇には漆塗りの小物入れがあったり、胡蝶蘭の鉢植えがあるなど、小さいながら印象の深いアイテムがちりばめられている。窓際にはカーブが美しいソファを据えた。素晴らしい寝心地のベッドは180×200センチのキングサイズ。両脇と足元を棚状にして、デザイン的にも一貫性を感じさせる。照明はバスルームを除いて、すべて調光はできない。ナイトランプすらON/OFFのみというのは、今では珍しい。テレビの上あたりには、ふたつのハロゲンダウンライトがあるのだが、梁の影が出てしまっている。こうした影は、テレビを観ている時に視界に入り鬱陶しく感じられるので、照明デザインとしては失敗作だ。

バスルームは、前回利用したプレミアグランドルームのものと面積的にも設備的にも変わりはない。バスタブ脇がガラス窓か石張りの壁かの差だ。ガラス窓と言っても、外が見えるわけでなく、ただクローゼットエリアが見えるだけなので、むしろ石張りの壁の方が落ち着くように思う。約10平米の空間に、大型バスタブ、スライドミラー付きベイシン、独立したトイレ、開放的なシャワーエリアを設けたバスルームの天井高は250センチ。バスタブへの給湯にはやや時間がかかり、約10分を要する。前回と違ってシャワーの水圧は低かった。また、レインシャワーは水流が細くニセモノである。

客室は、全体的にみて非常に立派に造られている。内装や調度品のコストは、パークハイアットより数段高いはずだ。特にディティールにフォーカスすれば、ファブリックの柄や素材など、実に素晴らしい一面が見られる。逆に、インテリアのデザイン性、中でもとりわけ調和とバランス感覚に於いて、パークハイアットは極めて完成度が高い。一見、マンダリンオリエンタルの方が、上質で細やかな工夫があるように感じられるが、このデザインが12年経っても色あせない魅力を湛えいているかは疑問だ。

夕食はルームサービスを利用した。値段は手頃で、カジュアルな定番メニューも揃っている。オニオングラタンスープ(1,210円)と、和牛チーズバーガー(2,420円)を注文したところ、25分でデリバリー。バラのプリザーブドフラワーとオシボリを添えて、高級ホテルらしく恭しく運ばれてきた。

38階ロビーフロアの一角には、宿泊客が無料で利用できるフィットネスジムがある。受付には係が常駐しているが、愛想はゼロ。タオルは豊富にあり、ミネラルウォーターやアイスティなども用意されている。マシンも充実しており、都会の景色を眺めながら汗を流せる。だが、シャワーは併設されておらず、着替えやシャワーは各客室を利用しなければならない。また、プールがないことも、このクラスのホテルとしては大きなマイナスポイントになる。

チェックアウトは丁寧だったが、なんとなくギクシャクした感じで、スムーズとは言えなかった。荷物の扱いにも慣れていない様子。若い見習いスタッフが多くて、頼りないというのも困ったものだ。こうなると、ややつっけんどんだが、手馴れた感じのするパークハイアットの方が、総じてよいということになるだろうか。新しい客室は確かに魅力的だが、ラグジュアリーホテルの洗練と風格は、たとえどんな名門チェーンであろうとも、一朝一夕で確立できるものではないようだ。

 

50平米のデラックスルーム 窓側から入口を見る ソファからテレビ方向を見る

180センチ幅ベッド 窓際のソファ 対面して座れるデスク

デスクから入口を見る ナイトウエアとスリッパと扇 小物入れ

ベイシン バスタブ シャワーエリア

ロビー フィットネスジムの入口 フィットネスジム内

 
マンダリン オリエンタル 東京 051210


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