センチュリーサザンタワーを訪れる時は、新宿駅からオープンデッキ風のサザンテラスを経由して2階エントランスからエレベータでロビーに向かう場合が多い。だが、今回は1階にあるエントランスから入館し、そこに備えられているカートに荷物を載せて、フロントに向かった。いずれにしても、フロントに立つまでホテル従業員と言葉を交わすどころか、姿を見ることもない。これを気楽と取るか、味気ないと取るか、好みにもよるだろうが、利用する時の気分でも変わってくる。
ロビーやレストランなど、パブリックスペースはとても賑わっていた。木目を多用したインテリアは温かみを感じさせ、大きな窓からは見事な眺めが広がっている。今日も素晴らしい晴天だ。
フロントカウンターには行列ができていた。順番が来ると、係は親切で丁寧な対応を見せてくれた。スムーズに手続きが終了して、再度自らカートを押して客室に向かった。何事もなければ、ほとんど人的サービスに接する機会のないシステムだ。なんとなく、友人の暮らすマンションを訪ねているようで、あまりホテルに来たような気がしないが、フロントのサービスがホテルを強く印象付ける。
最初に入った部屋は、タバコの臭いが非常に強かった。これは参ったと思い、フロントに相談した。そっけない対応をされるかと思いきや、とても親切に素早く要望に応えてくれた。程なくしてキーを持って現れた係は、荷物を運ぶことも手伝ってくれた。シンプルなサービス体制を取っているが、ここの場合は「サービスがない」というのとは違うようだ。何のサービスもしない割には強気な料金だと思っていたが、こうした対応がきちんと得られるのなら、シンプルなスタイルも悪くないと感じた。
新しい客室は、最初よりも10フロア分高層階になった。それによって眺めも一層よくなった。コーナールームの魅力は、なんといっても眺望だ。三角形に大きく張り出した窓は途中に柱のない構造で、そこからは遮るもののほとんどない大都会のパノラマが広がる。視界が広く、新宿御苑の緑や遠くのビル群など、見飽きることのない壮大な眺めだ。
だが、この素晴らしい窓を、二重構造にしてしまっているのが、残念でならない。確か、開業当時はこうなっていなかったように思う。騒音の問題から、後で内側にガラスを一枚追加する工事をしたのだろう。二重窓のせいで反射が気になり、特に夜景の美しさは半減する。更に、窓と窓の間の清掃が行き届かず、部分的に曇っているし、。窓の外側にもかなりの汚れが付着していた。眺めが売りの客室だけに、これはいただけない。
建物の先端に位置するコーナールームには2種類ある。隣り合っており、34平米という面積も料金も同じだが、部屋の形や窓の形が違っている。今回利用したのは、ふたつのうち御苑側だが、もう一方のタイプは窓のうち一面が、こちらの客室と対面するために、曇りガラスになっている。それも価値を半減させていることだろう。
いずれにしても客室の設備は、そのサービス同様にシンプルにできている。入口を入ると、すぐに居室になっており、入口とベッドとの間を隔てているのは、デスクユニットだけだ。デスク前には磨りガラスの簡単な目隠しがあるが、ベッド周辺のプライバシーが保ちにくいという印象は拭えない。ベッドはキングサイズで、ベッドスプレッドと掛け布団は一体化している。ベッドサイドにはクローゼットが設けられているが収納スペースは少ない。
デスクでは無料の高速インターネット回線が使え、電話機はデスクとベッドサイド両方に用意されている。デスク前にはスタンドミラーが置かれ、テレビの下に空の冷蔵庫を備える。湯沸しポットも空のまま収納されている。テレビ番組はあまり充実していない。
魅力的な窓の前には、ラブチェアとテーブルが室内向きに置かれている。カーテンは手動で、幅広い窓に沿ったカーテンを閉じるだけでくたびれる。また、窓には柱がないのに、窓の手前にどっしりと太い柱があって、構造上仕方がないのだろうが、やはり邪魔だった。室内の照明は、シーリングも備わり、とても明るい。シーリングとデスクスタンド、ナイトスタンドは調光可能だ。
バスルームはベッドから入口を挟んで反対側にある。シンプルなタイル張りのユニット形式で、タオルは3サイズ2枚ずつ、アメニティは一般的な品揃え。シャンプー類は壁掛けディスペンサーを使っている。
全体を通じて、客室のクオリティやメンテナンスの状況はあまりよくはない。国際級ホテルと比較すると、あらゆる面でワンランク下という印象があり、立地や眺めを考慮しても、実勢価格はまだ高いと思う。今回は思いがけずスタッフの人柄を垣間見ることができたが、総じての印象は今ひとつだった。このホテルには何かが足りない。
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