ホテルオークラ福岡のロビーには、立派な大理石の柱があり、その柱に囲まれるようにソファが優雅に配されている。日本の伝統美を湛えたオークラ東京のロビーとは趣を異にし、華やかな印象を受けるロビーだ。フロントカウンターはロビーから少し奥まったところに位置し、数名のスタッフが姿勢を正してゲストを待ち構えている。
チェックインはスムーズだった。そして、丁寧で上品な仕草には、さすがオークラと感じさせるものがあった。客室への案内を担当した若いベルガールは、まだ経験が浅くたどたどしさが残るものの、真剣さが伝わってきた。客室に到着すると、「何かお手伝いできることはありますでしょうか?」と尋ねるので、今は特にないと言って引き取ってもらった。
スケール感のあるロビーとは対照的に、シングルルームは窮屈だった。22平米あることになっているが、この客室は特別に狭いに違いない。どう考えても20平米あるようには感じられなかった。前夜に泊まった日航福岡の21.5平米より広いとは、断じて信じがたい。そう感じる原因のひとつは、窓を半分殺すほどの太い柱の存在だった。窓際の一角を占拠し、その柱のためにアームチェアやテーブルを置くスペースが失われ、それらはテレビの前に不自然に配置されることになってしまった。
ベッドは窓の方を向き、壁に寄り添うように置かれている。120センチ幅で白いデュベカバーで仕上げた。心地よい寝具ではあったが、ベッドに横たわってもなお狭さが気になる。どうしてこれほど狭く感じるのか。もうひとつの原因は、家具がすべてオーバーサイズに造られているからだ。数あるシングルルームの中でも、とりわけ狭い面積しか確保できなかったこの客室には、どうにも似つかわしくない大きな家具を使っている。どれひとつをとっても、この部屋に据えるに相応しくはない。狭い空間に大きなものを配置した結果、必要以上に狭苦しさだけがクローズアップされることになってしまったようだ。
ベッドボードの上にはナイトパネルや電話機、メモ用紙などが載っている。電話機はデスクやバスルームにも発信可能な機材が置かれているので、この狭いシングルに3台もの電話機が存在する。ナイトパネルでは空調やBGMもコントロールできるが、眠っている時に時計を見るのに不自由する配置だ。
デスクも大型だが、脇にテレビが載っているので、デスクトップのスペースは限られる。LANは7泊まで1,000円で利用可能。デスクサイドにあるワゴンには、冷蔵庫とミニバーが収納されている。クローゼットは入口のそばにあり、両開きの扉は鏡張りになっている。
バスルームは壁にタイル、床に大理石を使ったユニット。バスタブは140センチサイズで、全体にコンパクトだ。アメニティは必要最低限の用意で、タオルはバスタオルだけ1枚だが、フェイスタオルとハンドタオルは2枚ずつあった。ドライヤーがボロいこと、シャワーが弱いことが気になった。やはり福岡は節水が盛んなのだろうか。
朝食はカフェテラス「カメリア」で。アジア人の団体で賑わっており、出向いた時には6組が順番待ちだった。15分ほどロビーで待ったところで名前を呼ばれた。ロビー全体に聞こえる声で名前を呼ばれるのは正直迷惑だ。ブッフェの内容は充実していたが、洋食中心で和食は少ない。青汁、温野菜、新鮮な生野菜、フレンチトーストなど、東京の「テラスレストラン」を思わせる要素もたっぷりある。
日航福岡とオークラ福岡をはしごして、両者にそれぞれ魅力があるが、総合的には日航に軍配が上がる。日航の方が地味な印象だったが、それだけ堅実であることもまた事実だった。ホテルを快適にする第一の要因は立派な調度品や奇抜な演出力ではない。抜きん出ることを考える前に、不足や欠点を排除することが大切ではないだろうか。
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