1969年11月に開業した東洋ホテルは、すでに36年の歴史があり、大阪でも老舗の部類だ。大阪の中心地からはやや外れた立地ながら、経営母体だった三和銀行の力をバックに、開業当時はロイヤルホテル、ホテルプラザと共に大阪の御三家と呼ばれていた時代もある。
1987年4月には全面改装をし、ロビーなどのパブリックスペースはシルクロードをテーマに、オーセンティックなデザインながらも、エキゾチックなスパイスをさりげなく加えたインテリアを施した。フロントのある1階と、地下鉄からのアクセスルートのある地下1階との間には、オアシスを思わせる憩いの広場があり、壁の大理石を伝って水が流れ落ちている。今ではあまり注目を浴びることのないホテルだが、560室の客室を持ち、中堅シティホテルとしてのグレードと充実した設備を備えている。
ホテルは地下鉄御堂筋線の中津駅から地下道で直結しており、アクセスは便利なのだが、地下鉄を降りてから館内に到達するまで、階段でのアップダウンが多く疲れる。地下1階の通路は天井が低く狭いが、小さな飲食店やデリカテッセンがあり、毎日午後6時からはデリカテッセンとベーカリーショップで半額セールがあるため、その時間になると行列が出来るほどの賑わいを見せる。
フロントロビーは1階。大理石造りの空間は、やや古いデザインながら、落ち着いた雰囲気だ。ロビー周辺は現在改装を進めており、約半分が工事中になっている。今回のリノベーションは全館に及び、2006年1月にはラマダホテル大阪とホテル名が変更されることになっている。ルネッサンスを切り離してしまった後のラマダは、日本での知名度も低く、ブランド価値はさほどないような気もするのだが、海外からの集客はある程度見込めるのかもしれない。
チェックインは見習いのプレートをつけた係が担当した。素朴な青年だが、気取らない明るさが、ホテルのフロントという場所には新鮮に感じられた。どこかで体感したサービスタッチだなと考えていたら、それはヨドバシカメラの従業員のノリであることが思い出された。予約したのは、この日から一般が利用できるようになったばかりの、改装したてのビジネスフロアにあるスペシャルツイン。部屋の最終チェック中ということで、フロント前で立ったまま10分少々待たされた。
客室までの案内はなく、自ら客室へと向かう。今回アサインされたのは最上階16階だった。16階にはレストランもあり、フロアの約半分が客室になっている。フロア全体が真新しいが、同時に塗装や接着剤の臭いが立ち込め、しばらくすると頭痛がしてきた。レストランと同じフロアという点も、いささか気になるところだが、エレベータホールを境界に、レストラン部分と客室部分が分かれているので、客室の方までレストランの賑わいが伝わってくるということはなかった。
スペシャルツインは27.5平米。横幅が広く、2面の窓を持ってる。ダークブラウンの家具に、淡い色のソファやカーテンなど、今の時代にあっては、ごくありきたりなインテリアだ。質感に乏しく、ワンルームマンションの生活感に通ずる雰囲気。そうさせている主な原因はクローゼットの扉とソファにあるようだ。デスク前やバスルームのミラーも、従業員控室用かと思うような味気ない品。壁紙は真っ白だが、その張り方が粗雑で、早くも浮き上がっている部分が見られた。
照明はナイトランプ、デスクスタンド、フロアスタンドのみで、夜は暗いかと思いきや、意外に十分な明るさだった。デスク脇にはDELLのコンピュータがあり、それを使えばDVDも鑑賞できる。ディスプレイはSHARPの26インチ液晶だ。もちろんLANも無料で利用可能。空調は風量のコントロールのみで、温度設定は出来ないタイプだった。
ベッドはシモンズ製で、真っ白いデュベカバーでメイクしてある。窓と壁に挟まれた狭いスペースに2台並べているので、とても窮屈な印象。バスルームは160センチ×200センチのユニットで、パステルカラーのベイシントップが印象的だ。シャンプー類はディスペンサーで、他のアメニティも最低限の用意。タオルは3サイズ揃っている。客室全体の清掃は少々雑で、特に浴室金具はほとんど拭き上げられていない状態だった。
確かにきれいになったのだろうとは思うが、また泊まりたいという魅力は感じなかった。客室の質感はアッパービジネスホテルクラス。手頃な値段で利用できるのなら、出張の際の候補にはなるかもしれない。
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